2020年1月12日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
まずは、めでたく初CD化を果たしたこのフレンチ・ジャズ・ロック盤から取り上げるのがいいでしょう!
ゴングに加入しアラン・ホールズワースの名演で知られる『Gazeuse!』に参加、その後マイルス・デイヴィスのバンド・メンバーとして82年作『We Want Miles』83年作『Star People』でパーカッションを叩き、スティングのソロにも参加した名手Mino Cinelu。
彼が在籍したフランスのジャズ・ロック・グループによる77年1stが本作です。
Mino Cineluによるノリの良さと緻密なテクニックがバランスした心地よい聴き応えのドラミングに耳を奪われていると、エレピ主体のエレガントなキーボードと軽やかなフルートが舞い踊るように奏でられ一気に色彩が生まれます。
随所で高らかに鳴り響くブラス・ロック風のWサックスも素晴らしいアレンジです。
テクニカルだけど余裕たっぷりでいい感じにリラックスした雰囲気が何とも堪らない名作!
つづいては、キャリア20年目に入ったアメリカの実力派プログレ・グループが放った19年作をピックアップ。これがまた素晴らしく良かった!
もともとテクニカルながらもゴリゴリせずヴィンテージな質感を大事にしているグループでしたが、本作はこれまでにないほど70年代YESを強く意識した、明瞭でドライヴ感のある演奏とファンタジックな描写力に長けたサウンドメイクで一気に駆け抜ける快作。
スティーヴ・ハウが弾きそうな音数多くエキセントリックなフレージングのギター、ジョン・アンダーソン彷彿の浮遊感ある男性ヴォーカルはわかりやすくYESですが、何より「らしさ」満点の楽曲構築センスに唸らされます。
特に18分の大作は本作を象徴しており、「Tempus Fugit」的な疾走感と「Awaken」的な構築美を一体にしたような凄いナンバーに仕上げていて驚き。
古今東西のYESリスペクト・プログレ作品の中でも屈指の出来栄えと言って間違いないでしょう!
【関連記事】
KANSASやRUSH、そしてYESやGENESISやGENTLE GIANT・・・往年のプログレの遺伝子を受け継ぎつつ、北米大陸らしい明るさ&抜けの良さと洗練されたモダンネスで調理した新鋭北米プログレをご紹介いたします!
紅一点の実力派ヴォーカル/ヴァイオリニストLucie Vを擁する、英国プログレ/ジャズ・ロック・グループによる18年デビュー作です。
CARAVANなどカンタベリー・ロックからの影響が感じられるヴィンテージな歌ものジャズ・ロックを軸に、VDGGのようなドラマチックさやヘヴィさも備えたサウンドのなんと芳醇なこと!
姉御タイプのエモーション溢れるフィメール・ヴォーカルもジャズ・ロック的な渋みある演奏に映えますねぇ。
シャープなキレの良さも持つヴァイオリンの鮮烈な響きにも耳を奪われます。
これはあらゆる英国プログレ・ファンへの贈り物と言ってしまいたい逸品ですよ。
いつもマニアックなリイシューでロック・ファンを楽しませてくれているBIG PINKレーベル。
もともとはレーベル名が示す通りアメリカのルーツ・ロックやスワンプ・ロックのSSWものを中心としたラインナップでしたが、最近は各国のプログレやAORのリイシューも盛んです。
このDELIVERANCEは、カナダの音楽一家Janz家出身のPaulとKenの兄弟、そして従弟Danielらを中心にドイツで結成・活動したAORグループ。76年にデビューし、4作品を残していますが、本作は最終作に当たる79年作。
「ジャーマンAORの至宝」とも云われる一枚だそうで、聴いてみると、ファンキーさを帯びた躍動感あるリズム・セクションと哀愁フレーズを流麗に紡ぐギターを軸にタイトに攻めるテクニカルなアンサンブルはTOTO、そしてR&Bテイストの鼻に抜けるハイトーンVoと華のあるコーラスはEARTH WIND & FIRE直系で、高揚感たっぷりの極上AORナンバーが満載!
この軽快なサウンドにからすると、このヨーロッパのバンドらしい(?)謎めいたジャケットのセンスは何とも言えませんが、上記グループやアメリカンAORファンなら、ドイツにこんなバンドがいたのか!とビックリすると思います♪
続いてもBIG PINKのリイシューからピックアップいたしましょう!
70年にリリースされたイタリアン・サイケ・ポップの逸品で、実は翌71年にデビューする名バンドNUOVA IDEAが契約上の理由で変名リリースした作品。
LE ORMEのプロデューサーとしても知られるGian Piero Reverberiが全曲を作曲しているのが特筆。
そのサウンドは、この時期のイタリアに多いサイケデリックな混沌さを押し出した作風とは一線を画する、非常に洗練されたサイケデリック・ポップ。
躍動感たっぷりのファズ・ギターとオルガンのコンビネーション、R&B的なグルーヴ感覚を備えたリズム隊。同時期の英国サイケ・ポップと並べても上位に位置しそうなほど、こなれたサウンド・プロダクションが魅力的です。
ちょっとハード・ロックが入ったギターのプレイも光っているし、後のNUOVA IDEAでの活躍を予期させる一枚と言えるでしょう!
最後はオススメ再入荷枠として、スペインのシンフォ・バンドによる17年作をご紹介。
前12年作『CONCERTO FOR PIANO AND ELECTRIC ENSEMBLE』は世界的な音楽アワード「INDEPENDENT MUSIC AWARDS」を受賞するなどバンドにとって転機となった作品でしたが、5年ぶりとなった今作も前作に匹敵する緻密にして壮大な音世界が待っています。
クラシックの確かな素養を背景に持つテクニカルかつ端正な音運びに軽やかなジャズ風のタッチも織り交ぜたしなやかなピアノがまずもって絶品!
前作でもサウンドの要を担った女性ピアニストAdriana Plazaの技巧が光ります。そこにスペインらしさを感じさせるエキゾチックな旋律を奏でるフルートと熱くエモーショナルなギターが絡み合って構築されていくサウンドは、初期BANCOを彷彿させる重みとロマンティックさが漂う風格溢れるもの。
ここぞという場面で噴き出すアグレッシブなオルガンやメロトロンのプレイにも痺れるし、変拍子満載ながらも抜群の安定感を誇るリズム・セクションも素晴らしい。
30分超の組曲をはじめどの曲も細部まで緻密に構築された楽曲と完璧にコントロールされたアンサンブルで隙なく聴かせますが、時にはラテン気質の熱情がたぎる劇的な展開も待っていて、その静的なパートと動的なパートを絶妙に組み合わせたサウンドが大変に魅力的です。
この完成度、間違いなく現代シンフォニック・ロックの重要作の一つと言って問題ないはず!
まずは、イタリア出身のこの個性派ジャズ・ロック・トリオからご紹介しましょう!
イタリア北部のボローニャで結成された、キーボード(兼ベース)、ギター、ドラムスという編成のトリオ・バンドが4年ぶりに放った19年作2nd。
彼らの魅力は、とにかくゴリゴリとパワフルに突き進む良い意味で粗削りなジャズ・ロック・スタイル。
ドラムがビシバシとタイトに変拍子を叩きだし、ディストーションの効いたヘヴィなギターが音数多く畳みかけ、そこにギラギラしたトーンのシンセが絡みついていく、三者が互いに譲らずハイテンションでぶつかり合うアンサンブルは痛快の一言に尽きます。アクセルを踏み込んで猛加速したかと思ったら急ブレーキでギュンっと切り返すような、激しい緩急のある演奏がスリルを生み出しているのも特筆です。
勢いを重視した演奏ではあるのですが、随所でザッパ作品に通じるねじれたユーモア感覚が顔を覗かせており、爆発的にダイナミックなジャズ・ロックに適度な遊び心を付与していて良い感じ。その点は3人のただならぬビジュアルからも想像できるところですね。
この8月には日本でツアーも敢行している要注目バンドです☆
続いては、カナダのシンフォ・グループD PROJECTの2019年にリイシューされた3タイトルの中から、08年の2ndアルバムをピックアップ。
カナダはケベック州出身、RED SANDやSENSEで活躍したヴォーカル/ギター/キーボードのStephen Desbiensが率いるソロ・プロジェクトがこのD PROJECTです。
18年リリース『FIND YOUR SUN』までの5作品で一貫した彼らのスタイルが、ギター主体のヘヴィなパートとアコギやヴァイオリンが織りなすケルト色も含んだトラッド・パートを対比させたドラマチックな耽美派シンフォニック・ロック。
ヘヴィながらも美旋律に溢れたギターと切々と歌う甘美な声質のヴォーカルが印象的な「動」のパートに圧倒されていると、不意に演奏が落ち着き「静」のパートへ。彼方から繊細で神秘的な響きを持つアコースティックギターが聞こえてくると。そこへ気品高くも柔らかな表情で舞い上がるとヴァイオリン。この「動」と「静」が劇的に、しかしごく自然に移り変わっていくサウンドに、思わず感動がこみ上げてきます。
毎作で豪華なゲストをフィーチャーしていますが、本作のゲストはトニー・レヴィン。一聴して彼と分かる存在感あるプレイを提供していて聴き所♪
最後は、久々に再入荷した現インドネシア最高峰ギタリストによる19年作でいきましょう。
ライヴでは6万人を動員したという90年代以降のインドネシアを代表するロック・バンドGIGIで活躍、00年代以降はソロ・ミュージシャンとして精力的に活動するギタリストが彼。
従来作では、トニー・レヴィン、ジミー・ジョンソン、ジャック・ディジョネット、ゲイリー・ハズバンド、ヴィニー・カリウタなど錚々たる名手を招いたジャズ・ロック/フュージョン志向のサウンドを聴かせていましたが、本作ではジョーダン・ルーデスやマルコ・ミンネマンをバンドメンバーに迎え、これまでになくプログレ/ロック的な力強いサウンドを提示します。
元レッチリのJohn Frusciante(!)がヴォーカル/ギターでゲスト参加したオルタナ調の1曲目から非常に挑戦的。ルーデスの派手なシンセをフィーチャーしたフュージョン+プログレ・メタルなナンバーあり、母国語の妖艶な女性Voを交えたオリエンタルなジャズ・ロックあり、もう一人の大物ゲスト マイク・スターンとDewaのクリエイティブなギターバトルが必聴のテクニカル・フュージョンありと、自由奔放で多彩なスタイルが実に楽しい一枚に仕上がっています。
一体次はどんなアプローチで新作を作ってくるのか、早くも期待を抱かずにはいられませんね!
まずは何と言ってもこの激レコメンド盤!これは聴いていてスタッフ佐藤もニンマリとしっぱなしでした。
カンタベリー・ロックやフランク・ザッパを愛する若手ミュージシャン達により2016年に結成された、なんと日本のジャズ・ロック・グループのデビュー作!
主にハットフィールドやナショナル・ヘルスからの影響を濃厚に感じさせる緻密にしてアヴァンギャルドなアンサンブルをメインに、『Third』~『Fourth』期ソフツのような熱気と緊張感も取り込んだ、完成度の高いカンタベリー・フォロワーのジャズ・ロックを繰り広げます。
流麗かつ叙情に富んだフレーズを次々と繰り出すサックスに応じるように、デイヴ・スチュワートを宿したオルガンとエレピがスリリングに疾走、ギターもフィル・ミラー彷彿のシャープなトーンで性急に畳みかけます。細部にまでカンタベリー・ロック感を漂わせたサウンドは、相当に研究を重ねた結果の賜物であることがうかがえますね。
また随所で顔を覗かせるザッパ風のアプローチも印象的。種々のSEや日本語の音声を用いた諧謔精神たっぷりのコラージュセンス、そして『HOT RATS』を思い出させるサックスやギターが生々しく肉感的なタッチでぶつかるパートもあって、ただただカッコいいです。
近年、世界各国からカンタベリー影響下のジャズ・ロックが登場していますが、ついに我が日本にもこのレベルの作品が誕生したことを喜ばずにはいられません!
こちらの作品にもかなり驚きました!
だって、いかにも旧ソ連的なダークでスケール大きいシンフォって感じのジャケットしてるのに、実際のサウンドはRETURN TO FOREVERにファンキーなノリの良さを加えたような痛快極まるサウンドなのですから。
本作は、ソビエト連邦はウズベキスタン出身のベーシストGreg Pushenを中心とするジャズ・ロック・グループが88年に残した唯一のアルバム。
冒頭、いきなりシタールとタブラが妖艶に絡み合う完全なインド音楽にビックリしますが、一転、存在感あるベースの独奏を合図にドラム、サックス、オルガン、ギターらが一斉に飛び込んできて躍動し始めるダイナミックかつタイトなアンサンブルで、ジャズ・ロック・ファンのハートをつかみます。とはいえ緊張感はほとんどなく、技巧的ながらもリラックスした演奏はRTFに通じます。
いずれも技巧派揃いですが、特筆はリズムキープに留まらずこれでもかと動きまくるプレイが特徴的なベース。これが歌心あるメロディアスな音運びがアンサンブルに豊かな表情を生み出していて素晴らしいんです。
それにしても、このジャケット自体はわりと好きだけど(イチジク?)、この内容からするとあまりにギャップが…。ジャズ・ロック好きの方はジャケットは気にせず試聴してみてください!
最後は、KING CRIMSON+HENRY COW+SOFT MACHINEなどカンタベリー・ロック+ザッパって感じの個性派をご紹介!
英プログレ・デュオSTARS IN BATTLEDRESSで活動するRichard Larcombeを中心に、KNIFEWORLDのベーシストCharlie Cawoodやサックス奏者Josh Perlといった英国アヴァン・プログレ・シーンの気鋭ミュージシャンが集う新鋭グループの19年デビュー作。
バンドのビジュアルからも一筋縄ではいかない雰囲気がプンプンしていますよね。
上記バンドをごった煮したような強靭かつポップかつ複雑にねじくれたアヴァン・ポップ・プログレが実に痛快!
スリリングな変拍子の中で繰り広げられる不調和なメロディ、背後で緊迫感を煽るメロトロン風キーボード、緻密に絡まり合っていくギターや管楽器。ジリジリと焼け付くような緊張感と不穏さに満ち溢れつつ、ジェントルで浮遊感のあるヴォーカルだったり、遊園地を思わせるベルやハルモニウムの音色だったりと、トラッド的なおどけたようなユーモアもふんだんに漂わせているのがたいへん個性的。
そんな複雑怪奇なサウンドの中、ちょっぴりリチャード・シンクレアを意識したようなノーブルな聴き心地のヴォーカルがまた印象的に響くのもポイントです。
7月の「今週の3枚」は次ページでお楽しみください☆
現スペイン随一と言える名シンフォニック・ロック・バンドによる7作目となる17年作。前12年作『CONCERTO FOR PIANO AND ELECTRIC ENSEMBLE』は世界的な音楽アワード「INDEPENDENT MUSIC AWARDS」を受賞するなどバンドにとって転機となった作品でしたが、5年ぶりとなった今作も前作に匹敵する緻密にして壮大な音世界が待っています。クラシックの確かな素養を背景に持つテクニカルかつ端正な音運びに軽やかなジャズ風のタッチも織り交ぜたしなやかなピアノがまずもって絶品!前作でもサウンドの要を担った女性ピアニストAdriana Plazaの技巧が光ります。そこにスペインらしさを感じさせるエキゾチックな旋律を奏でるフルートと熱くエモーショナルなギターが絡み合って構築されていくサウンドは、初期BANCOを彷彿させる重みとロマンティックさが漂う風格溢れるもの。ここぞという場面で噴き出すアグレッシブなオルガンやメロトロンのプレイにも痺れるし、変拍子満載ながらも抜群の安定感を誇るリズム・セクションも素晴らしい。30分超の組曲をはじめどの曲も細部まで緻密に構築された楽曲と完璧にコントロールされたアンサンブルで隙なく聴かせますが、時にはラテン気質の熱情がたぎる劇的な展開も待っていて、その静的なパートと動的なパートを絶妙に組み合わせたサウンドが大変に魅力的です。今作も期待を裏切らない傑作!
ゴングのメンバーとして『Gazeuse!』に参加、その後マイルス・デイヴィス・グループの一員として82年作『We Want Miles』でパーカッションを叩いた名手Mino Cinelu在籍のフランスのジャズ・ロック・グループ、77年デビュー作。フルートとサックス2本の管楽器隊を擁する7人編成。Mino Cineluによるノリの良さと緻密さがバランスした心地よいドラミングがリズムを敷き詰め、その上でエレピ主体のエレガントなキーボードと軽やかなフルートが舞い踊るように奏でられます。ジャジーなバッキングに徹しているかと思うと、叙情的なソロで本領を発揮するギターもいいし、ブラス・ロック風の華やかなプレイで彩る2本のサックスも見事。テクニカルでタイトにまとまった演奏ですが緊張感はさほどではなく、南国を思わせる色彩感のあるアンサンブルが絶品です。アンサンブルの「心地よさ」という点ではユーロ・ジャズ・ロック屈指と言いたい逸品!
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!