2017年12月4日 | カテゴリー:カケレコ中古棚探検隊,世界のロック探求ナビ
タグ: ジャズ・ロック
スタッフ増田です。
60年代半ばからR&Bなど様々なジャンルを吸収したクロスオーバー・サウンドを追求しはじめた、英国ジャズ・ロックのパイオニア的キーボーディストといえば……ブライアン・オーガー。
ハモンド・オルガンをトレードマークとし、ジャズ・ロック好きやブリティッシュ・ロック好きにはたまらないサウンドであるにも関わらず、なかなかカケレコではピックアップしてこなかった彼。
今回はそんなブライアン・オーガーの作品群を中古棚よりピックアップ!多彩な魅力を持つ彼の名作をご紹介していきたいと思います。
ブライアンは音楽愛好家の家族の元に生まれ、3歳の頃からピアノを弾き始めました。
60年代初頭にはロンドンのジャズ・クラブでミュージシャンとして名を馳せ、メロディ・メーカー誌のジャズ・ピアニスト新人投票で1位も獲得。
65年ごろからはピアノからハモンド・オルガンにシフトチェンジし、ブライアン・オーガー&トリニティという自身のグループでいち早くロックとR&B、ジャズを融合させたサウンドを生み出していきます。
まずはそんな「トリニティ」の68年2ndからご紹介!
こ、これが「A DAY IN THE LIFE」……!?グルーヴィーでジャジー、しかもオーケストレーションもふんだんに使っちゃって、超絶プログレッシブじゃないですか!
そしてあくまでメインは叙情的オルガンというところがキモ。これがクロスオーバー・サウンド……ブライアン・オーガーの類稀なる才気が炸裂してます。
当時はLP2枚組という大作で、自由や社会、愛といったテーマを体現したコンセプト作でもある3rdアルバム。
アヴァンギャルドな展開や、ゴスペルやフォークなど様々な音楽性が次々と現れるバラエティ豊かな内容は、まさに「街頭のざわめき(=ストリート・ノイズ)」のよう。
疾走感あふれるブライアンのオルガンと、ソウルフルなジュリー・ドリスコールの歌声という二つの強烈な存在をフィーチャーしたサウンドも見事。ジャズ・ロック草創期の大傑作です!
翌年4th。ジュリー・ドリスコールが抜け、前作よりコンパクトにまとまった一作ですが、楽曲の多彩さは前作にも引けを取りません。
スライ&ファミリー・ストーンの「I Wanna Take You Higher」にフォーレの「Pavane」のジャズ・ロック・カヴァー、からのトラフィック「No Time To Live」、そしてハービー・ハンコックの「処女航海」…。どこから何が飛んでくるかわからないドキドキ感もクロスオーバー・サウンドの醍醐味でしょうか。
一押しはなんと言ってもこの「Pavane」。叙情派オルガン・ロック・ファンは出だし数秒でやられます。
さて「トリニティ」終息後には、ジャズ/フュージョン色を強めた「ブライアン・オーガーズ・オブリヴィオン・エクスプレス」というかっこいい名前のグループを結成。
71年の同名作はジョン・マクラフリン「Dragon song」のカヴァーに代表される強靭なジャズ・ロック・アルバムでしたが、翌年の本作はうって変わってスワンプ・チックなアコギやサザン・テイストあふれるコーラスを取り入れた爽やかな一作となっています。
サザン・ロックと洗練されたジャズ・ロックの融合はこれまた新鮮ですが、独特ながらも心地よいサウンドに仕上がっていてオススメです。
そして次作3rdはまたうって変わって、今度はファンク色あふれるグルーヴィーなジャズ・ロックを展開。
サンタナとの活動で知られるヴォーカリストALEX LIGERTWOODのソウルフルな歌唱と、フュージョン・タッチのオルガンが織りなすサウンドがクールです。
サザンやファンクなど様々な音楽性に挑戦してきた彼ですが、商業的にはなかなか上手くはいかなかったようです。
しかしようやく彼の挑戦性が認められたのが73年の4thである本作。収録曲の「Happiness Is Just Around The Bend」はビルボードのロック、ジャズ、R&Bのチャートに一斉にチャート・インするという快挙を成し遂げました。
ソウルやR&B的なグルーヴ感とジャズ・タッチの心地の良いエレピ、そしてそれらを包括するロック。多様なジャンルが垣根を超えて滑らかに融合した理想の「クロスオーバー」サウンドがここで完成されています。
ようやく軌道に乗ったオブリヴィオン・エクスプレス。前作の勢いのままに、より脂の乗ったフュージョニックなアンサンブルを聴かせてくれるのがこちらの74年作5th!
ファンクのグルーヴ感と土着的なパーカッション、そして甘いエレピやマイルドなギターといった英国ジャズ・ロックらしい幻想性が織り交ざったサウンドが絶妙。4thとあわせてこちらも傑作です。
というわけで、ブライアン・オーガーの様々な作品をご紹介してきましたが、「クロスオーバー」ミュージシャンなだけあって、一作一作が本当に多彩!
しかし時代ごとに違った新しいサウンドに挑戦し、それを自身の音楽に吸収していくのが彼の魅力でもあります。
また新しいサウンドを取り入れても、暖かみのあるアーシーなオルガンや優しいエレピなど、実に英国らしい叙情性が満ち溢れているのもポイント。
ぜひお好きな作品を探してみてください。
ロック、ブルース、ジャズ、ファンクのクロスオーヴァー・サウンドを志向したTRINITY名義のラスト作。70年リリース。グルーヴィーなオルガンが何と言っても格好良いTRAFFIC「NO TIME TO LIVE」、SLY & THE FAMILY STONE「I WANT TO TAKE YOU HIGHER」など、カヴァー曲のセンスもグッド。
デジパック仕様、ボーナス・トラック2曲
盤質:無傷/小傷
状態:良好
ケース不良、トレーツメ欠損
71年作、OBLIVION EXPRESS名義での2nd。前作のジャズ・ロックから、一転してアコースティック・ギターをフューチャーし、スワンプ・ロック寄りのサウンドを聴かせています。ただ、レイドバックしたという雰囲気ではなく、ムーディーなオルガン、叙情的&ソウルフルなヴォーカル・メロディーが印象的な何ともオリジナリティ溢れるサウンドを聴かせています。ジャケットがまたグッド。ジャケ買いしてまず損することはない名作。
OBLIVION EXPRESS名義の1st。71年作。TRINITY時代に比べ、グルーヴ感はそのままにロック的なダイナミズムを増したジャズ・ロックが印象的。各パートはテクニック抜群で、グルーヴィーかつテクニカルな演奏はかなり聴き応えあります。名作。
74年作、5thアルバム。ファンク、ジャズ、ロックが融合した必殺グルーヴィーなサウンドが炸裂する代表作であり傑作。
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