2018年12月21日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
こんにちは。スタッフみなとです。
今日は、英国フォーク・シーンにおいて沢山の名盤を手掛けたプロデューサー、サンディ・ロバートンに注目して、作品をピックアップしてまいります。
英国フォーク界の中で、フェアポート・コンヴェンションやニック・ドレイクを手掛けたジョー・ボイドと並ぶ存在のサンディ・ロバートン。スティーライ・スパンを始めとして、多くの素晴らしいアーティストと仕事をしていきます。
その音楽キャリアのスタートは、ポップ・デュオでした。
サンディ・ロバートンは友人のRichard Tykittと組んだRICK & SANDYというデュオで、65年にいくつかシングルを出します。
ソロを経たのち音楽出版社に転職、マイク・ヴァーノンが67年に立ち上げたブルー・ホライズン・レーベルの運営に加わります。
ブルー・ホライズン・レーベルはフリートウッド・マックやチキン・シャックを始めとして、英国でのブルース・ロックの普及に多くの役割を果たしました。
サンディ・ロバートンはフォーク界にも大きな市場が眠っていることを感じ、またプロデュース業に興味を持つようになった事から、70年にセプテンバー・プロダクションを設立。
多くのアーティストを手掛けていきます。
さてそれでは、サンディ・ロバートンが関わった作品を見て参りましょう。
セプテンバー・プロダクションの第一号アーティスト、スティーライ・スパン。
こちらは70年の1stで、サンディ・ロバートン自身もその仕上がりを特に気に入っている作品です。
フェアポート・コンヴェンションを抜けたアシュレイ・ハッチングが英国伝統音楽を突き詰めるために始めたバンドで、ゲイ&テリー・ウッズ夫妻と、マディ・プライア&ティム・ハートの男女デュオを合体させたグループ。
マディ・プライアとゲイ・ウッズの、2人の女性ボーカルが織りなすハーモニーが素晴らしいです。
ゲイ&テリー・ウッズ夫妻は上記の1stの後すぐにスティーライ・スパンを抜けて、アイルランドに帰ります。
WOODS BANDを結成し1枚アルバムを残した後、デュオとして活動。
76年の2ndではサンディ・ロバートンがプロデュースを担当しています。
スティーライ・スパンの中心となっていくマディ・プライア&ティム・ハートも、サンディ・ロバートンプロデュースの作品をリリースしています。
「夏至」を意味する71年作。スティーライよりも少し、のどかで軽やかな作風。
マディの歌声はいつでも美しいですね。
英国フォークを代表するフィーメール・ヴォーカリストの一人、マンディー・モートンを中心としたバンド、77年2nd。
気品溢れる管弦楽の調べ、重厚かつ荘厳なストリング・アレンジ、表情豊かなエレクトリック・ギター、ミスティックなマンディーのヴォーカルと、すべてが有機的にからみあったサウンドは、もう究極の一言。
さて、次は男性アーティストを聴いてまいりましょう。
MIGHTY BABYがバックをつとめた69年の唯一作。
虚ろなヴォーカル、憂いを帯びたメロディ。アクの強さだけでなく、繊細さや格調高さも印象的な英アシッド・フォーク。
エスペラント『死の舞踏』にヴォーカルで参加したことでプログレ・ファンにも知られるSSW、70年2nd。
かき鳴らされるアコギとアシッド臭のあるヴォーカル。その後ろで流麗な旋律を奏で続けるキース・ティペットのピアノ。
圧倒的な緊張感とリリシズムと英国的な陰影にまぶされた、屈指の名盤です。
上記のキース・クリスマスと美麗なデュエットを聴かせてくれた、シェラ・マクドナルドです。
1stよりもピアノやオルガンのアレンジを多用しており、シェラの雰囲気に合っています。
サンディ・ロバートンもこちらの2ndがよりお気に入りだそうで、この後シェラが消息不明になってしまったことをとても残念がっていました。
グリムズやプレインソングで活躍した英いぶし銀SSW/ギタリスト、71年発表の2作品。
どこを切っても心にじんわり染み込んでくるような、枯れた味わい深さでいっぱいですが、特に『NINA AND THE DREAM TREE』の優雅で気品溢れるアレンジは息を吞むものがあります。
アンディ・ロバーツが、元ヤンコ・パートナーズやミック・エイブラハムズ・バンドのKey奏者ボブ・サージェントらと結成したグループ、71年唯一作。
ピアノがジャジーなフレーズを彩ると、広がる英国ならではの翳りある世界。そこに追い打ちをかけるように鳴らさせるメロトロン!
フィドルが英国的な陰影を描くフォーク・ロック、ルーラルなコーラスが染みるスワンピーな曲、ペダル・スティールが美しすぎるハートウォームな曲など、英国的なメロディが存分に堪能できます。
サンディ・ロバートンとイアン・マシューズの共同プロデュース、78年作。
AORをやっても、繊細で英国らしいところがいいですね。ロバート・パーマーやテレンス・ボイランを小粋にカバーしてます。
バーミンガム出身のドーラン兄弟を中心とするサイケ・トリオ、70年デビュー作。
アコギをフィーチャーしたアーシーなサウンドに充満する、薄暗くメランコリックな雰囲気が特徴的。
いかがでしたでしょうか。少しでもお楽しみいただければ幸いです。
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STEELEYE SPAN、WOODS BANDを経て、ゲイ&テリー夫妻がゲイ&テリー・ウッズ名義で発表した1stアルバム。75年作。いかにも英国的なジャケット通り、どこを切ってもブリティッシュの芳醇な香りが漂うブリティッシュ・フォークの名作。ウェスト・コーストの爽やかな風を取り入れつつも、ブリティッシュならではの陰影を保つ絶妙なバランス感覚は彼らならでは。ゲイの澄み切ったフィーメール・ヴォーカルとテリーの枯れた哀愁漂うヴォーカルの絡みが素晴らしい。
アイルランド出身、元STEELEYE SPANの夫婦フォーク・デュオ、76年作。1曲を除き全てオリジナル曲の今作は、アイリッシュ・ミュージックを感じさせるフィドルや、カントリー・フレイヴァーたっぷりの温かいスティール・ギター等、英国情緒と米国憧憬が溶け合った豊穣なサウンドです。トラッドというよりはシンガー・ソング・ライター的な内省的な旋律で、Gayの伸びやかなボーカルがひときわ澄んで響きます。ザ・バンドに通じるようなTerryの枯れたボーカルも味わい深く、ダルシマーやオート・ハープ、バンジョーなど多彩な弦楽器やDave Pegg、Dave Mattacksによる安定のリズム・セクションが厚みあるアンサンブルを繰り広げています。TENNENT & MORRISONのDavid Morrison、B.J. Cole参加、Sandy Robertonプロデュース。
76年作1st。ピアノやストリングスの荘厳な雰囲気、室内楽的な格調高さ、流れるようなメロディー、Mandy Mortonのミスティックなヴォーカルなど、メロウ・キャンドルを彷彿とさせる英国フォークを基調に、エレクトリック・トラッドなヴァイオリンをフィーチャーしたサウンドが印象的。名作です。
帯下部に「Distributed By GardenShed」シールが貼ってある帯、定価記載なし
盤質:傷あり
状態:並
帯有
カビあり、帯中央部分に色褪せあり
英国フォークを代表するフィーメール・ヴォーカリストの一人、マンディー・モートンを中心としたバンドで、本作は、77年発表の2ndアルバム。トラッドを下地にしたブリティッシュ・フォーク・ロックを基調としながらも、エレクトリックな楽器をふんだんに用いたアレンジが、新たな地平を切り開いた名盤です。ブリティッシュ・フォーク3美神が提示した”気品”に、70年代ブリティッシュ・ロックの持つ”けだるさ”が加わったような内容は、60年代末から脈々と流れる英国サウンドを総括したと言っても過言では無いほどの素晴らしさ。気品溢れる管弦楽の調べ、ニック・ドレイクの1stにて素晴らしいオーケストラを吹き込んだロバート・ギルビーによる重厚かつ荘厳なストリング・アレンジ、表情豊かなエレクトリック・ギター、ミスティックなマンディーのヴォーカルと、すべてが有機的にからみあったサウンドは、もう究極の一言。
「Distributed By GardenShed」シールが右下に貼ってある帯、定価記載なし
盤質:傷あり
状態:並
帯有
カビあり
リヴァプール・シーンやグリムズやプレインソングでの活動でもソロでも英ロックのファンにはお馴染みのいぶし銀SSW。73年の3rdソロ。プロデュースは、サンディ・ロバートソン。米ルーツへの憧れからこぼれ落ちる英国的な陰影に富んだ叙情美やシニカルなタッチや牧歌性。郷愁と緊張感とのバランスが絶妙で、これぞ英国フォーク・ロック/SSWと言えるサウンドを堪能できます。リチャード・トンプソン、名ペダル・スティール奏者B.J.Cole、イアン・マシューズ、ニール・イネスなどによる、アンディ・ロバーツにも負けないいぶし銀のアンサンブルも聴き所。
リヴァプール・シーンやグリムズやプレインソングでの活動でもソロでも英ロックのファンにはお馴染みのアンディ・ロバーツが、元ヤンコ・パートナーズやミック・エイブラハムズ・バンドのKey奏者ボブ・サージェントらと結成したグループ。サンディ・ロバートソンのプロデュースで録音され、アトミック・ルースターやジンハウスやハンニバルなども所属するB&Cレーベルより71年にリリースされた唯一作。2曲目「Sad」の名曲ぶりが凄い!抑制されたリズム隊とピアノが「くるぞくるぞ」と聴き手の期待を煽るタメの効いたイントロから雰囲気たっぷり。バックにはメロトロンも鳴らされ、ハイ・トーンのスモーキーなヴォーカルがエモーショナルに憂いのあるメロディを歌い上げる。リズムが走り、オルガンが鳴らされ、ピアノがジャジーなフレーズを彩ると、そこは英国ならではの翳りある世界。そこに追い打ちをかけるように鳴らさせるメロトロン!ブリティッシュ・ロック一級の名曲ですね。その他の曲も粒ぞろいで、米国憧憬の中にもフィドルが英国的な陰影を描くフォーク・ロック、ルーラルなコーラスが染みるスワンピーな曲、ペダル・スティールが美しすぎるハートウォームな曲など、英国的なメロディが堪能できます。英フォーク・ロック/SSWのファンはもちろん、ネオン・レーベルあたりのジャジーで叙情的な英ロックのファンにもたまらない名作!
CDLEMBOX246(5013929784604)(LEMON)
6枚組ボックス、各CDはペーパーケース仕様、ボーナストラック33曲
英バーミンガム出身、ギターとベースのDolan兄弟率いるハード・ロック・トリオ、70年リリースの2タイトルと、未発表に終わった69年作を収録!
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