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「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう@カケハシ」 第十四回 ピーター・バンクスはなぜ、再評価されないのか --〈星を旅する予言者〉の六回忌にあたって 文・市川哲史

第十四回: ピーター・バンクスはなぜ、再評価されないのか --〈星を旅する予言者〉の六回忌にあたって


故ピーター・バンクスのイエス脱退後の音源が、まるで遺品整理のようにこの一年で系統化された気がする。心臓疾患で彼が突然逝っちゃったのが2013年3月8日だから、もう5年もの歳月が流れたのか。
ならばと六回忌の追悼原稿を書くことにした。だってアンソロジー・アルバム3作品で、なんとCD8枚分の音源だもの。

まず、音楽業界復帰後の1990年代に発表したソロ・アルバム全3W『INSTINCT』『SELF-CONTAINED』『REDUCTION』を完全収録した豪華3枚組『THE SELF-CONTAINED TRILOGY』が、昨年2月。

同年11月には、1973年のフラッシュ解散後に女性ヴォーカルのシドニー・ジョルダン嬢と結成した幻のバンド――要は活動中に作品がリリースされなかった《ピーター・バンクス・エンパイア》の全音源集『THE COMPLETE RECORDINGS』3枚組ときた。1995~96年に発掘リリースされた『EMPIRE MarkⅠ』『MarkⅡ』『MarkⅢ』のみならず、同バンド末期1979年の未発表リハーサル音源を2014年にコンパイルした『THE MARS TAPES』まで網羅されていた。

そして2枚組のベスト盤『BE WELL,BE SAFE,BE LUCKY…THE ANTHOLOGY』が今年の2月、六回忌の総仕上げとして編まれたわけだ。先の《SELF-CONTAINED》三部作からのセレクト+1999年発表の発掘〈イエス前夜〉音源コンピ盤『CAN I PLAY YOU SOMETHING?』に加え、1995年のイエス・トリビュート・アルバム『TALES FROM YESTERDAY』収録のバンクスによる“星を旅する人々”のセルフ・カヴァー(!)と、なんと今回が正真正銘の初CD化となる幻の英トランスアトランティック1975年の企画盤『GUITAR WORKSHOP VOLUME TWO』への提供曲2曲、“Warning : Rumble Strips”“Dancing Angel”が、この期に及んで聴けるとは。
くー。

Warning : Rumble Strips

試聴 Click!

ちなみにこの2曲のメンツは、バンクスとマーティン・ブライリーとアンディ・マッカロックとコリン・タウンズ--要は〈イエス+グリーンスレイド+キング・クリムゾン+イアン・ギラン・バンド〉ですね。

面倒になってきたので手を抜くが、あと3曲の未発表曲の中にはビリー・シャーウッド&トニー・ケイ参加の楽曲もあったとさ。

実はこれまでもピーター・バンクス関係の音源は、なぜか積極的に発掘リリースされてきた。
前述の『CAN I PLAYうんぬん』や〈誰も知らなかったエンパイア〉音源集もそうだし、バンクス&クリス・スクワイアにとって初の本格プロ・バンド《シン》関係の当時の音源を集めた『ORIGINAL SYN 1965-2004』もそうだ。フラッシュだってオリジナル・アルバム全3枚は無論のこと、ほぼオフィシャル・ブートなライヴ盤『PSYCHOSYNC』『IN PUBLIC』まで世に出てるのだから、至れり尽くせりこの上ない。

クリス・スクワイアに誘われて加入したシンは、単なるモータウンのカヴァー・バンドだったのが〈サマー・オブ・ラヴ〉な時代のムードに酔って、サイケ・バンドに大変身。ジミヘンの前座でマーキーに出演したりするも、シングル2枚だけで67年秋には解散の憂き目を見た。

で、めげないスクアイアが結成した《メイベル・グリアーズ・トイショップ》に参加したバンクスは「もう一人のギターの奴が嫌い」で脱退すると、ザ・フーの二番煎じみたいな《ニート・チェンジ》に加入。しかしスキンヘッズになることを拒否して、たった半年で脱退したのであった。実は面倒な奴なのだ。

結局、1968年6月に再びスクワイアに乞われて復帰したMGTは、ジョン・アンダーソンとビル・ブルフォードとトニー・ケイが参加して新バンド《イエス》に看板を書き換えて、翌1969年6月にシングル“スウィートネス”、8月にはアルバム『ファースト・アルバム』でメジャー・デビューを果たした。

そして1970年には先行シングル“スウィート・ドリームス”を経て、2ndアルバム『時間と言葉』を7月にリリースしたものの、バンクスはその3ヶ月前に〈脱退/解雇〉されていた。数奇な運命である。

彼がイエスから放逐された理由は幾つもあるが、それは後に置いておく。

やがて傷心のバンクスは、花形ギタリストを捜す結成したばかりのバンド《フラッシュ》に出逢い、加入を決めた。つまりフラッシュは、バンクスが「打倒イエスっ」を目論んで結成したバンドではない。勘違いしないように。

それでもジャズ・ロック系のエレキ&アコースティック・ギターをガシガシ弾きまくり、三声コーラスの一角を担うことでバンドに貢献しようとして、初期イエスに似ちゃうのは自然の摂理なのではないか。だってイエスOBだもの。

するとバンクス以外のメンバーがイエスの面々より普通人な分、フラッシュがそこそこの大衆性を持てたのは、〈瓢箪から駒〉以外の何物でもあるまい。1stアルバムは全米33位で、デビュー・シングル“スモール・ビギニングス”も米29位と、米国に関していえば〈古巣〉イエスより大健闘してたのだから。

しかし1972年5月にその『フラッシュ』、同年11月には早くも『フラッシュ2(IN THE CAN)』ときて、翌73年8月には3rdアルバム『死霊の国(OUT OF OUR HANDS)』のあげくその年の暮れには解散……ちなみに11月には初ソロ・アルバム『トゥ・サイズ・オブ・ピーター・バンクス(二面性)』までリリースしてたりなんかして、つくづく生き急いでるわ。

その後結成した《エンパイア》は大胆にも女性ヴォーカルをフィーチュアすることで、70年代後半の『全米トップ40』的ヒット商品路線を追随してみたものの、メジャー・レーベルとの契約をついぞ獲得はできなかった。個人的には、産業ロックに寄ったというより〈アップデートし損ねた、プログレ版フリートウッド・マック〉というか、圧倒的なローファイ感がかなり癖になった。当時リリースされたとしても、絶対売れなかったとは断言できるけど。

なんて本来なら陽の目を見るはずのなかったエンパイアの未発表音源を、未完成品とはいえCD3枚分を聴けたのも、『二面性』以来のソロ・アルバムが量産されたのも、1990年代に突入してからの出来事だ。イエス以前の楽曲がコンピされたのも、1999年である。

その当時その当時の楽曲を実際に聴いて《ミュージシャンとしてのピーター・バンクス》を対象化できる日が来るなんて、誰が想像できたろう。

まさに〈耳で聴く履歴書〉。

音楽マーケットが一気に拡大した90年代――CDセールスは毎年最高額を更新し続け、1998年には未だ前人未到の6075億円と、3億枚超えのCDアルバム販売枚数最長不倒距離を記録した。ちなみに日本の歴代トリプル・ミリオンセラー・アルバム全20作品中15枚が90年代のアルバムだから、ああCDバブル。
あの泡はどこにいったの。

特筆すべきは、プログレにとって<市場のCD化>が200%天の配剤だった点だ。

しかも日本は<世界一のCD化天国>っぷりが強烈で、とにかく無尽蔵の<世界未CD化>レコードを次々発掘しては、軒並み商品化するに至った。原盤権を持つ海外レーベルや音楽出版社が、当時世界2位の音楽市場規模を誇る「日本からのCD化オファーならば」と一も二もなく許諾のハンコを押しまくったのが、大きい。

すると、課外活動やバンド遍歴がやたら賑やかな達者なミュージシャンが多いプログレは、初CD化アイテムには事欠かない。そして、その時点での<世界未CD化>とは要は日本未発売レコードもしくは廃盤レコードなわけで、その天井知らずの恩恵を与ったのは言うまでもなく日本全国のプログレおたく――プログレッシャーたちだった。
だってピート・フレイムのファミリー・ツリーや『ブリティッシュ・ロック大名鑑』でしか見たことがない<文字データとしてのアルバム>が、リアルにしかもリーズナブルに聴けるようになったんだもの。
<誰も知らないようなバンドの、よりにもよって独盤のみのアルバム〉とか〈無名時代のあいつが1曲だけ参加した米シンガーソングライターの云々>みたいな、実はどうでもいい中古レコードを、西新宿の悪徳廃盤専門店に「稀少」というだけで万単位の高額通販で買わされてた、田舎のいたいけな少年プログレッシャーらが<レコード格差奴隷>からようやく解放された瞬間なのだった。
高校1年のとき、ピーター・バンクスの『二面性』の英国盤を1万8千円で買わされたのは私だ悪いかくそ。しかしあんな大金、どっから調達したんだ。

となると、深ぁぁぁい眠りに就いてたはずの先達たちも、<啓蟄プログレ>の如くこぞって目を醒まし地下室から這い出てくるのが、自然の摂理というものだ。皆、再結成したり活動再開したり新バンド結成したりコラボ組んだりソロ活動始めたりして、ライヴにレコーディングにプロモーションにと久々の本業に励んだのである。超精力的に。
CDの天下到来とともに、制作環境のデジタリゼイション化などでレコーディングもアートワークも低予算化が実現した上、おそろしく小っちゃいインディーズ・レーベルでも世界各国のマーケットに支障ない流通が可能になったため、アーティストにとって全ての手続きが機能的/機動的になったといえる。

その証拠に90年代突入以降、ピーター・バンクスが22年ぶりでゴードン・ハスケルが20年ぶりのソロ・アルバムを、ジェイミー・ミューアは14年ぶりの音楽仕事、そしてデヴィッド・クロスとイアン・マクドナルドとイアン・ウォーレスとマイケル・ジャイルズは、41歳・53歳・57歳・60歳でぞれぞれ人生初(!)のソロ・アルバムをめでたくリリースできたのだから、人類の進歩と調和は素晴らしい。

大阪万博以来ずっと。

そういう意味では時代の流行とはまったく無縁の、というか〈歴史上の人物〉たちの旧音源や未発表ボツ作品、そして〈余生の一品〉が我々の耳に触れることになった現在に、我々は感謝しなければならない。のだろう。
《演奏するプログレッシャー》にとってもそれを《聴くプログレッシャー》にとっても、CD時代の到来による〈ナウ・アンド・ゼン景気〉は意味深くて罪深かった――。

すっかりバイオグラフな音源群からピーター・バンクスを改めて俯瞰すると、90年代以降のリアルタイム作品が著しく精彩を欠いていたのが痛ましい。例の三部作『INSTINCT』『SELF-CONTAINED』『REDUCTION』は、デジタルとの融合やらニューエイジ的なるものへの接近やらサウンド・コラージュやらほぼワンマン・レコーディングやらと、いかにも〈あの時代ならでは〉の最先端を試行したのだが、やはりというか、全っ然バンクスらしくない。

そもそもジャケが酷いジャケが三枚とも。もしかしたら本人は「リリースさえできればなんでもいい」と達観してたのかもしれないが、音も外観も低予算は犯罪である。

当時の私はそんなバンクスを、クリムゾンOBのゴードン・ハスケルに重ねていた。

バンクス同様消息不明の80年代を過ごしたハスケルが、やはり突然18年ぶりのソロ・アルバム『HANBLEDON HILL』をリリースしたのが1990年。以降、それまでの沈黙が嘘のように1992年に『IT’S JUST A PLOT TO DRIVE YOU CRAZY』、1997年に『SERVE AT ROOM TEMPERATURE』と連発したが、彼もチープ極まりないジャケで見る者をがっくりさせてくれた。音楽的には普通に渋いヴォーカル・アルバム、だし。

つまり、イエスとクリムゾンの商業的大成功&作品的全盛期には在籍していない両者って、双璧の不憫さを誇る。

そしてハスケルは脱退からはるかのち、“ケイデンスとカスケイド”のヴォーカルをエイドリアン・ブリューに、“ボレロ”のベースをトニー・レヴィンに差し替えられたが、バンクスも脱退するやいなや“ディア・ファーザー”の全ギター・パートをオーケストラに奪われた。いや、2ndアルバム『時間と言葉』ではそれでも全曲ギターを弾いてるのに、米国盤ジャケには後任のスティーヴ・ハウが写ってるのだから、軽いイジメだ。

とこの二人を同一視して憐れんでいたら、2002年に驚天動地の出来事が起きた。ハスケルのシングル“How Wonderful You Are”が全英2位の大ヒット曲になっちゃったのだ。英国でも皆よっぽど慌てたようで、ワーナー・ブラザーズはこの曲を収録した前年発売のアルバム『LOOK OUT』の原盤権を弱小インディーズ・レーベルから急遽買い取り、『HARRY’S BAR』として新装リリースしたのであった。

うーん、《ゴードン・ハスケル>ピーター・バンクス》だったかぁ。


さて、我々はバンクスをどう評価すればよいのだろう。

ボーナストラックの関係で、『時間と言葉』現行盤は“スウィート・ドリームス”の〈オケ有り/オケ抜き〉2ヴァージョンを聴くことができる。またボーナス曲のオケ主役“ディア・ファーザー”も、『ファースト・アルバム』所収の〈バンクスがしがしギター弾いてます〉ヴァージョンと較べれば、まさに《Orchestra Killed The Guitar Star》な仕打ちと言うしかない。

結成当時から粉骨砕身尽くしたマネージャー、ロイ・フリンをお払い箱にされたことに憤慨した侠気(おとこぎ)がイエスを脱退させた、とバンクス本人は語っている。

加えて『時間と言葉』は、〈ひとり舞い踊り妄想狂〉ジョン・アンダーソンが連れてきたexヘッズ・ハンズ&フィートのトニー・コルトンがプロデュース。常々オーケストラ導入を熱望してたアンダーソンに応えたのはいいが、「ナイスやパープルの真似してどうする」と快く思わなかったバンクスは、まずオーケストラ共演ライヴを暴れギターで台無しに。するとコルトンもレコーディング中に、“スウィート・ドリームス”のギターを全てオーケストラに差し替えるなど、露骨な報復に出たわけだ。

どっちも大人げないけども。

事の真相をかつて、アンダーソンと〈《イエス》という名の蟹工船を操舵する人買い親父〉クリス・スクワイアに訊いたことがある。

市川 イエス信者の間では、イエスにおける人事交替劇は全てあなたからの電話――通称〈クリスの電話〉で決定するという話が、昔から都市伝説化してるんですけども。

スクワイア 俺を責めないでくれよ(嬉笑)。

市川 よくいえば〈頭脳中枢〉、別の言い方すれば〈人事部長〉みたいな。

スクワイア がはは。ありがとう。

市川 その人事部長に前から訊きたかったんですけど、ギタリストをピーター・バンクスからスティーヴ・ハウに交替した辞令は、どんな事情だったんですかね。

スクワイア アレは……最初の2枚のアルバムをピーターと一緒に作ったら、我々の目指す音楽的方向性に彼のギターではあれ以上の可能性がないように思えてきてた。で、もっと違うギター・スタイルを試してみたくなってたから、スティーヴに魅力を感じたさけだよ。だって彼はジャズからカントリーから、いろいろ弾くからな。

アンダーソン ピーターにとってイエス時代の想い出は、あんまり愉快なもんじゃないだろうし。大体、その後イエスが大成功したのを目撃しちゃったわけだから、とても辛い立場だよね。わかるよーわかるわかる、うんうん。

市川 勝手に完結してますなぁ相変わらず。

初期のイエスにおいてメンバーのソロ・コーナーはやはり見せ場で、バンクスの我儘なギター・インプロはしばしば「このまま一生終わらないのではないか」と思わせるほどの長丁場と化した。ヘヴィーでジャジーでサイケな、とにかく歪んだ音のアドリヴでその場を支配することに命賭けのように映った。

ハウという後任者が後任者なだけに、そんなバンクスのギターはどうしても雑に聴こえてしまう。ハウよりアヴァンギャルドでフリーキーな分だけ、艶と品には欠ける。お世辞にもメロディアスとは言えない。

それだけに、『時間と言葉』でのオーケストラとのコラボでバンドの方向性――〈最大限に研ぎ澄ました各メンバーのスキルによる、緻密なアンサンブルの構築〉が見えたアンダーソン&スクワイアが、「バンクスは要らない」と判断して当然だろう。
『こわれもの』以降の作品群を聴けば、イエス・ミュージックに自由なアドリヴが入り込む隙間がないのは一目瞭然のはずだ。事実、ビル・ブルフォードが『危機』を最後に脱退したのも、毎夜毎夜同じストロークしか求められないイエス・ミュージックの〈究極の定型化〉が嫌だったわけだし。


では改めて――さて、我々はバンクスをどう評価すればよいのだろう。

高1のとき、悪の廃盤専門店に高額なのについ〈買わされた〉彼の1stソロ・アルバム『トゥ・サイズ・オブ・ピーター・バンクス(二面性)』。いま考えれば主役のバンクスよりも、ジョン・ウェットン、ヤン・アッカーマン、フィル・コリンズ、スティーヴ・ハケットといった豪華ゲスト陣の〈名前買い〉だった憶えがある。フラッシュの3作品と同じくジャケはヒプノシス、というのも卑怯だ。

漂う正体不明の〈名盤〉感。まだまだプログレッシャー発展途上中の田舎の16歳に、これだけの包装紙を目の当たりにして「騙されるな」と言う方が酷だろう。

このソロとフラッシュをリリースした《SOVEREIGN/ソヴリン》は、《ハーヴェスト》や《RAK》《パープル》《サインポスト》などと同じ英EMI傘下のレーベルで、1972年に設立された。フラッシュ以外にはルネッサンスも契約してたものの、メガヒットが生まれず僅か13タイトルで消滅した幻のレーベルだったりする。

でこのゾヴリンのカタログのほとんどのアートワークをなぜか、ヒプノシスがまるで専属デザイナーのように手掛けただけであって、別にバンクス&フラッシュがスペシャルなわけじゃないのであった。にしてもヒプノシスは、ソヴリン関係者に何か弱みでも握られてたのだろうか。

話がそれた。

実際にこの〈高い買い物〉を聴けば、全曲インストでバンド・スタイルにエレキ・ソロにアコギ・ソロにカントリーと、多彩なスタイルと「さすが初代イエス」の達者なテクをかましまくりで意外に愉しかった。バンクスってプログレ的な緻密さや丁寧さ、そして高級感に欠けるから、我々界隈で過小評価されてるだけの気がしないでもない。

このひとのざらざらした音触はある意味グランジ的だから、我々が慣れ親しんできたいわゆる〈イエス・ミュージック〉には似合わないというか、浮いてしまう。だからこそイエスよりもアート・ロック寄りのフラッシュや、場末のディスコの箱バンのようないかがわしさが素敵なエンパイアに、私はこっそり惹かれていたのだ。

本人的には忸怩たる想いを当然抱えてたわけで、フラッシュがだんだん「これが俺のイエスだ」路線に傾いたのもわからないではない。でも比例してセールスは落ちたのだから、皆もこっそり「バンクスにイエスは似合わない」と思ってたに違いない。


では再度改めて――今度こそ、我々はバンクスをどう評価すればいいのだろう。

考えてみてほしい。

たとえば私は『スター・ウォーズ』リアルタイム世代だから、1978年夏の日本公開時に『Ⅳ新たなる希望』を観て以来、『Ⅴ帝国の逆襲』→『Ⅵジェダイの帰還』→『Ⅰファントム・メナス』→『Ⅱクローンの攻撃』→『Ⅲシスの復讐』→『Ⅶフォースの覚醒』→『Ⅷ最後のジェダイ』の順番で観てきた。『Ⅶ』と『Ⅷ』は糞だけど。

だけど2006年以降に『スター・ウォーズ』シリーズを初めて観た連中の中には、『Ⅰ』→『Ⅱ』→『Ⅲ』→『Ⅳ』→『Ⅴ』→『Ⅵ』という時系列順で観ることができた〈幸運〉な輩もいるはずである。公開順と時系列順のどちらで観るのが面白いかは別として、私が〈『Ⅰ』から始まる『スター・ウォーズ』を体験すること〉は未来永劫不可能なのだから、羨ましい。だって〈転結〉済みの私が何も知らないフリして〈起承〉できるわけないもの。つまり、白紙の状態で『Ⅰ』『Ⅱ』『Ⅲ』を純粋に批評する資格が、そもそも私にはないのだ。

《ピーター・バンクスを語る》のも同じである。

57歳の私がリアルタイムで聴けたイエスが、小6で『海洋地形学の物語(失笑)』。やがてハウ&ウェイクマンが揃った名盤『こわれもの』に遡って、そっから時系列で聴いてった。で聴くものがなくなってやっと、バンクス時代の『ファースト・アルバム』『時間と言葉』に手を出した記憶がある。

私より下の世代は皆、似たようなもんだろう。イエスを聴くにあたって、『こわれもの』以前は後回しにしたはずだ。
たぶん世界規模でそうだったようで、その証拠に1975年に初期2枚からの選曲――要はバンクス時代のベスト盤『イエスタデイズ』が編まれたではないか。ご丁寧に。

つまり、〈スティーヴ・ハウズ・イエス〉を散々堪能したあとから〈ピーター・バンクズ・イエス〉を聴いても、それは《ハウの前任ギタリストとしてのバンクス》でしかないし、参考記録もしくは比較対象の印象しか残らない。
バンクス単体で純粋に捉えることは、もはや永遠に無理なのだ。申し訳ないが、どれだけバンクスを対象化しようとしても、彼脱退後のイエスもしくはハウに一切触れないままではどうにもならないのであった。

超ド級の不幸だ。

だけど別の言い方をすれば、いついかなる場合においても一切空気を読むことなく、自分の思うままに弾き倒せた〈心の太さ〉こそ、ピーター・バンクス最大の個性だったんだなととつくづく思う。

一枚でいいからエンパイアのアルバムが完パケできて正式リリースされていれば、きっと《名盤探検隊》や《ニッチなんたら》で世界初CD化されたような、カルト人気を誇れたかもしれないのに。

改めてピーター・バンクスに合掌。





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    初代YESのギターPETER BANKS率いる英ロック・グループ。72年作2nd。1stより同じく元YESのTony Kayeが脱退。Peter Banksのドライヴ感いっぱいのギターとRay Bennettのゴリゴリと疾走感溢れるベースを一層フィーチャーし、突き抜けるアンサンブルで爽やかに駆け抜けます。10分以上の大曲を3曲収録しており、やはりYESを彷彿とさせる複雑かつスピーディーな展開が聴き所。キャッチーなヴォーカル&メロディは1stと変わらず魅力的。初期YESのファンはもちろん、PILOTあたりのファンも気に入るでしょう。

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