2020年1月12日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
VAN DER GRAAF GENERATORのメンバーとして活躍した管楽器奏者David Jackson、そして彼の娘である女性ヴォーカリストDorie Jackson、11年以降CARAVANでプレイするドラマーMark Walkerらが在籍するブリティッシュ・プログレ・バンドによる19年作2nd。
カンタベリー風の柔和な表情とケルト・ミュージックにも似た神聖な雰囲気を併せ持つ、ひたすら優しく奥ゆかしいファンタジックさに溢れた英国然としたメロディアス・シンフォを楽しませてくれます。
Davidのサックス&フルートもVDGGでの鋭く生々しいタッチとは対照的な柔らかく叙情味溢れる音色でアンサンブルを優雅に彩っていて素晴らしいですが、娘Dorieのあまりに澄み渡った麗しい美声にも驚かされます。
CAMELやGENESISら70年代プログレへのリスペクトも感じさせる、リリシズムいっぱいの正統派英国プログレ名品ですよ~!
本作は、2014年に結成されたポーランドの新鋭プログレ・バンドによる19年作。
フロイドのドラマ性、キャメルの叙情美、IQやペンドラゴンらネオ・プログレに通じるハードタッチも交えた明快な曲展開などを併せ持った、メロディアスで抜けの良いシンフォを聴かせます。
特筆はギターで、アンディ・ラティマーを受け継ぐ泣きのフレーズ溢れるプレイに速弾きも交えたスタイルで駆け上がっていく入魂のソロを各所で聴かせてくれて感動を増幅。
一方でピアノとシンセがメインのキーボードはポーランドらしい粛々とした陰影ある音色を提供しており、英国バンド影響下のサウンドとポーランド・プログレ然としたアプローチが見事に合致した力作と言えるでしょう!
最後は再発されたこのジャーマン・プログレ盤をピックアップ。
60年代より活動したSUBJECT ESQ.を前身とする、ミュンヘン出身のプログレ・バンド、74年作の1stアルバム。
ドイツと言うと実験的なサウンドがまず想像されるかもしれませんし、ジャケットもそんな感じですが、実はCAMELなど英国プログレに通ずる叙情的なサウンドが特徴的です。
聴き所は27分に及ぶタイトル曲。組曲形式で、ストーリ性豊かなドラマティックなサウンドを聴かせています。変拍子を多用したスリリングなパート、フルート、サックス、ハモンドによるジャジーなパート、メロトロンが美しいクラシカルなパートを巧みに織り交ぜ、テンション緩むことなく聴かせる構成力はかなりのもの。
ジャケットに惑わされずにお楽しみいただきたい一枚!
まずは、来年1月に来日も決定した、現プログレ・シーンの王者と呼ぶべき人気グループの6年ぶり19年作から!
2015年にキーボードのTomas BodinとドラムのFelix Lehrmannが脱退して以来初のスタジオ作となっており、後任には直近のツアー・メンバーとして名を連ねていたZach Kamins(key/g)とMirkko DeMaio(dr)を正規メンバーとして迎える形となりました。
Roine Stoltによるエモーションをたっぷり湛えた入魂のギター、Hasse Frobergの熱く歌い上げるハスキー・ヴォーカル、ズシリとパワフルに迫るリズム・セクションらが壮大に織り上げる、いつもながらの風格に満ちたシンフォニック・ロックは健在です。
その中で特に耳をひくのがキーボードの活躍ぶり。冒頭からピアノとメロトロンがリリカルに舞うインスト小曲で幕を開けると、力強く溢れ出すヴィンテージ・トーンのオルガンでTFKサウンドに厚みをもたらします。前任者T.BodinよりはKAIPAのkey奏者Hans Lundinに近い柔らかくも芯のあるタッチのプレイが印象的です。
メロトロンも随所で北欧プログレらしい透明感を描き出していて、全体のサウンド的にもKAIPA的なファンタスティックさが従来よりも強めかもしれません。
キーボードのカラーの変化を原動力にして軽やかなファンタジーが全編を覆うさすがの力作ですよ~!
つづいては、才気みなぎる米アヴァン・プログレ・バンドによる新作が届いておりますのでご紹介☆
09年に名門バークリー音楽大学在学中だったメンバーらによって結成された米アヴァンギャルド・プログレの筆頭格と言える彼ら。
抜群の演奏力とジャンルの垣根に捉われない複雑で高度な音楽性、そして孤高の存在感を放つ女性ヴォーカルを武器とします。
手数多く刻むジャズ・ロック調から人力クラブ・ミュージック調までを自在に繰り出すリズム・セクションに、パワフルなオルガンや狂乱のヴァイオリン、エッジの効いたギターが切り込む、アヴァンでヘヴィかつタイトに引き締まったアンサンブルだけでも強烈。
しかしそこにケイト・ブッシュやダグマー・クラウゼを過激にしたような「もの凄い」女性ヴォーカルが乗っかってきて、もう大変なテンションと生々しさで襲い掛かってきます。
思わずのけぞってしまいそうなほどヴォーカルを筆頭に感情的に高ぶりを見せるパートから、一瞬にしてクールダウンし静謐な音空間を作り出すこの「高低差」は圧巻。容易に何々風と例えるのも憚られる、これぞ「孤高」と呼ぶべき一枚です。
とにかく最近の「凄いプログレ」をお探しなら是非!
最後はブリティッシュ・プログレの超マイナー盤がリイシューされたので、取り上げたいと思います!
本作は、英国ロックの名バンドFAMILYによって設立されたレーベルRAFTから74年にリリースされた彼らにとって唯一のアルバム。プロデュースはFAMILYのフロントマンであるロジャー・チャップマンが務めています。
内省的でメランコリックなメロディと、重厚に畳みかけるバンド演奏と荘厳なストリングス・アレンジとが織りなす、これでもかとドラマティックなサウンドの連続に全編グッと来っぱなし。
特に素晴らしいのが、声を張った力強い歌声、センシティヴな歌声ともに存在感ある歌唱を披露するヴォーカル。ヴォーカルの魅力がしっかりと味わえる点は、自身が名シンガーであるロジャー・チャップマンが関わった成果なのかもしれませんね。
まさしく知る人ぞ知る一枚ですが、70年代ブリティッシュ・ロック&プログレのファンなら聴き逃がせない溢れんばかりの英国叙情が詰まった一枚となっています。
2015年設立の英レーベルPROGRESSIVE GEARSよりリリースされたこの注目グループのデビュー作!
中東や旧ソ連圏の中央アジア地域を除くと、盛んなのは日本とインドネシアくらいだったアジアのプログレ。この度ロック/プログレにおいては眠れる大国と言えたインドより本格的なプログレ・バンドが登場しました!
COMA ROSSIはインド南部に位置するハイテク産業の中心地バンガロールにて2014年に結成、18年に1stアルバムである本作を配信リリースしており、今年待望のCD化となりました。
手本としているのはPORCUPINE TREE、PINEAPPLE THIEF、近年のMARILLIONあたり。重々しくタイトに刻むリズム、畳みかけるように繰り出すヘヴィ・リフからハケットやロザリー譲りの繊細な泣きのプレイまで弾きこなすギター、そのギターとユニゾンもしつつ演奏に厚みと奥行きをもたらすシンセ&オルガン、虚空に響く物悲しいピアノ、そして端正かつ哀愁を帯びた声質が魅力の英語ヴォーカルが織りなす、重厚でダークな色調のシンフォニック・ロックは実に完成度高し。
そのサウンドはまさしく「本格派」という言葉が相応しいもので、一曲目から惹き込まれます。
また、不意にギターやオルガンがお香漂う寺院をイメージさせるオリエンタルな旋律を奏で始めるパートもあって、インドのグループらしさも感じられます。もう少しこういうパートが多くても全然良かったですが。
これはアジアン・プログレとしてのみならず、ワールドワイドに見ても間違いなく注目に値する好バンド。今後の動向も気になるところです♪
続いてご紹介するのは、現代イタリアが誇る天才サウンドクリエイターが放った新作!
90年代を代表するイタリアン・プログレ・バンドFINISTERREのベーシストとして活躍、00年代からはARIES、ROHMER、IL MASCHELA DI CERA、HOSTSONATENといったプロジェクトで並行して活動してきた鬼才ミュージシャン/プロデューサーと言えばFabio Zuffantiですよね。
09年からはソロワークも開始している彼が、イタリアの著名作家Antonio Morescoとコラボレーションしたのがこの作品。
43分に及ぶ全1曲という構成になっており、Fabio Zuffantiによる音楽をバックにMorescoが自作詞の朗読するスタイルで進行します。
特筆はやはりFabbio Zuffantiの作り出す深遠にして哀愁も漂わせた音世界。エレクトロニクスも導入しつつひんやりとダークに広がるアンビエンスな音空間が心地よく、その道の大家ブライアン・イーノに肉薄するような完成度で聴かせます。
先に発表された19年ソロ作「IN/OUT」でも見せたエレクトロ/アンビエントな作風をさらに推し進めた一枚となっており、現代イタリアン・シンフォの旗手と言えた従来の活躍に満足せず新たなフォールドで勝負するそのクリエイティビティには脱帽するほかありません。
ラストは最新リイシューより、この英国ポップ名盤をピックアップです♪
ご存じ、THE MOVE~ELO~WIZZARDで大活躍した英国の”ポップの魔術師”が、1975年にリリースした2ndアルバムが10年以上ぶりのリイシュー!
前作『BOULDERS』同様、作曲/演奏/プロデュースの全てを自身一人で担当しており、その才能はあのトッド・ラングレンに匹敵すると言って間違いありません。あ、ジャケットのイラストやアートワークも手掛けているので、一枚上手と言えるかも?
個人的な話ですが、とにかく2曲目「Any Old Time Will Do」が昔から大好きなんですよね。「ポップソング」と言えばまずこれを挙げたいくらいの、マジカルなメロディとキラキラしたアレンジが魅力的な一曲です。
続くドラマチックなバラード「The Rain Came Down On Everything」も素晴らしく、恋仲でもあったアニー・ハズラムの透き通るようなコーラスが曲の壮麗さを際立たせています。
こういういかにも英国的なナンバーの他に、アメリカ憧憬たっぷりの痛快なロックン・ロール・ナンバーも交えて進行していく構成はロイ・ウッドならでは。
長らく廃盤状態だったこともあり、リイシューを待っていた方もきっと多いはず。WIZZARDの曲も含むレアなシングル・バージョンを7曲収録したボーナス・トラックにも注目です!
まずは、11月1日にカケレコ国内盤がリリースされたスペインの素晴らしいプログレ作品からピックアップしましょう♪
マドリッドを拠点に活動するKOTEBELは、クラシックを修めたベネズエラ出身のキーボーディストCarlos Plaza Vegasを中心に00年前後より活動するシンフォニック・ロック・バンド。09年からは彼の娘で同じくクラシックの教育を受けたキーボーディストAdriana Plaza Engelkeも参加する父娘ダブル・キーボード編成を特徴としています。
前作に当たる12年のアルバム『CONCERTO FOR PIANO AND ELECTRIC ENSEMBLE』では、全世界全ジャンルの音楽/芸術作品を対象とする「Independent Music Awords」の12部門の一つ「インストゥルメンタル・アルバム部門」を受賞するという快挙を成し遂げたことで一躍注目を浴びました。
そうして大きな成功を収めた彼らの次なるアルバムとなった本作、前作以上と言えるかもしれない壮大にして奥深い音世界が広がっていて圧巻なのです。
まず耳を引くのが、前作でもサウンドの要を担ったAdriana Plazaのピアノ。クラシックの確かな素養を背景に持つテクニカルかつ端正な音運びに軽やかなジャズ風のタッチも織り交ぜたしなやかなプレイは名手と呼ぶにふさわしい風格を帯びています。
父Carlosも負けておらず、ここぞという絶妙な場面でアグレッシブに飛び出すオルガンやメロトロンのプレイでサウンドに重厚な厚みを生み出していて、やはり息ぴったり!
基本はテクニカルで硬質なスタイルですが、スペインらしさも感じさせるエキゾチックな旋律を奏でるフルートと熱くエモーショナルなギターも絡んできて、劇的に進行していきます。
これだけ変拍子満載の複雑な演奏を驚くべき安定感で支えるリズム・セクションの仕事も勿論素晴らしいです。
前半に収められた30分超の組曲をはじめどの曲も細部まで緻密に構築された楽曲と完璧にコントロールされたアンサンブルで一切の隙なく聴かせる傑作!
続いては、先週も取り上げたリイシュー専門レーベルPAISLEY PRESSの新作よりこちらをセレクト♪
70年代に5枚のスタジオアルバムを残したフランス出身のギタリスト/マルチ・ミュージシャンによる71年作2nd。以後の作品はフレンチ・プログレの名門レーベルEGGより発表されていますが、本作はEGGの親レーベルである老舗BARCLAYからのリリースです。
プログレ・ファンにとって注目ポイントはキーボードとプロデュースを務めるMAGMAのローラン・チボーの存在ですが、プレイ/プロデュースともにさほど暗黒な雰囲気はなく、静謐で幻想的なサウンドを提供します。
聴きものは1曲目で、淡々と刻むドラム、歌うような奔放な音運びのベース、密やかなタッチのエレピやオルガン、そして繊細に奏でるヴィブラフォンらによるサイケの残り香たゆたうアート・ロックなアンサンブルを切り裂くように、ジミヘン影響下のブルージー&エモーショナルなスリルあるギタープレイが炸裂。ギターが過熱すると共にバックも手数多く畳みかけてきて一気に緊張感が高まっていく後半の展開が見事です。フレンチ・プログレ黎明期の名曲と言っていいかもしれません。
以降のアルバムで主体となっていくアコースティック・ギターを主役に据えたアシッドなフォーク・ロック的作風も魅力で、牧歌的なフォーキー・サウンドが、不意にピリッとしたミステリアスな空気に包まれていく展開など、フランスのアーティストらしいアーティスティックな感性を随所に覗かせます。
本人の意図かは分かりませんが、ジャケットにも独特の美的感覚をに漂わせていますね。
最後は、クールなジャケとは裏腹のエキセントリックなサウンドが詰まったこの作品をご紹介!
1年前に行なわれた、スティーヴ・ヒレッジを迎えてのゴング来日公演、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。その現ゴングでギター/ヴォーカルを務めているカヴース・トラビのプロジェクト・バンドKNIFEWORLDでキーボードを弾いているのが、このEmmett Elvinです。マルチ・ミュージシャンであり、本作ではギター、ベース、キーボード、パーカッション、リコーダーとドラム&弦楽を除く全楽器を操ります。
KNIFEWORLDも相当に風変わりなサウンドですが、そのメンバーだけあって本作もかなりぶっ飛んだサウンドになっていますね。
やや強引に説明するなら、「無国籍風」80-90sクリムゾンと言えそうな音楽性を軸に、GONG的お遊び感覚や『YOU』ばりのトランシーなジャズ・ロックを織り交ぜた作風、という感じでしょうか。
美しいアンビエント展開も絶妙に挿入されていて、ぶっ飛びつつも静と動のメリハリの効いたスタイルで一気に聴かせてくれます。
百文は一聴にしかず、と言っては元も子もありませんが、上の説明で興味を持った方は是非音源をチェックしてみてください!
全曲試聴可能のbandcampページ
https://emmettelvin.bandcamp.com/album/the-end-of-music
10月の「今週の3枚」は次ページでお楽しみください☆
現スペイン随一と言える名シンフォニック・ロック・バンドによる7作目となる17年作。前12年作『CONCERTO FOR PIANO AND ELECTRIC ENSEMBLE』は世界的な音楽アワード「INDEPENDENT MUSIC AWARDS」を受賞するなどバンドにとって転機となった作品でしたが、5年ぶりとなった今作も前作に匹敵する緻密にして壮大な音世界が待っています。クラシックの確かな素養を背景に持つテクニカルかつ端正な音運びに軽やかなジャズ風のタッチも織り交ぜたしなやかなピアノがまずもって絶品!前作でもサウンドの要を担った女性ピアニストAdriana Plazaの技巧が光ります。そこにスペインらしさを感じさせるエキゾチックな旋律を奏でるフルートと熱くエモーショナルなギターが絡み合って構築されていくサウンドは、初期BANCOを彷彿させる重みとロマンティックさが漂う風格溢れるもの。ここぞという場面で噴き出すアグレッシブなオルガンやメロトロンのプレイにも痺れるし、変拍子満載ながらも抜群の安定感を誇るリズム・セクションも素晴らしい。30分超の組曲をはじめどの曲も細部まで緻密に構築された楽曲と完璧にコントロールされたアンサンブルで隙なく聴かせますが、時にはラテン気質の熱情がたぎる劇的な展開も待っていて、その静的なパートと動的なパートを絶妙に組み合わせたサウンドが大変に魅力的です。今作も期待を裏切らない傑作!
ロジャー・チャップマン率いるバンド、ファミリーが設立したレーベルRAFTより74年年にリリースされた唯一作。声を張った力強い歌声、David Bowieを想わせるセンシティヴな歌声ともに魅力的な存在感あるヴォーカル。内省的でメランコリックなメロディ。バンドによるコシのあるハード・ロック・アンサンブルと、全編にフィーチャーされた艶のあるストリングス・アレンジとが見事にかみ合った、荘厳でドラマティックなサウンドが印象的。英国叙情が堪能できるブリティッシュ・プログレの名作。プロデュースは、ロジャー・チャップマン!
トッド・ラングレンと並ぶ「ポップスの魔術師」との異名を持つロイ・ウッドが、ザ・ムーヴ、ELOと渡り歩いた後の75年にリリースした2ndソロ。ビーチ・ボーイズからボードヴィル音楽まで、様々なサウンドを縦横無尽に切り取り、全ての楽器をひとりで操り作り上げた本作はまさに傑作。白眉は完全無欠のポップ・チューンと断言したい、マジカルなメロディが素晴らしすぎる2曲目「Any Old Time Will Do」。この曲を聴くためだけでも損はない作品です。
現GONGのフロントマンKavus Torabiのプロジェクト・バンドKNIFEWORLDで活動するキーボーディストの19年ソロ作。「無国籍風80/90sクリムゾン」と言えそうな、重量感あるタイトなアンサンブルとエスニック・フレイヴァーが交わるユニークなサウンドをベースにして、時にGONG『YOU』のように疾走感あるトランシーなジャズ・ロック展開も交えて進行する、一筋縄ではいかないエキセントリックなスタイルが魅力。ドラム、ヴァイオリン/ヴィオラを除くギター、ベース、キーボード、パーカッション、リコーダーを自身で操り複雑に入り組んだサウンドを形成しており、マルチ奏者としての実力の高さを発揮します。合間に挿入されるアンビエント調の静謐な音作りも印象的。KNIFEWORLDのファンにもおすすめできる屈折感満点のプログレです。
VDGGで知られるDavid Jackson(sax/flute)、彼の娘であるヴォーカリストDorie Jackson、11年以降CARAVANでプレイするドラマーMark Walkerらが在籍するブリティッシュ・プログレ・バンドによる19年作2nd。カンタベリー風の柔和な表情とケルト・ミュージックにも似た神聖な雰囲気を併せ持つ、ひたすら優しく奥ゆかしいファンタジックさに溢れた英国然としたメロディアス・シンフォを楽しませてくれます。Davidのサックス&フルートもVDGGでの鋭く生々しいタッチとは対照的な柔らかく叙情味溢れる音色でアンサンブルを優雅に彩っていて素晴らしいし、娘のDorieもここぞで澄んだ美声を響かせていて感動的。CAMELやGENESISら70年代プログレへのリスペクトも感じさせるリリシズムいっぱいの英国プログレ名品です!
現イタリアン・プログレ・シーンの中核的存在と言えるミュージシャン/プロデューサーFabbio Zuffantiが、同国の著名な作家Antonio Morescoとコラボレートした19年作。43分に及ぶ全1曲という異色の構成で、Morescoによる自作詞の朗読にZuffantiが音楽を加えるというスタイルで進行します。特筆はやはりFabbio Zuffantiの作り出す深遠にして哀愁も漂わせた音世界。エレクトロニクスも導入しつつひんやりとダークに広がるアンビエンスな音空間が心地よく、その道の大家ブライアン・イーノに肉薄するような完成度で聴かせます。バンドの一員としてはFINISTERREやHOSTSONATENなどシンフォニックなスタイルを主としつつ、近年はソロ作をメインにデジタルでアンビエントな作風にシフトしている彼ですが、その路線が極まった一枚と言えるかもしれません。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!