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「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう@カケハシ」第五回 ギルモアくんとマンザネラちゃん -二つのピンク・フロイド、その後【後篇】ー 文・市川哲史

第五回 ギルモアくんとマンザネラちゃん -二つのピンク・フロイド、その後【後篇】ー 文・市川哲史

70年代が岡山県の片田舎在住の9歳から18歳だった私だから、もう両手に抱えきれないほどの洋楽コンプレックスを抱えていた。ただでさえ外タレの来日公演が少ないのに、誰がわざわざ地方まで来てライヴをやるものか。そもそも初めて<本物の外人>に遭遇したのは大阪万博の会場だこの野郎。文句あるか。

単なる<田舎在住ロック小僧>時代の私は、頑なに信じていた。古今東西、海外ロック・ミュージシャンはすべからく全員、楽器が目茶目茶上手で当たり前だと。パンクだって故意に下手くそを演じてるだけだと確信してたのである。プロフェッショナルたるもの、未熟な技術で対価を求めるはずがないだろ……うぶ過ぎるぞ昔の私。

そんな私の目を醒ましてくれた大恩人が、フィル・マンザネラだった。

1979年4月のロキシー・ミュージック待望の初来日公演を武道館で目撃した私は、“アウト・オブ・ザ・ブルー”の後半部を聴いた瞬間、瞳孔が開いたまんまになった。エディ・ジョブソンが脱けてニューウェイヴ仕様にシフトチェンジしたのは十二分に理解してるが、にしてもあの艶やかでスリリングなエレクトリック・ヴァイオリンのソロ・パートが、ここまで無残で拙くモゲモゲなギター・ソロに劣化していようとは、お釈迦様でも気がつくめえ。

実はこの大脱線転覆事故、薄々予測できてはいた。ロキシーにせよソロにせよ801にせよスタジオ音源はともかく、当時は各種海賊盤でしか入手できなかったライヴ音源を聴く限り、マンザネラのギターは時と場所と場合を選ぶことなく常に下手くそだったのである。まあアンディ・マッケイの呼吸困難サックス&オーボエもポール・トンプソンのどたどたドラムも<素人に毛>レベルだったけれど、マンザネラは群を抜いていた。

しかしこの人ほど、<拙すぎる演奏力>という弱点が最大の武器になった果報者はいないのではないか。

マンザネラはロンドンで英国人の父とコロンビア人の母の間に生まれ、少年時代の大半をキューバにハワイにベネズエラにコロンビアという、非西洋的な<異郷の地>で過ごした。しかもキューバ革命を現地で実体験、その際に聴いた名もない反戦フォークソングに「音楽的にも精神的にも多大な影響を受けた」らしい。で6歳でスパニッシュ・ギター、8歳でエレキ・ギターというなかなか個性的な順番の楽器遍歴も去ることながら、10代で「60年代ロックンロールとラテンアメリカ的リズムの融合」を志してたというし、その一方でジミヘンのエキセントリックなギターに魂を揺さぶられちゃったわけで、要は筋金入りの<基礎がなってない男>ということになる。

しかし自己陶酔のカタルシスとは無縁の演奏力を誇る非テクニカル・ギタリストだからこそ、彼は独自の芸風と世界観を手に入れることができた。あの<無感動なたどたどしさ>はなぜか職人芸の域に達して<新感覚派>英国ロックの象徴視されたし、<体温が上がらない躍動感と情熱性>はラテン・ロックの<新解釈者>として認知されたのである。

なんか身も蓋もない書き方なので、言葉を補正して繰り返す。70年代のマンザネラは、ロックンロールからカンタベリー系プログレ、そしてフュージョンと、あくまでも従来のロック的カタルシスに囚われない覚醒した視点で<英国ロック>を解析再構築することによって、新種の<都市音楽>を形成してきた。ロキシー時代の“アマゾナ”“オーヴァー・ユー”“テイク・ア・チャンス・ウィズ・ミー”にせよ、ソロの“ダイアモンド・ヘッド”“フロンテラ”にせよ、801の“トゥモロー・ネバー・ノウズ”にせよ、どの曲も<とても恰好良いのに変てこ>なのは、彼の面目躍如だと思う。たぶん天然だけど。


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そして80年代以降は、世紀の大失敗に終わった<フェイク・ロキシー・ミュージック(←トランプ流)>ザ・エクスプローラーズなど、自らの音楽性と商業性の接点を模索したのち、90年代末から己れのルーツに最接近し続けた成果として、<忙しなくないモダーン・ラテン・ミュージック>を完成させた観がある。

さすが<偉大なる恋愛スタイル><服を着たラヴソング>――あ、このフレーズはブライアン・フェリーか――さすが<至高のアマチュア・アカデミー>ロキシー・ミュージックの主戦力だけあって、とにかく感性が全ての見事な<元祖ニューウェイヴ>スタイルは無敵だったのだ。そしてつい先日、フィル・マンザネラ66歳のなんとソロ・ライヴ@某ビルボードをモルト嘗めながら観るという嘘のような事態に至り、気づいたことがある。

例えばビル・ブルーフォードの太鼓が超個性的で面白いのは、基本的にはジャズ・ドラマーのはずなのに全然スウィングしてないからだ。同様にマンザネラのギターは、ラテン系なのにちぃーっとも煽情的でも熱情的でもないから、涼しくて心地好いのである。

ソロ最新作『サウンド・オブ・ブルー』からの楽曲に、“夜に抱かれて(ちなみに現・モア・ザン・ディス)”“アウト・オブ・ザ・ブルー”“恋はドラッグ”“イン・エヴリ・ドリームホーム・ア・ハートエイク”に、なぜかフェリーさんソロの“レッツ・スティック・トゥゲザー”に、プレスリーの“好きにならずにいられない”のカヴァーという親切すぎるラインナップが並んだのはいいが、中途半端なアレンジで統一感を持たそうとすれば墜落事故の大惨事はまぬがれない。特にフェリーさん歌唱曲は取扱いを誤ると、他の楽曲群まで台無しにしてしまう。
しかしマンザネラはこの大命題を、意表を突く女性ヴォーカルの起用で見事に解決する。しかも今宵の歌姫ソニヤ・ベルナルド嬢の唄声はR&Bとはまた違う独特の情感を湛えており、いい。そっか彼女はポルトガル系英国人か。この心地好さはファドっぽさだったのか、と大いに納得した次第だ。

そしていつの間にやら自分らしい音楽エンタテインメントをきっちり完成させていたマンザネラの円熟が、古くからのファンである私にはちょっと嬉しかった。

どんだけ上から目線なんだ私は。

だって仕方がないじゃない。ロキシー・ミュージックの貴重音源満載4枚組BOX『THE THRILL OF IT ALL』の選曲原案を練ったのも、フェリーさんのアルバム未収録シングルB面曲を集めて世界初CD化した日本独自コンピ盤『マムーナ・アンド・レア・トラックス』を監修したのも、ロキシー絡みのライナーノーツを山のように書いたのも私だ。実はプログレよりもロキシーの方が好きなのだ。おいおい。大目に見てください。
 

そんなこんなで95年5月、海外では2枚組でリリースされたフィル・マンザネラのベスト盤『ザ・マンザネラ・コレクション』を、日本仕様の1枚物に凝縮する苦渋の選曲作業中の私に本国英国から様々な資料と共に送られてきた、やたら詳細でレアな情報満載のレコーディング・セッション・リストの存在を想い出した。久々に蘇る記憶とともに、1987年の項を見る。

マンザネラ所有のギャラリー・スタジオで、2つのセッションが実現していた。10ccのエリック・スチュワート篇と、デイヴ・ギルモア篇である。ちなみに前者の成果はいまなお未発表だが、マンザネラ&ギルモア・セッションではコラボ4曲がデモ・レコーディングされている。その内正式レコーディングされたのは2曲—-同87年発表のピンク・フロイド再始動アルバム『鬱』収録曲“理性喪失”と、前述した『ザ・マンザネラ・コレクション』海外盤のみに初収録された、ジョン・ウェットン&フィル・マンザネラ『ウェットン・マンザネラ』のアウトテイク曲“トーク・トゥ・ミー”になる。

そう、『鬱』リリース時に気づく人だけ気づいた謎のソング・ライティング・チーム、《ギルモア/マンザネラ》誕生の瞬間なのであった。

そしてかなりの空白期間を経た04年9月24日《ストラトキャスター50周年記念コンサート》@英ウェンブリー・アリーナに、マンザネラはギルモアから呼ばれて『鬱』の“時のない世界”に『対』の“孤立”“転生”計3曲の演奏をサポートする羽目になる。

すると翌々年3月に発表されたギルモア22年ぶりの3rdソロアルバム『オン・アン・アイランド』を、ギルモア本人&クリス・トーマスと共同プロデュースしたばかりか、同時に開幕した大規模な欧州北米ツアーではリック・ライトと共にツアー・バンドの一員にまでなってしまった。ちなみにその律儀な姿は、英ロイヤル・アルバート・ホール公演の映像が07年発表のライヴDVD/BD『覇響』、ポーランド・グダニスク公演における交響楽団との共演は08年リリースのライヴCD『狂気の祭典』で確認できる。
かいがいしいよマンザネラ。

遂には2012年8月には突然ギルモアから、『対』の〈アウトテイクス〉という名の音の断片群20時間以上分を渡されると、「これをなんとかピンク・フロイドのニュー・アルバムにまとめてよ」と有無をも言わさず頼まれちゃったのだ。なんで?

まあマンザネラの献身的な作業は一応功を奏したのか結果的に14年11月、ピンク・フロイドのラスト・アルバムとして『永遠(TOWA)』は陽の目を見た。一応exキリング・ジョークのユース、『対』担当エンジニアだったアンディ・ジャクスン、そしてギルモアと並びプロデューサー・クレジットは拝命されている。

ここまでくると、もはやギルモアの傍らにマンザネラがいない方が不自然だ。15年9月発表の5thソロアルバム『飛翔』のプロデュースもギルモア&マンザネラだし、例によって同時期に2年懸けて廻った欧州→南米→北米→欧州ツアーも、立派なレギュラー2ndギタリストなのであった。このツアーにおける各種歴史的建造物公演の模様をAV収録した『ライヴ・イン・ポンペイ』が今年10月にはリリースされるのだが、マンザネラのたたずまいは容易に想像がついて微笑ましいじゃないか。

それにしてもなぜフィル・マンザネラは、ここまでデヴィッド・ギルモアに一方的に重宝されているのだろう。

年齢差がギルモアの〈+5歳〉だけに、ギルモアとマンザネラの兄が高校時代からの知己だったのは、嘘ではないようだ。しかし実際には、マネージャーが同じ〈ウォーターズの怨敵〉スティーヴ・オルークで、ウォーターズ抜きでフロイドっぽい音楽を作ることに煮詰まりまくりのギルモアを見かねた彼が、とりあえず手近なマンザネラとのセッションを87年早々に組んだというのが、真相だろう。ただ“理性喪失”を何回聴いても、音楽的なマンザネラっぽさが見当たらないのだ。

実はあの『鬱』という〈一応〉フロイド再始動アルバムは、ほぼギルモアのソロ・アルバムだったりする。まず物理的に、ロジャー・ウォーターズがいない。ライトはそのウォーターズに『ファイナル・カット』制作前に解雇されたままの元職扱いで、唯二の正式メンバーであるニック・メイスン共々ほとんど制作に関与していないのだ。平たく言えば、ほとんど弾いても叩いてもいない。だからドラムもベースも鍵盤もほとんどが達者な外部ミュージシャンたちで、しかもギルモア以外のメンバーの名を詞曲クレジットに見つけることはできない。そういう意味では、アルバム・スリーヴで《a requiem for the post war dream by roger waters》などと、ウォーターズに堂々「自分のソロ・アルバムだよん」宣言をされた『ファイナル・カット』と、コンセプトを諦め雰囲気だけを厳選してギルモアが再現した『鬱』は、実は五十歩百歩なのだろう。

そういうわけだから、ギルモアにとって必要な人材とは〈ピンク・フロイドの同僚および元同僚〉なんかではない。あの情緒的で仰々しくて、でも聴く者の心を掴んで離さないシズル感溢れるメロディとサウンドメイクは、「お手のもの」なのだから。
しかしコンセプト・ワークと歌詞に関しては、「お手上げ」ときた。なので〈なんとなく高尚な、フロイドっぽいたたずまい〉を確保するために、『鬱』ではexスラップ・ハッピーのアンソニー・ムーア、『対』ではそのムーアに加え若きSF作家のダグラス・アダムス、ドリーム・アカデミーのニック・レアード=クロウズ、そして(当時はまだ)恋人の三流ジャーナリストのポーリー・サムソンに全11曲中7曲の詞を書いてもらっちゃうほど、そっちは「奥手も奥手、超奥手」のギルモアさんだったのである。だからラストの『永遠』でも『対』からの連続性を意識してなのか、英物理学者スティーヴン・ホーキンス博士のありがたいお言葉を再び意味ありげにフィーチュアするしかないのであった。

別にディスっているわけじゃない。ウォーターズが《ピンク・フロイド=歌詞/アジテーション》を選択したように、ギルモアは《ピング・フロイド=音楽/ムード》を選んだだけの話だ。これがギルモアの矜持なのだ。
となれば、音楽的に自分が全っ然劣ってるとは思えないマンザネラと“理性喪失”を共作した理由は——もしかしてマンザネラは詞を書いただけだったりして。わはは。でもこの冗談が意外に洒落にならない気がするから、怖いのである。

というわけで数々のエビデンスに基づいて、私の仮説を続ける。

95年5月発表のライヴ・アルバム『P・U・L・S・E』を最後にフロイドを永眠させたギルモアが、満を持してソロ再デビューを果たしたのは06年。11年の歳月が世間の<フロイド的なもの〉への飢餓感を充分に膨らませたと判断したのか、ようやく制作する3rdソロ・アルバム『オン・アン・アイランド』の共同プロデューサーに、いきなりマンザネラを指名した感が当時あった。

その経緯は謎なのだけれど、『オン・アン・アイランド』におけるマンザネラのプレイヤーとしての貢献は、そもそもギタリストとしてではなく3曲に鍵盤奏者として参加したことに過ぎなかった。そして、自分が弾き散らかして放置したまんまのスケッチをいちいち聴き込みまくり、「コレとコレとコレを繋げて再構築すれば、ちゃんとしたいい曲になると思うんですけど……」とご丁寧に提案してくるマンザネラの馬鹿正直さに、ギルモアはぴんときたのだろう。極楽とんぼというか、記名性に対する執着はあっても作品自体には実は無頓着でアバウトな自分の性癖を鑑みれば、これほど便利なサポーターはいないではないか。しかも「俺が俺が」的な自己顕示欲とは無縁ときたもんだ。もう天の配剤どころの騒ぎではない。

すると06年以降、マンザネラはメイソンよりもライトよりも、ギルモアにとっては圧倒的に有能な〈助手〉として雇われ続けて現在に至る。どう考えてもギターの技術的には劣っててしかも地味だから、自分より目立つ危険性は皆無だ。安心してツアーの〈副ギタリスト〉を任すことができるし、と同時にアルバムでは共同プロデューサーとして起用しても決してギターは弾かせはしない。うわ。
適材適所で徹底してはいるけれど、つくづく非情な男だねぇ。

そして周知の通り、とうとうピンク・フロイド栄光(失笑)のラスト・アルバムのプロデュースを「させられる」までに至ったわけだが—-。

そもそも『永遠』とは前世紀末に録音した『対』のアウトテイク集である。そして、08年に逝去したリック・ライト追悼という偶然のお題目に恵まれたから誕生した。うーん、こうまとめちゃうとギルモアの天才的なアバウトさが素敵すぎる。これは決して嫌味ではない。ピンク・フロイドの音楽が持つ妙な大衆性は、明らかに彼のこの資質に起因してたのだから。

さて『対』は94年当時は2枚組(もしくは2タイトル同時)でのリリースを目論んでいたため、エンジニアのアンディ・ジャクソンが膨大なセッション音源から『THE BIG SPIRIT』なるサイケ&アンビエント・インスト・アルバムを仮編集したものの、そのまま塩漬けされていた。ところが先の弔事から4年経った12年8月、突然ギルモア所有のスタジオ付き小型船舶に呼び出されたマンザネラは、「使えるものがあるかどうか全部聴いてよ」とセッション音源の総点検をやんわり厳命される。

すると生来の〈几帳面ないいひと〉魂に静かに火が点いたマンザネラは、ジャクソンからの「20年前に僕がまとめた『THE BIG SPIRIT(←「大きなお世話」か?)』をベースにしてもらえれば」的な申し出をあっさり断わり、20時間ものお蔵入り音源をノート片手に聴き込む。そして6ヶ月の献身と引き換えに『大きなお世話』とは全く別物の、〈精一杯の叩き台〉をギルモアに提示する。

サイズ的にはアナログ盤2枚組を、形式的にはクラシックの楽章立てを想定して、各13分程度の四部構成で音源を整理再構成してみせたばかりか、幾つかの画像付きの書き下ろしコンセプト・ストーリーまで添付して提出したのだ。ちゃんとしてるよ。

しかしこの上申書をニック・メイスンは高評価したものの、ギルモアは翌13年いっぱいほったらかしにするのだから鬼である。結局、究極の〈フロイドおた〉ユースの賞賛を得たことで14年1月にようやく、レコーディングに漕ぎつけることができた。

というわけでやっと正式採用されたマンザネラ案だが、実際には文字通りの叩き台としてユースとギルモアのアイディアと差し替えられたり、マンザネラの弾いてたギター・パートは悉く、全て容赦なくギルモアが弾き直している。それでも彼は全然平気だ。
「だってピンク・フロイドのアルバムにしないと駄目なんだから、僕のエゴなんてお呼びじゃないさ(微笑)」

デイヴ・ギルモア、きみは本当にいい道具に恵まれている。

フィル・マンザネラ、たぶんずっといいひとのままで終わるんだろうけれど、一度だけでいいから目を醒ませ。

結局のところギルモアは変な自尊心に囚われず、単純明快な〈ピンク・フロイドっぽさ〉を追求したことで、結果自らの世界観を獲得できちゃった〈幸運な男〉の気がする。

あの独特のサウンドメイクの再現は当然として、知的に見える歌詞、手が込んだ意味ありげなスリーヴ・デザイン、例の巨大円形スクリーンやら自動照明ロボ《フロイドロイド》やらのやたら大規模なステージ・セットなどをぬかりなく全て新装踏襲することで、彼は〈超高級大衆音楽としてのピンク・フロイド〉を見事に再現してみせた。

私も含めたロジャー・ウォーターズ派からは忌み嫌われたものの、これはこれで超ド級のメガ・バンドだったフロイドに他ならない。だからこそ売れたわけだし。ただ誰も予測できなかったのは、その後のギルモア・ソロ・ワークスの商業的大ブレイクではないか。『オン・アン・アイランド』が英1位に米6位というフロイド級のセールスを記録すると、次作『狂気の祭典~ライヴ・イン・グダニスク』はライヴ盤なのに英10位米26位と大健闘、そしてフロイドの『永遠(TOWA)』(英1位・米3位)を挟んでのソロ最新作『飛翔』は、とうとう英米1位まで昇り詰めてしまった。

要するに世間一般のリスナーは、フロイドが不在だから〈次善の一枚〉としてギルモアのアルバムを購入している。つまり、〈デヴィッド・ギルモア〉と書いて〈ピンク・フロイド〉と読むのだ。皮肉なことにウォーターズ信者はウォーターズ信者で、ロジャー・ウォーターズをピンク・フロイドとしか見てないわけで、ギルモアもウォーターズもそして我々リスナーも、所詮〈同じ穴のフロイド〉なのであった。

にしても人間性そのものがアバウトなギルモアだからこそ、「ピンク・フロイドをなぞる」という後ろ向きな方法論を当たり前のように選択できた。ポンペイ遺跡ライヴまで再現できちゃう度胸は、やはりギルモアならではだ。もちろん、そんな大雑把男のために一切の邪念なく尽くすことができるマンザネラあってこそ、なのである。

デイヴ・ギルモアとブライアン・フェリー、フィル・マンザネラにとってはどちらが理想の上司だったのだろうか。







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    前作「狂気」に劣らない内容と人気を誇る75年作

    ブルース・ロックに根ざした音楽性を持ちサイケデリック・ロックからその歩みを始め、全盛期にはRoger Watersの哲学的な歌詞と完璧なまでのコンセプト性で数々の伝説を作り上げた、世界を代表するロックグループの75年9th。前作「狂気」を発表しツアーも成功のうちに終了、休業解散状態であったバンドが再びシーンに返り咲いた作品であり、創設時のメンバーSyd Barrettを想起させるテーマを盛り込んだ、Roger Watersの色濃いコンセプト・アルバムとなっていますが、その内容は「狂気」のクオリティーをそのままに別なベクトルへ向けて発信した傑作です。トータル志向という意味では確かに「狂気」に軍配が上がるも、各楽曲のクオリティーは全く見劣りせず、彼らの代表作の1枚に上がることも多い名盤です。

  • PINK FLOYD / ANIMALS

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    ブルース・ロックに根ざした音楽性を持ちサイケデリック・ロックからその歩みを始め、全盛期にはRoger Watersの哲学的な歌詞と完璧なまでのコンセプト性で数々の伝説を作り上げた、世界を代表するロックグループの77年10th。「狂気」「炎」を作り上げたバンドのネクスト・ステージは、前作までバンドに漂っていた内省的な幻想性を取り払い、非常に現実的なテーマに基づいた強烈な社会風刺の作風となりました。資本家、ビジネスマン、労働者をそれぞれ豚、犬、羊にたとえた今までになくアクの強いコンセプト・アルバムであり、Roger Watersが、コンセプトのみならずバンドのサウンドに関する主導権をも掌握した作品となっています。

  • PINK FLOYD / IS THERE ANYBODY OUT THERE ? THE WALL-LIVE EARLS COURT 1980/1981

    80-81年、代表作「THE WALL」の完全再現ライブを収録

  • PINK FLOYD / FINAL CUT

    ウォーターズ在籍最終作にして最大の問題作と言われる83年作

    ベストセラーとなった前作「ウォール」で描ききれなかったロジャー・ウォーターズの心象風景をとらえた作品。ピンク・フロイド分裂の引き金となった問題作にして、フロイド作品に通底する狂気を集約させた一枚。

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    新生フロイドの第1弾となった87年作

  • PINK FLOYD / TAKE IT BACK

    94年作『Division Bell』からのシングル

  • PINK FLOYD / PULSE: IN CONCERT (CD)

    94年「対(TSUI)」ツアーの音源を収めたライヴ・アルバム

    94年の「対(TSUI)」ツアーの模様を収めたライヴ・アルバム。アメリカ、ヨーロッパを回る77都市、110回の公演で300万人以上を動員したツアーは「史上最大の光と音のスペクタクルショー」として今や伝説として語り継がれるツアーとなった。荘厳なピンクフロイドの音世界とともに、史上最大のステージセット、複雑怪奇な映像を写し出す大円形スクリーン、目が痛くなるほどの光の洪水(ヴァリライトが生き物のように動き回り、レーザー光線が会場中を照らし出す)、牙の生えたブタが宙を舞い、巨大ミラーボールが光を放ち、これでもかと言わんばかりの花火の嵐・・・。まさに「美」としかいいようのない、それまでのコンサートの定義を大きく変えるものであった。今作の目玉はなんといっても「狂気」全曲再演収録。75年の最後の演奏以来19年振りに94年7月のデトロイト公演で復活。ここに収録されているのは、8月ドイツ、9月イタリア、10月ロンドンのライヴより。1-(2)の「天の支配」はUS公演ではオープニング・ナンバーだったのだが、誰もが度肝を抜かれたシド・バレット在籍時の1stアルバムからの曲。

    • SRCS7813/4

      ブックレット仕様、スリップケース付仕様、2枚組、情報記載シール付、定価4100

      盤質:傷あり

      状態:良好

      帯-

      若干経年変化があります、一部に汚れあり、情報記載シールなし

      1290円

      1032円
      (税込1115円)

      278円お得!


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    • SRCS7813/4

      ブックレット仕様、スリップケース付仕様、2枚組、情報記載シール付、定価4100

      盤質:傷あり

      状態:並

      帯-

      全体的にスレあり、解説に汚れあり

      1290円

      1032円
      (税込1115円)

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  • PINK FLOYD / LIVE AT POMPEII

    71年伝説のライヴ

  • PINK FLOYD / LIVE IN MONTREUX 1970

    70年11月21日に行われたモントルー・ジャズ・フェスティバル公演を収録したライヴ音源

    70年11月21日に行われたモントルー・ジャズ・フェスティバル公演を収録したライヴ音源。収録曲は、

    ■ DISC 1
    1. Astronomy Domine
    2. Fat Old Sun
    3. Cymbaline
    4. Atom Heart Mother
    5. The Embryo
    6. Green Is The Colour
    7. Careful With The Axe Eugene

    ■ DISC 2
    1. Set The Controls For The Heart Of The Sun
    2. A Saucerful Of Secrets
    3. Just Another 12 Bar
    4. More Blues

    • TOP15TOP GEAR

      2枚組、オーディエンス録音ながら、サウンドボード音源並にクリアな高音質音源。ボーナス・トラックとして70年11月22日から「星空のドライヴ」「天の支配」の2曲を収録

      レーベル管理上、ケースにスレがあります。ご了承ください。

  • PINK FLOYD / PULSE

    94年のライヴツアー音源を収録

  • PINK FLOYD / RADIO SESSIONS 1969

    デイヴ・ギルモア加入後の4人編成での69年のラジオ放送音源をまとめた編集盤

    シド・バレットが抜け、デイヴ・ギルモアが加入してからの4人編成での69年のラジオ放送音源をまとめた編集盤。69年5月の「TOP GEAR」出演時のBBC音源5曲、69年7月のBBC音源1曲、69年8月のアムステルダムはパラディソでのライヴ4曲を収録。すべてラジオ放送用音源のため音質クリア!

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