2021年6月3日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
FRENCH TVの活動形態は最初にご紹介したとおり。
ここからは、主要な作品をピックアップして音源を交えながらご紹介していきたいと思います!
記念すべきデビュー作。スウェーデンのSAMLA MAMAS MANNAをジャズ・ロックに寄せてややシリアスにしたような、トリッキーな変拍子アンサンブルの中にもコミカルな味が滲み出るようなサウンドが実に独特です。デビュー作にしてここまでのユニークなサウンドを構築するとは、只者ではありません。
87年リリースの2nd。本作では固定メンバーに加え、曲ごとに多数の外部ミュージシャンが参加。サウンドに色彩感がグッと増しています。音数多くテクニカルながらもフュージョン的な滑らかな聴き心地の良さを持つこのサウンド、思い出すのはやはりZAMLA MAMMAZ MANNAの『FAMILJESPRICKOR』あたりでしょうか。
7年のブランクを経てリリースされた3rd。相変わらずのコミカルだけど切れ味鋭い絶妙なバランスを保った演奏が心地よいアヴァン・ジャズ・ロック。シンセ、ピアノ、ヴァイオリン、サックス、ギターらが代わる代わる登場し舞うようにフレーズを奏でる見事なアンサンブルが印象的です。キーボードのプレイにはHAPPY THE MANっぽさも感じます。
6th。ヘヴィになったバンド・サウンドに強化された管楽器が絡む、アヴァンギャルドながらもいぶし銀のカッコよさを持つ個性派ブラス・ジャズ・ロックを聴かせます。重厚なパートはベルギーのX-LEGGED SALLYあたりも彷彿させますが、コミカルな展開を随所に挟み込むセンスはやはりFRENCH TVならでは。コロコロと表情を変える先の読めない展開が魅力です。なお本作ではSAMLA MAMMAS MANNAのカバー(!)も披露しています。
8th。本作はずばりユーロ・ロック・ファン必聴の一枚。何せANGE、PULSAR、SHYLOCK、ATOLL、CARPE DIEM、ETRON FOU LELOUBLANというフレンチ・プログレの名バンドたちの曲をメドレーでやってくれるんです!原曲再現度とオリジナル要素との塩梅も見事だし、これはライヴで聴きたい!
2010年発表の10th。スリリングで緊張感もあるけどノリが良くて最高にカッコいい、というアメリカのバンドらしいサウンドが実に痛快な一枚です。そのあたりがよく現れた12年のライヴの模様をどうぞ!
16年作についてはすでに詳述しましたが、以降もFRENCH TVの勢いはとどまるところを知りません。
こちらはTEEのギタリスト米田克己氏が前作に引き続き参加した17年作12th。
前作同様にザッパ、ブランドX、サムラなどを飲み込んだテクニカルでストレンジで痛快なアヴァン・プログレを聴かせてくれます。
本作より参加する、カンタベリー・タイプの米ジャズ・ロック・バンドVOLAREのキーボーディストPatrick Strawserによる芳醇なプレイも聴きどころ!
13thアルバムは2020年のリリース。
米田克己氏とドラマーMark L. Perry(3曲でプレイ)、前作に参加した米ジャズ・ロック・バンドVOLAREのキーボーディストPatrick Strawser、そして00年代FRENCH TVの3作品でプレイしたJeff Gard、そしてMike Saryというメンツです。
Disc1にはスタジオ録音を、Disc2には2018年にレコーディングされた疑似ライヴを収録。
パワフルに打ち下ろす硬質なドラミングと生き物のようにうねりながら予測不能な変態フレーズを紡ぎ出すベースによる一癖も二癖もあるリズム・セクションは、相変わらずリズムを追っているだけでも楽しくてしょうがない、聴き手の予測を裏切りまくるプレイで翻弄します。
そのリズム隊と渡り合う、フュージョン的な滑らかさの中に少し緊張感を伴ったギター&シンセをメインとするスペーシーで浮遊感に富むキーボードも見事。
RIO系/レコメン系を愛するアヴァン・プログレ・ファンなら本作も必聴モノですよ~!
FRENCH TVの魅力、味わっていただけたでしょうか。やはり彼らのベースにあるのはSAMLAやZAPPAなどのアヴァンギャルド要素を持ったテクニカルなプログレ先人たち。
70~80年代より活動するバンドで、現在ここまで精力的でクリエイティブな活動を続けているのは彼らくらいなはず。これからもその動向に目が離せまんね!
84年の結成以降、バンド創始者であるベーシストのMike Saryを中核に活動する米テクニカル・アヴァン・プログレの名バンドによる2021年作14th。16年作への初参加から4作目となるジャパニーズ・プログレTEEのギタリスト米田克己、17年作より参加する米ジャズ・ロック・バンドVOLAREのキーボーディストPatrick Strawser、00年代の作品でもプレイしたドラマーJeff Gard、そして御大Mike Saryという4人編成を基本に制作。変拍子を自在に交えテンポチェンジを繰り返す複雑なリズムワークを土台に、メロディアスで浮遊感あるフレージングにただならぬ緊張感が潜むギター、つややかなトーンでカンタベリーチックな優雅さをもたらすシンセが躍動する、今作もまったく一筋縄ではいかないアンサンブルが炸裂しています。随所でスリリングに切り込んでくるゲスト奏者のサックス、ヴァイオリンも効果的。とにかく少しも一所に留まっていない目まぐるしく変化していく緻密かつ大胆不敵なサウンドに終始翻弄されます。FRANK ZAPPA、SAMLA MAMMAS MANNA、カンタベリー・ロックなどの影響を取り込みつつ、独自のユーモラスなタッチも添えて痛快なフュージョン/アヴァン・プログレに仕立て上げた一枚です。バンドによる自信作とのコメントも大いに納得の快作!
84年の結成以降、バンド創始者であるベーシストのMike Saryを中核に活動する米テクニカル・アヴァン・プログレの名バンドによる16年発表の11th。本作では、なんと日本のプログレ・バンドTEEのギタリスト米田克己氏とキーボーディスト米倉竜司氏、FLAT122で活動するキーボーディスト川崎タカヲ氏が全面参加、Mike Saryが見出したドラマーMark L. Perryを加えた5人編成でのレコーディングとなっています。
バンドHPでは影響元として、NATIONAL HEALTH、SOFT MACHINE、FRANK ZAPPA、BRUFORD、BRAND X、HAPPY THE MAN、SAMLA MAMMAS MANNAというジャズ・ロック/アヴァン・プログレの錚々たるグループが挙げられていますが、本作で繰り広げられるサウンドを聴けば「なるほどっ!」と膝を打つことでしょう。
ジャズ色濃厚な緻密かつ硬質なドラミングに絡む地を這うように妖しくうごめくベース、クリーントーン主体で浮遊感あるフレージングを紡ぐギター、多彩にトーンを変化させ七色の輝きを放つシンセサイザー、前衛的なプレイで応じるピアノらによる、少しも先の読めないスリリングなアンサンブルがとにかく圧巻。フュージョン・タッチの流麗な演奏を聴かせていたかと思うと、ギターが突如ヘヴィな尖ったプレイで畳み掛けシンセと火花を散らすテクニカル・アンサンブルへ突入、ピアノがミステリアスに響くアヴァンギャルドなパートに、ちょっぴりトロピカルなシンセのユニークな音色が楽しいコミカルタッチまでも織り込んだ、一曲の中でも次々と目まぐるしく表情を変えていく演奏は、これぞプログレッシヴ・ロック!と言い切ってしまいたいほどの素晴らしいパフォーマンスです。パーカッションを強調した無国籍風のパートでは、PIERRE MOERLEN’S GONGなどに通じるセンスも見え隠れします。
Mike Saryの頭の中にある、奇想天外ながらも緻密に構成されたサウンドを、寸分も狂いのないアンサンブルで形にしていく各メンバーの技巧とセンスの確かさには脱帽。上記のバンド、特にFRANK ZAPPA、SAMLA MAMMAS MANNAあたりのファンには直撃するであろうアヴァンギャルド・プログレの傑作盤です!
日本語版HP(試聴あり)
https://frenchtvjapan.jimdo.com/
Bandcamp(試聴あり)
https://frenchtv.bandcamp.com/
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