2018年9月14日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
ジャケットにたった「1本の木」を描いただけでも、バンドの音楽性に応じて色々な違いや独特の趣が見えてきます。
というわけで、今回は「1本の木」ジャケットの新鋭プログレ作品を見てまいりたいと思います。
2016年からCAMELのキーボーディストに抜擢されたことで飛躍的に知名度を増している盲目のシンフォニック・ロック職人Pete Jonesによるプロジェクトの2017年作3rd。一面の雪景色と1本の木が示す通りの、「冬」をコンセプトにした必聴作です。
LA MASCHERA DI CERAやFINISTERREの活動でも知られるFabio Zuffantiによる、足掛け10年にわたる連作「Seasoncycle Suite」プロジェクト最終リリース作。夏の夕景と1本の木の幻想は、ドイツのANYONE’S DAUGHTERによる81年作『Piktors Verwandlungen』に通じます。
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DEEP PURPLEやURIAH HEEPを思わせるサウンドを聴かせるトスカーナの新鋭プログレ・バンドによる2012年作。木の葉の代わりに「歯車」が生えている不思議な1本の木のジャケットです。
エドガー・アラン・ポーの怪奇小説「告げ口心臓」をテーマに製作された、イタリアン・プログレ新鋭による2016年作。1本の木と心臓が絡み合うジャケットが、コンセプトを見事に表現しています。
超絶技巧の演奏陣と表現力溢れるヴォーカルを擁するイタリアのジャズ・ロック・グループの2016年作。
植物にも動物にも見える1本の木が、DEUS EX MACHINAの個性的な音楽性を表しています。
イタリアらしいへヴィー・プログレを奏でる5人組の新鋭による2017年作。ヴィンテージ色を全面に押し出したサウンドは高いクオリティーを誇ります。水辺に佇む1本の木が、力強いタッチで描かれています。
80年代に活動したMAGMAフォロワーEIDER STELLAIREのギタリストJean-Claude Delachatを擁するフランスのZeuhl系グループによる2012年作。ジャケットの1本の木こそ幻想的ですが、内容は混声合唱が乱れ飛ぶ、アクの強いMAGMAサウンドとなっています。
TALAS(Billy SheehanがMR.BIG結成以前に参加していたバンド)でヴォーカリストを務めていたPhil Naroを擁するカナダのプログレ・グループ。惑星に根を下ろす1本の木のジャケットは厳かな印象ですが、そのサウンドはYESやGENTLE GIANTを思わせるダイナミックなものです。
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ブラジルのTEMPUS FUGITやメキシコのCAST、チリのENTRANCEやキューバのANIMA MUNDIらと共に南米シーンを代表するプログレ・バンドによる2012年作。大空に浮かぶ巨大な1本の木のアートワークです。
アルゼンチンの新鋭プログレ・バンドによる2012年作。一見するとヨーロッパのグループかと思うような幻想的な1本の木のジャケットですが、音楽性のほうもユーロ・プログレに通じる湿り気とメランコリーを感じさせます。
1980年に英国はノッティンガムシャーに生まれ、1歳の頃に病気により視力を失った盲目のマルチ・ミュージシャン&コンポーザーPeter Jonesによるプロジェクト、待望の3rdアルバムとなる17年作!16年よりCAMELのメンバーとしてツアーにも参加する彼。前2作で聴かせたコンポーザー&プレイヤーとしてのレベルの高さはもはや揺るぎないものでしたが、いやはや今作も凄い完成度です。まるで80年代以降のシリアスなテーマ性を持ったキャメルを、ゴージャスなサウンドプロダクションで再現したかのような、モダンかつロマンティックで雄大なシンフォニック・ロックが眼前に広がるこの感じ…何というイマジネーション。BIG BIG TRAINあたりに通じるモダンでスタイリッシュな音像も活きていて、往年のプログレと現代のバンドらしいモダンなセンスがこれほど不可分に結びついたサウンドはそうそうないでしょう。これでもかとファンタジックなフレーズを紡ぎ出すキーボード、アンディ・ラティマーばりにドラマチックに泣くギター、芳醇に響くクラリネット&リコーダー、そして端正に歌い上げる美声のヴォーカル。彼一人で各楽器をこれだけ自在に操る才能にはただただ脱帽。各パートが次々と展開していく、映画を観ているような情報量の多い音像は前作からの持ち味ですが、それを複雑に感じさせない淀みなく流れるような緻密な構築性にも舌を巻きます。改めてとんでもない才能を見せつけられる思いのシンフォ傑作です。
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