2017年8月24日 | カテゴリー:カケレコ中古棚探検隊,世界のロック探求ナビ
タグ: アシッド・フォーク
3年前に出た、アシッド・フォークの女王ことリンダ・パーハクスの2ndには、驚かされましたよね。44年もの歳月を経ながらも、あんなに素晴らしい作品を生み出せるとは、その才能にただただ感服してしまいます。
そのリンダが何と9月にまた新作を出すとのこと。いやはや、有難いですね!
さて今回は、アシッド・フォークの偉人たちの遺伝子を受け継ぐ、現代のフィメール・フォーク・シンガーを特集いたします。
カリフォルニア出身のSSW。70年作。透明感溢れるハイ・トーンが魅力の女性ヴォーカル、夢見心地のメロディーが印象的な「心ここに在らず」フォークの傑作。妖艶な感じはメロウ・キャンドルをちょっと思い出します。
米ルイジアナ出身女性SSW、11年作。ほぼ自身の声だけで楽曲を作っています。ループペダルで幾重にも重ねられた歌声が深い残響を伴って響く聖歌のように清らかなメロディーは、アンビエントな讃美歌といった趣です。ジュリアナは自然豊かな牧場で牧師の父親のもと育ち、木の上で歌っていたそうで、重ねられた歌声は決して閉じてはおらず外へと向かっており、木々からこぼれる光のような明るさを感じさせてくれます。リンダ・パーハクスなど美麗なアシッドフォークが好きな方から、ブライアン・イーノなどのアンビエント・ミュージックが好きな方におすすめ出来る名盤です。
ヴェム・ヴェンダース監督映画『都会のアリス』に出演のドイツ人女優、シビル・ベイヤーが70年代に録音し、06年に陽の目を見た唯一作。ギター弾き語りの簡素なフォークなのですが、再生してすぐに、濃厚に漂うメランコリーに圧倒されます。素朴に爪弾かれるアコースティックギターに、ろうそくの炎のようなボーカルがかすかに響き、ダウナーながらも柔らかく心地よいそのサウンドを聴いていると、すっと心が落ち着いてくような鎮静作用があります。ジュデイ・シルやニコ、ニック・ドレイクなどに通じる、真夜中のアシッド・フォークです。
サンフランシスコ女性SSW、12年作。奇妙なコード進行で爪弾かれるギターに、ヴァシュティバニヤンが風邪をひいたような鼻にかかったコケティッシュなボーカルがそっと乗り、内面に沈みこむようでいて、どこか奔放さのある心地よいメロディーが一度聴いたら忘れられない強い印象を残します。ヴァシュティ・バニヤンやシビル・べイヤー、ニック・ドレイク等に魅了される人のための、現代のフィメール・アシッド・フォークです。
ヴェルヴェッツ1STでもおなじみのドイツ人女優/シンガー、67年作より。舌足らずな低音ボイス、たまりません。
米カリフォルニア生まれでニューヨークで活動する女性SSW、00年1ST。静かに爪弾かれるアコースティックギターに、どっしりとしたニーナのボーカルが漂うそのサウンドは、リッキー・リー・ジョーンズ『浪漫』のポップな気だるさと、ジュデイ・シルの底なしのダークさを合わせたかのようです。ニコの『チェルシーガール』に通じる退廃的ムードもありますね。またチェロやバイオリンを擁したドライなバンドサウンドが、ニーナの少しやさぐれたボーカルに非常に合っており、ジャケのような独特のモノクロームな質感を生み出しています。
英フォークバンド、ペンタングルのボーカル。69年作より。切れのいいクリアボイスが、スッと入って来ます。
フィラデルフィアのサイケ・フォーク・バンド、ESPERSのボーカル、メグ・ベアードの07年ファースト・ソロ・アルバム。ほとんどアコースティックギター1本の弾き語りなのですが、まるでジャッキー・マクシーのような透明感あるボーカルがとにかく絶品で、ファルセットを使った絶妙な揺らぎある声に惹き込まれてしまいます。トラッドのカバーを主とし、T2やT8ではダルシマーなども用いたそのサウンドは、全くもって時代錯誤の高潔なフォーク・ソングであり、ペンタングルの各作やアン・ブリッグスの「TIME HAS CAME」のような、むせかえるような英国フォークの香りを感じさせつつも、乾いたギターの音は遥かな大陸を感じさせるようで、聴くたびに心身が洗い清められるような感覚があります。
70年代に活躍した英女性フォーク・シンガー、71年作より。あまりの美しさに、息がとまりそうです。
ブルックリンで活動するSSW、09年デビュー作。ほぼアコースティックギター弾き語りのフォーキーな楽曲なのですが、キャサリン・ハウの『What A Beautiful Place』のような靄がかかったような幻想的さがありながら、シンプルで素朴な旋律からは、アメリカならではの乾いた風通しのよさを感じさせます。スローテンポで弦を撫でるように弾くギター、シャーリー・コリンズを少し低めにしたような、シャロンの柔らかく厚みのあるボーカルがゆったりと響き、凝り固まった心身を優しく解きほぐしてくれるようです。プロデュースはフィラデルフィアのサイケ・フォーク・バンド、ESPERSのGREG WEEKSが担当しています。
フェアポート・コンヴェンションと並び、英国フォーク・ロックを代表するグループ、ペンタングルの記念すべき1stアルバム。68年発表。バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンという二人の傑出したギタリストによるアコースティック・ギター、ダニー・トンプソンによるダブル・ベース、テリー・コックスのドラムが奏でる緊張感漂うサウンドは1stとは思えない完成度。熟成されたワインのように味わい深く芳醇なサウンドは、既に円熟の域に達しています。紅一点ジャッキー・マクシーの美声も絶品の一言で、ただでさえ隙の無いサウンドを更に豊かに響かせています。名作中の名作。
68年作の2ndアルバム。68年6月29日、ロンドン・ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴ音源とスタジオ録音音源。各プレイヤーの息遣いが聴こえてきそうな研ぎ澄まされた演奏はライヴでも変わることなく、当時の張り詰めた空気が時代を越えてこちらにピシピシ伝わってきます。名作。
紙ジャケット仕様、2枚組、ボーナス・トラック11曲、定価3200+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干圧痕あり、帯に若干折れあり
本作は、69年にUKトランスアトランティックからリリースされたペンタングルのサード・アルバムで、メンバーはファーストから不変のジャッキー・マクシー、バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーン、ダニー・トンプソン、テリー・コックスの5人編成。プロデュースも前作に引き続きシェル・タルミー。全作品中最もジャズ色が強いアルバムといっていいと思うが、その意味では、例えば次作「クルエル・シスター」のようなしっとり系トラッド・サウンドを好むリスナーには人気のないアルバム。しかし、このバンドをトラッドとブルースとジャズの融合を試みる場として捉えるなら、それが最も成功したアルバムと言えるのではないでしょうか。
70年作の4thアルバム。アコーディオンやリコーダーが印象的な楽曲など、前作までの張り詰めた緊張感はなくなり、暖炉のように暖かみのあるサウンドが印象的。英トラッド・フォークの傑作。ジャッキー・マクシーの独唱による「When I Was In My Prime」は、鳥肌ものの美しさです。
ルーツに立ち返った前作の延長線上にありながらも、アメリカン・フォークにも接近をみせた5作目。71年作。メンバー間の確執が噂された時期だが、その舞台裏をかんじさせないくつろいだ穏やかな雰囲気を感じさせる一枚。
72年作のラスト・アルバム。バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンによるギターと、ダニー・トンプソンによるダブル・ベースとで織り成されるクールな演奏を聴くたびに遠い英国の荒涼とした寒空が眼前に浮かび上がります。前作ではアメリカン・フォークを意識したレイドバックしたサウンドを聴かせていましたが、本作で聴けるのは、「BASKET OF LIGHT」「CRUEL SISTER」などの名作にも見劣りしない、緊張感溢れる英国トラッド・フォーク。トラッド回帰により、ジャッキー・マクシーも水を得た魚のように美しい歌声を響かせています。バンドの最後を見事に飾った名作。
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