2018年8月6日 | カテゴリー:KAKERECO DISC GUIDE,世界のロック探求ナビ
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KAKERECO DISC GUIDE、今回取り上げるのは2018年に新規リマスター再発され注目が再び集まる英国プログレッシヴ・フォークの怪盤、COMUSのデビュー作『First Utterance』です!
名門PYEレーベルの傘下に設立され、プログレッシヴ・ロックを始めとする実験性の強いサウンドを多く送り出したDAWNレーベル。
その中でも一際異彩を放っていたのが、このCOMUSです。
<メンバー>
Roger Wootton (ギター/ヴォーカル)
Glenn Goring (6&12弦ギター/ボンゴ)
Andy Hellaby (ベース)
Colin Pearson (ヴァイオリン/ヴィオラ)
Bobbie Watson (ヴォーカル/パーカッション)
Jon Seagroatt (フルート/パーカッション)
バンドの中心人物は、写真左端に写るRoger Wootton。怨念すら漂ってきそうな強烈なインパクトのジャケット画も彼が手がけています。
ちなみに内ジャケは、オモテとバランスを取るようにファンタジックなイラストが描かれています。こちらはメンバーのGlen Goringによるもの。
楽器編成を見る限りでは正統派の英国トラッド・フォークを奏でるグループかと思ってしまいますが、ひとたび再生が開始されるとその異形のフォーク・ミュージックに戦慄が走るはず…!
グニャリとゆがんだメロディをヒステリックに絡み合いながら歌う男女ヴォーカル、焦燥を煽るパーカッション、耳に刺さるような不協和音をひねり出す弦楽器。
英国の森の奥深くで密かに執り行われる古の儀式を覗き見ているかのような、おどろおどろしさと緊張感が聴き手を襲います。
しかしながらただ狂気的なだけではなく、ヴァイオリンやアコースティックギターには英国然とした瑞々しい響きがあって、時にゾクリとするほどの美しさを湛えているのも特徴。その部分は2曲目「Herald」によく現れています。
フォーク・ミュージック離れした狂気性と、英国フォーク本来の格調高さ。
この2つを見事に融合させたサウンドに、並のプログレ・バンドより遥かに鋭敏に研ぎ澄まされたCOMUSというバンドのプログレッシヴな感性を見て取ることができます。
アシッド・フォークとカテゴライズされることも多いCOMUS。その観点で彼らに匹敵するミュージシャンと言えるのがSimon Finnです。
唯一作である『Pass The Distance』は、彼岸へ向かってユラユラと鳴らされているようなアコギやキーボード、そして虚ろに呟かれるヴォーカルがただならぬ張り詰めた空気を生み出す孤高の一枚。狂気側へと振れる壮絶な「Jerusalem」は、COMUSばりのインパクトを残すことでしょう。
COMUSほど強烈なバンドはそういないものの、バラエティに富んだアーティスト達が在籍したDAWNレーベル。一部をピックアップしてまいりましょう!
アイルランド出身の愛すべきシンフォニック・ロック・グループですね。
寓話のようなジャケットのイメージそのままの、イエスのドライヴ感とキャメルの叙情美に英国的な牧歌性を加えたサウンドは、これぞ英国ファンタスティック・ロック!
ジミー・ペイジの代役を務めた経験も持つギタリスNorman Barrattを擁する元ヴァーティゴ所属バンドと言えば彼ら。フォーク/ハードロック/ファンク/ブルースロックが混在する、お得意のアクが浮いたごった煮ロックは健在!ジェスロ・タルばりのフルートも炸裂!
ヴォーカルやギターとサックス、フルートが粘っこ~く重厚に絡み合うサウンドは上のGRAVY TRAINにも匹敵。哀愁のハーモニーもあり、英国らしさ満載の濃密ジャズ・ロックを聴かせる好グループ。
フェアポート・コンヴェンションの初代ヴォーカルで、クリムゾンの前身Giles Giles & Frippにも参加していた女性シンガーと言えば? 木漏れ日のような柔らかなメロディと幻想的な管弦楽器が彩る名作ですね~。
後年ギルガメッシュでドラムを叩くマイク・トラヴィス在籍のジャズ・ロック・バンド。プレイはかなりジャズ寄りですが、英国らしい叙情がしっとりと影を落とすサウンドはとてもロマンチックで芳醇。リリカルなフルートをフィーチャーした「ディア・プルーデンス」の美しさと来たら。
とてつもない英国的叙情だ…。クリムゾン『宮殿』の叙情性を抜き出して凝縮したかのような一枚。浴びせ掛けるようなメロトロンとジャジーな哀愁にもうイチコロです。邦題『紅薔薇刑』!
73年発表の2ndアルバム。メロトロンを全編に配した重厚な音作りと叙情的なメロディーがたいへん美しくドラマティックな名盤。サビ部分での洪水のようなメロトロンが印象的な一曲目「Masquerade」、優しく繊細なメロディーを持つ二曲目「Sunset And Evening Star」、叙情的なメロディーと後半部分のウィッシュボーン・アッシュ顔負けのツイン・ギターが胸を締め付ける「Song」、静と動の対比による曲展開がドラマティックな大曲「Children」など、どの曲も良く練り上げられた名曲揃い。
70年にDawnレーベルよりリリースされた唯一作。サックス、オーボエ、フルートなど管楽器をフィーチャー。ハード・ロック、ジャズ、フォーク、R&Bをごった煮にしたハード&メロウな味わい深いジャズ・ロックを聴かせています。哀愁のメロディー&ハーモニーも印象的。名作。
ジャズ系の名セッション・ベーシストDaryl Runswick、後年ギルガメッシュのドラマーとなるMike Travis、キーボード奏者、フルート/サックス奏者による4人編成の英ジャズ・ロック・バンド、DAWNレーベルより70年にリリースされた唯一作。各メンバーのプレイはジャズ・ロックというよりかなりジャズ寄りながら、メロディアスにして英国らしい叙情がしっとりと影を落とすサウンドはとてもロマンティックで芳醇。冒頭の「MacArthur Park」の他、「Something」「Dear Prudence」などビートルズナンバーのカバーも聴き所で、奔放にしていぶし銀な魅力を放つジャズ・アレンジで聴かせています。特にリリカルなフルートの音色がリードする「Dear Prudence」は素晴らしいカバー。ブリティッシュ・ジャズ・ロックの隠れた名作です。
イギリスの孤高のアシッド・フォーク・シンガー、70年作。彼岸へと向かってユラユラと鳴らされているようなアコギやキーボード、虚ろにつぶやかれるヴォーカル、時折、波長が合ったかのようにハッとする美しいメロディを奏でるエレキ。英アシッド・フォーク屈指の傑作。
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