2020年1月12日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
最初の作品は、起源は70年代にさかのぼるフランスのグループによるこの19年作!
ORIONは、キング・クリムゾン/ジェントル・ジャイアント/キャラヴァン等に影響を受け74年に活動を開始、1979年に当時唯一のアルバムを残したフレンチ・プログレ・バンドです。
本作は、そんな彼らが2013年に復活を遂げてからの第4弾、通算では5thとなる19年作。
面白いのが、前17年作「LE SURVIVANT」でゲスト・プレイヤーとして参加していた若手ミュージシャンらが本作でメインメンバーとなっている点。それに伴ってかバンド名も「ORION 2.0」と改められています。
となるとサウンド面での変化が気になるところですが、若手達によるモダンでフレッシュな音作りとプロデュースに回ったオリジナルメンバー達のセンスが程よくブレンドされたかなり良い作品に仕上がっているのです。
フランス語で歌われる耽美なシンフォニック・ロックを聴かせた前17年作に対し、本作ではポスト・ロック色を帯びたモダンに洗練されたジャズ・ロック・テイストが濃厚。
ジャズ・ロック然としたタイトでスマートなリズムワークを土台に、フリップ系統の鋭角的でヘヴィなプレイからハケット風のリリカルなプレイまでを滑らかに繋げた振れ幅豊かなギターと、ジャジーかつ陰影あるタッチのピアノとエレピが交差するアンサンブルはずばりセンス抜群。
また男性ヴォーカリストも特筆で、デリケートなハイトーンで歌われる英語ヴォーカルが、ジャジーかつ少しミステリアスなサウンドに見事に調和しています。
79年作『La Nature Vit, L’Homme Lui Critique…』からも1曲どうぞ!
続いては、イギリスより届いたこのただならぬ一枚をご紹介♪
英国はリバプール出身の新鋭女性SSWによる19年デビュー作。
ケイト・ブッシュを思わせる無垢さと妖艶さが合わさった歌声が耳に残る繊細なフィメール・フォークに、「実験的」と言える複雑なアレンジを組み合わせた作風を特徴とします。
トラッド色を帯びた穏やかなフルートや鐘の音、美しいピアノに無機質な電子音、子供の声やカラスの鳴き声…。
多彩な音色が次々と現れ、時に色鮮やかで時に不穏な音の層を構築していく音作りのセンスには、並々ならぬ才能を感じさせてくれます。
心安らぐトラディショナル・フォークと前衛的なデジタル音響をバランス良く混ぜ合わせ、美しくも不思議で幻想的な音世界に聴き手を誘う現代英国プログレッシヴ・フォークの逸品。
ESPERSあたりがお好きな方にも響きそう!
最後の一枚は、19年リマスター&レアライヴ音源追加でリイシューされたこのアンダーグラウンド英国ハードの傑作をピックアップ!
HACKENSACKは、69年に結成され74年にポリドールからこの唯一作をリリースし解散したハード・ロック/ブルース・ロック・バンド。17年には復活を果たしまさかの2nd『FINAL SHUNT』を発表しました。
このデビュー作でのメンバーは、この後MOTT THE HOOPLEの後身MOTT~BRITISH LIONSのギタリストになるRay Smith、ロバート・プラント作品やライヴエイドでのツェッペリン再結成ステージでベースを務めたPaul Martinez、BE BOP DELUXEに加入するドラマーSimon Fox、SAMSONで有名なヴォーカリストNicky Mooreという、後に大成する実力派ばかり。いわば逆スーパーバンドというべき存在かもしれません。
そのサウンドは、当時ライヴでもっともヘヴィなブルース・ロックを鳴らすバンドと云われただけあって、いかにもライヴ映えしそうな重量感たっぷりのブルージー・ハード・ロック。
ズシリとしたタメとキレの良さを合わせ持つリズム隊、Ray Smithのツボを押さえたソリッドなギターワーク、そして巨漢ヴォーカリストNicky Mooreの堂々たるソウルフルなヴォーカル。
特にNicky Mooreのヴォーカルは当時まだ二十歳過ぎとは思えないポール・ロジャースばりの貫禄がみなぎっていて圧巻です。
演奏のほうもフリーに比肩するアンサンブルで聴き手を飲み込んできますね。時期からするとややオールドスタイルだったかもしれませんが、これは英ハードの歴史に燦然と輝く一枚でしょう!
まずご紹介したいのが、近年ブラジルから突如現れ、どんどん人気が高まっているこのシンフォ・デュオ。注目の最新作がリリースされましたよ!
女性ヴォーカリストGabby Vessoni と ギタリスト/マルチプレイヤーCelo Oliveiraによるシンフォニック・ロック・デュオがこのFLEESH。
2014年に活動を開始し、2017年に『WHAT I FOUND』でデビュー。その後RUSHトリビュートとMARILLIONトリビュートの2作品をリリースし、オリジナル・アルバムとしての2ndとなったのがこの『ACROSS THE SEA』です。
前作も2人とは思えない驚くべき豊かさを内包した名品でしたが、本作も息をのむほどに静謐で幻想的な音世界が待っています。
シンセ&オルガンがうっすらと幻想のベールを広げると、A.ラティマーとS.ロザリーの中間にいるような泣きのフレーズ満載の美麗ギターが舞い、スッと胸に染み入る透明感いっぱいの美声ヴォーカルが優しく囁くように歌います。
ゆったりとしたテンポのナンバーが主ですが、前作以上にロマンティックで丹念に紡がれていく優美な作品世界にじっくりと浸りたい逸品。
これは傑作と言っていいでしょう!
続いては、SPOCK’S BEARDの別働グループと言うべき注目新鋭によるデビュー作!
03年より米プログレの代表グループSPOCK’S BEARDのコンポーザーとして活動、キーボード/ギター/マンドリンを担当するJohn Boegeholdを中心に、現SBのDave Meros(ベース)とTed Leonard(ヴォーカル/リードギター)、元SBのJimmy Keegan(ドラム)というメンツが集結した、SBファン要チェックの新バンドによる19年デビュー作となります。
シャープなトーンでメロディアスにフレーズを紡ぎ出すギター、艶やかなトーンの色彩感あるシンセと幻想のメロトロンが混じり合うキーボード、そして厚みあるストリングスが作り上げる明瞭にしてドラマチックな深みもあるアンサンブルに、落ち着いた声質ながら伸びやかで清涼感いっぱいに歌い上げるヴォーカル。
10分前後の構築的なナンバーも複雑にならず終始メロディアスに聴かせるツボを押さえたサウンドメイクにもうグッと来っぱなし!
SBに通じる、圧倒的な聴きやすさと米プログレ然とした開放感を備えた文字通りの快作です!
最後は、未CD化の超絶ジャズ・ロック盤が化石のように眠っているトルクメニスタンからのすんごい一枚!
比較的古くより知られたGUNESHや同一レーベルから先に入荷したANORなど、にわかにジャズ・ロックの発掘CD化が進んでいるトルクメニスタン・シーン。
このFIRYUZAはヴァイオリンやサックス/フルートを含む7人組で、79年に彼らが残した唯一作がこちら。
ヴァイオリンとサックスが応酬させる中央アジアらしいエキゾチックで哀愁ほとばしるフレーズがもう辺境プログレ・ファンにはたまらな過ぎる!
GUNESHほど民俗音楽そのものに傾倒した感じではなく、あくまで英米ジャズ・ロックに通じる洗練されたスタイルの中で民族エッセンスたっぷりの旋律を入れてくるところに抜群のセンスを感じます。(GUNESHはGUNESHでまた堪らんのですが!)
英米シーンをちゃんと見据えながら彼らでしか鳴らしえないサウンドを構築しているクレバーなジャズ・ロック盤と言えそう。
民族衣装を着込んだジャケも音楽と同様自国のアイデンティティを大事にしている表れなのでしょう。
これは凄い発掘モノではないでしょうか!
まずは、尋常ではないポテンシャルを秘めたこのポーランド新鋭からピックアップ。
作曲・ヴォーカル・プログラミングを担当する女性メンバーMarzena Wronaを中心とする3人組による、4年ぶりの2ndアルバムになります。
なにより素晴らしいのが、Marzenaの妖艶さとアーティスティックな感性がみなぎるヴォーカル・パフォーマンス!ビョークの影響を感じさせる浮遊感あるパートでの囁くような歌い方も良いし、多重録音した自身のエモーショナルなヴォーカルが折り重なって迫ってくるパフォーマンスにも耳を奪われます。
サウンド的にはエレクトロニカ・プログレと言えるほどプログラミング音響が大きくフィーチャーされていますが、そこにうっすらと音色を重ねるヴィンテージ・トーンのオルガンや幻想的なトーンで響くギターらのプレイが、ポーランドらしい美麗さを担っているのもポイントです。
それにしても、このMarzena Wronaの才能は凄いなぁ…。画像やこのライヴ映像を見る限りルックスも文句なしですし、今後の活躍に期待大なグループですね!
才能という点ではこちらも彼女に引けを取らないかもしれません。上記のCCCと同じくポーランドより登場したソロ・ユニットによる1stフルレンス・アルバムをご紹介。
HOVERCRAFTは、マルチ・ミュージシャンBartosz Gromotkaによるソロ・プロジェクトで、初のフルアルバムとなる本作はギター、ベース、キーボード、ドラム・プログラミング、ヴォーカルと全楽器を自身で演奏した意欲作です。
ビジュアルは公開されておらず、本人が写っていると思われる画像もこのボケた下半身自撮り写真だけ。
作風は、キング・クリムゾン影響下のヘヴィ・プログレと、ポーランドらしい陰影を帯びたメランコリックな音響を融合させたようなスタイルと言えるでしょう。
特筆はサウンドの要と言えるギターのプレイで、唸るようにヘヴィなトーンで繰り出すリフワーク、エモーショナルに泣きのフレーズを紡ぐリード、瑞々しいタッチのアコースティックギターなどをオーバーダブで重ね合わせ、シリアスながらもリリカルで幻想的な音世界を築き上げるサウンドメイクが実に見事です。
演奏がドラマチックに盛り上がってくると満を持してのメロトロンも鳴り響き、ツボを押さえたアレンジと音選びのセンスには並々ならぬ才能を感じ取れます。
クリムゾン・ファンはもちろん、同郷で言えばRIVERSIDEを愛聴する方にも聴いてみてほしい逸品ですね!
最後は再入荷からのオススメで、南米プログレの知られざる凄い一枚をピックアップしちゃいましょう☆
このCLIMAXは、ポトシ銀山で知られる南米大陸中部のボリヴィア出身グループで、ギタートリオ編成の3人組。
ボリヴィアのプログレと言えばWARAがほぼ唯一の存在として知られてきましたが、こんなバンドが存在したんですね~。
そんな彼らの唯一の作品であるこの74年作、これは凄まじいですよ…!
「粗野なフリオ・キリコ」と言えそうなほどに猛烈な手数を叩き込むドラム、えぐるようにゴリゴリと鳴らす骨太なベース、そしてサイケデリックな熱気を帯びつつこれでもかヘヴィに歪んだギターが、互いに譲らずぶつかり合う、スリリングで凶暴極まりないアンサンブルに度肝を抜かれます。とにかく圧倒的なテンション!
ギターはアグレッシヴに畳みかけるプレイの中に王道的な泣きのフレーズもたっぷりと織り交ぜた自在なスタイルを披露していて、その懐はなかなか深そうです。
南米って意外と爽やかなサウンドが多いのですが、本作は高温多湿のジャングルで鳴らされているような熱気と濃密さで激走しており、一般的な南米ロックのイメージにピタリとはまるサウンドかもしれません。
この曲は組曲になっているものの構築性みたいなものはあまり感じられないのですが、この未整理な感じが辺境プログレって感じで堪りませんよね!
最初は、全イタリアン・ロック・ファン必聴と言ってしまいたいこの作品!
71年にイタリアはジェノヴァで結成され、翌72年に本作をリリース。以降は数枚のシングルをリリースし74年まで活動しました。
4人のメンバー中3人が、のちに世界的に人気を博すポップグループMATIA BAZARとして活躍したことをご存じの方も多いかもしれません。
80年代には日本のCMでもガンガン流れていたようですね。
さて、そんなJ.E.T.によるこの唯一作、「これぞイタリアン・プログレ!」と言うべき叙情と熱情がほとばしる、聴いていて思わずガッツポーズしたくなる一枚。
極度に歪んだギターとクラシカルなオルガンがもつれ合い、メロトロンが吹き上がり、そして哀愁たっぷりのイタリア語ヴォーカルが少し厳かに歌い上げる、凄まじいまでのエネルギーに一曲目から圧倒されること必至。
このコッテコテの濃厚なサウンド、イタリアン・ロック好きにはたまらないはず!
そんな熱量みなぎる演奏を、ビシバシと手数多く刻むリズム隊がタイトに引き締めているのもまた特筆で、バランスの良さを感じさせます。
ハード・ロック的な凶暴さとクラシカルな叙情性を程よく織り交ぜたサウンドは、イタリアン・ロックに求めるべき要素を余さず揃えたものと言って良いかも知れませんね。
惜しむらくは録音があまり良くない点ですが、それが本作の荒々しい質感とマッチしている節もあるのでOKでしょう!
続いては、ユーロ・ロック・ファンにとっては嬉しい再発となったこちらです。
RUPHUSは、ノルウェーの首都オスロにて70年に結成され、81年の解散までに6枚のアルバムを残したグループ。
北欧プログレでも上位に位置する内容の良さを誇る彼らの作品ですが、特に初期作は長らく廃盤状態が続いており、熱心なユーロ・ロック・ファンのみがその素晴らしいサウンドを知るに留まっていました。
しかしこのたび、ノルウェーのプログレ系レーベルKarisma Recordsがついに1stと2ndを新規リマスターで再発してくれたんですよね!
1stではYESや70s初頭の英国ロック勢からの影響を土台にしたプログレ・ハードを聴かせましたが、新たなヴォーカリストが参加したこの2ndはかなりファンタスティックになり北欧プログレ然としたサウンドに変化した印象があります。
流麗かつスリリングなギター、ゴリゴリと疾走感溢れるベース、コーラス・ワーク、そして親しみあふれるキャッチーなメロディで構築されたYES影響下のスタイルは変わらず魅力的なのですが、そこにメロトロン、ピアノ、オルガン、シンセを駆使し、ファンタスティックで牧歌的な北欧らしい音色を加えるキーボードの活躍が素晴らしい!
変拍子で畳みかけるパートと優美に情景を描くようなファンタスティックなパート、メリハリの利いた構築性にも注目してほしい傑作となっています。
いやはや本当に素晴らしいグループだなぁ。3rd以降の再発も待ってますよ~!
ラストは、アルゼンチンのレジェンド・グループによるライヴ作をご紹介!
ALMENDRAは、アルゼンチン・ロックのレジェンドとしてリスペクトされるLuis Alberto Spinettaが率いた同国を代表するサイケ/プログレ・グループ。
69年にリリースされたデビュー作は、軍事政権下で抑圧されていた若者を中心に圧倒的な支持を集め、「アルゼンチン・ロックの原点」として愛されています。
70年に2ndアルバムをリリースして解散した彼らが、70年代終盤に再結成して79年に行なったのがこのライヴで、セットリストは勿論1stと2ndのナンバーで構成され、2曲の未発表曲も演奏。
時代の後押しも受けて同国ロック・シーンの寵児となった当時から10年。当然いくぶん洗練された演奏・アレンジにはなっているのですが、往年の名曲が次々とプレイされるステージには南米ロックファンなら感動すること間違いなし。観客の熱狂もレジェンド・バンドとしての人気の健在ぶりを物語っています。
キレのあるギターとグルーヴィーなベースが強烈にカッコいいラテン・サイケ・ハード「Mestizo」をどうぞ~
まずは、実質のデビュー作にして素晴らしい2枚組アルバムを届けてくれたイギリス新鋭からご紹介!
WARMRAINは2011年に結成した4人組プログレ・グループ。同年にEP『ABSENCT FRIENDS』をリリースして以来、8年の沈黙を経て発表されたフルレンス・アルバムとなります。
サングラスと黒革ジャケットで厳つく決めたメンバー写真にヘヴィな音が予想されますが、そのサウンドはPINK FLOYDやPORCUPINE TREEを受け継いだメランコリックに揺らめく音響空間が印象的な実に繊細なもの。
幻想的なアコギのリフレインとたなびくシンセが重なり合って生まれる優しくもダークな陰影を帯びたサウンドの中を、ギルモア憧憬のギターとデリケートな男性ヴォーカルが交錯。ギターが前に出る激しい展開にもメタリックさはほとんどなく、全体にゆったりとしたテンポで丹念に音を重ねていく手法でドラマを描き出します。
大人となった現在の視点から子供時代を思い出す事をテーマにしたCD1、子供時代の視点で大人になる自分をテーマに描かれたCD2という、全体を通じて完成するストーリー性の強いコンセプト作となっている点にも注目です。
PINK FLOYD、PORCUPINE TREEのファンなら確実にお楽しみいただける内容ですよ!
ユーリズミックスをカバーしたこの曲も大変ドラマチックに仕上がっていて良いなぁ。
00年代を代表する英国シンフォ・バンドと言える彼らが、2006年に発表した3rdアルバム『HOME』に、新規リマスター&リミックス、追加録音を施して、新たなジャケットでリリースしたのが本作。
泣きのギターを軸とする劇的すぎるアンサンブルに、アニー・ハズラムにコケットな艶やかさを加えたような美声が映える、メロディアスにして格調高いサウンドは従来と変わらず素晴らしいです。
注目は新規追加録音。CAMEL~TIGER MOTH TALESのPete Jonesもサックスで参加して、一層アーバンつかつ色彩のあるアレンジに仕上がっている印象です。
従来のバージョンを愛聴している方には、是非このバージョンも堪能してほしいですね~。
最後にご紹介するのが、再入荷したこの凄いコラボ・アルバム!
76年結成のスウェーデンのベテラン・シンフォ・グループISILDUR’S BANEが、なんとVAN DER GRAAF GENERATORのピーター・ハミルをヴォーカルに迎え制作したのがこのアルバム。
ISILDUR’S BANEは、2017年にMARILLIONのスティーヴ・ホガースをヴォーカルにフィーチャーした作品をリリースしており、大御所とのコラボ第2弾となります。
管弦楽器群とシンセ&エレクトロニクスを融合させた透明度高くも重厚な聴き応えを持つIBの近年の作風に、ハミルの存在感みなぎる歌声が素晴らしくマッチ!
バンドの前作『OFF THE RADAR』でコアなプログレ・ファンでも体験したことのないような孤高の境地に至っていた彼らのサウンドが、ハミルのヴォーカルにより歌モノとしての聴き易さを獲得したような印象を持ちます。
デヴィッド・ジャクソンを意識したであろう生々しく掠れたサックスのプレイも出てきたりと、VDGGへのリスペクトも随所に感じさせる文句の付け所のないコラボレーション作品となっていますよ!
8月の「今週の3枚」は次ページでお楽しみください☆
ノルウェーのグループ、74年作の2nd。1stからメンバー交代があり、新ヴォーカリストが加入。ハード・ロック寄りだった1stと比べ、かなりファンタスティックに洗練された印象。流麗かつスリリングなギター、ゴリゴリと疾走感溢れるベース、親しみあふれるキャッチーなメロディ、卓越したコーラス・ワークなど、YESからの影響を強く感じます。ただ、YESよりも牧歌的で、いかにも北欧といえるリリシズムに溢れているのが持ち味。そこを支えているのがキーボードで、メロトロン、ピアノ、オルガン、シンセを駆使し、ファンタスティックな音世界を構築しています。柔らかなハイ・トーンが魅力のヴォーカルもメロディの良さを最大限に引き出しています。変拍子を多用しアグレッシヴに畳み掛けるパート、優美でファンタスティックなパートとも、確かなテクニックと歌心に溢れています。これは素晴らしい作品です。オススメ!
74年にリリースされた彼等のデビュー作で、ブルースからの影響が強く感じられるブリティッシュ・ハード・ロック。Ray Smithのツボを押さえたギター・ワークと巨漢ヴォーカリストNicky Mooreの貫禄すら感じられるソウルフルなヴォーカルは必聴。1曲目がとにかくカッコ良くて、冒頭のハイハット一発で悶絶。タメとキレ味抜群のリズム隊はかなり良い感じ。「イェイ」の一声で全部持っていく存在感抜群のヴォーカル、空気読まずに弾きまくるギターも最高。フリーに比肩するアンサンブルで聴き手を飲み込む好グループです。
2014年に始動した男性ギタリスト/マルチ奏者と女性ヴォーカリストによるブラジル産シンフォ・プロジェクト、待望の19年作!前17年作『WHAT I FOUND』も2人とは思えない驚くべき豊かさを内包した名品でしたが、本作も息をのむほどに静謐で幻想的な音世界が待っています。シンセ&オルガンがうっすらと幻想のベールを広げると、A.ラティマーとS.ロザリーの中間にいるような泣きのフレーズ満載の美麗ギターが舞い、スッと胸に染み入る透明感いっぱいの美声ヴォーカルが囁くように歌います。ゆったりとしたテンポのナンバーが主ですが、前作以上にロマンティックで丹念に紡がれていく優美な作品世界にじっくりと浸りたい逸品。傑作です。
アルゼンチン・ロックのレジェンドとしてリスペクトされるLuis Alberto Spinettaが率いた同国を代表するサイケ/プログレ・グループ。再結成した彼らが3rd『El Valle Interior』リリース前年の79年におこなったライヴを収録。1stと2ndのナンバーにアルバム未収曲2曲を含む13曲をプレイしています。メロウな味わいのソフト・サイケ調の1st、サイケ・ハードなカッコよさが際立つ2ndと、各曲をバランスよく配しており、非常に聴きごたえのあるセットリストとなっています。メロウな哀愁が溢れ出す「Plegaria Para Un Nino Dormido」、キレのあるギターワークが見事なラテン・サイケ・ハード「Mestizo」、美しくもストレンジなサイケ名曲「Color Humano」、そして彼らの原点と言える一曲「Muchacha」など、10年の時を経て再演される代表曲の数々に感動が収まりません。演奏は全体に幾分洗練されましたが、Spinettaの語りかけるような優しい歌声は少しも変わりません。これは南米ロック・ファン必聴と言える素晴らしきライヴ盤!
ポーランドのプログレ・ユニットによる、EP2枚を経ての19年1stフル・アルバム。マルチ・ミュージシャンBartosz Gromotkaによるソロ・プロジェクトで、ギター、ベース、キーボード、ドラム・プログラミング、ヴォーカルと全楽器を自身で演奏した意欲作です。キング・クリムゾン影響下のヘヴィ・プログレと、ポーランドらしい陰影を帯びたメランコリックな音響を融合させたようなスタイルが特徴的。特筆は主役と言えるギターのプレイで、唸るようにヘヴィなトーンで繰り出すリフワーク、エモーショナルに泣きのフレーズを紡ぐリード、瑞々しいタッチのアコースティックギターなどをオーバーダブで重ね合わせ、シリアスながらもリリカルで幻想的な音世界を築き上げるサウンドメイクが見事。ここぞという場面で湧き上がってくる(疑似?)メロトロンもツボを押さえているし、揺らめくような淡いヴォーカル&コーラスもデリケートな世界観にマッチしていて、音選びのセンスの良さが光ります。クリムゾン・ファンやポーキュパイン・トゥリーのファンにオススメの逸品!
03年より米プログレの代表グループSPOCK’S BEARDのコンポーザーとして活動してきたJohn Boegeholdが率いるグループの19年デビュー・アルバム。キーボード/ギター/マンドリンを担当する彼に、現SBのDave Meros(ベース)とTed Leonard(ヴォーカル/リードギター)、元SBのJimmy Keegan(ドラム)という4人組で、実質的にSB関連のサイド・プロジェクト的位置づけと言えます。爽やかなメロディメイクとクリアに広がる抜けのいいサウンドで聴かせる、洗練されたプログレを展開。シャープなトーンでメロディアスにフレーズを紡ぎ出すギター、艶やかなトーンの色彩感あるシンセと幻想のメロトロンが混じり合うキーボード、そして厚みあるストリングスが作り上げる明瞭にしてドラマチックな深みもあるアンサンブルはさすがの完成度。落ち着いた声質ながら伸びやかで清涼感いっぱいに歌い上げるTedのヴォーカルもやっぱり絶品です。演奏にズシリとした重量感をもたらすリズム・セクションの仕事も特筆。SBに通じる、圧倒的な聴きやすさと米プログレ然とした開放感を備えた文字通りの快作です!
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