2021年6月3日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
2016年、11枚目のアルバムとなる『AMBASSADORS OF GOOD HEALTH AND CLEAN LIVING』をリリースした、アメリカを代表するアヴァンギャルド・プログレ/ジャズ・ロック・グループFRENCH TV。30年を超える歴史を誇る老舗バンドが6年ぶりに発表したこの作品には、何と日本のプログレ・シーンで活躍する3人のミュージシャンが全面的に参加しているのです!本特集では、ギターで参加した米田克己氏ご本人からのコメントを交え、本作の魅力に迫ってまいりたいと思います。さらにFRENCH TVのディスコグラフィーを試聴音源とともにご紹介しておりますので、あわせてご覧いただければ幸いです。
それではどうぞお楽しみください☆
現在は、ベーシストMike Saryによるプロジェクト・バンドとして活動するFRENCH TV。
グループ発足から33年目に発表されたこの16年作の注目ポイントは、何と言っても日本のプログレ・シーンで活躍する3人の凄腕ミュージシャンが参加している点。TEEのギタリスト米田克己氏とキーボーディスト米倉竜司氏、そしてFLAT122のキーボーディスト川崎タカヲ氏です。
参加ミュージシャンは5人。ベースのMike Saryと彼が見出したドラマーMark L. Perryによるリズム隊、そして日本からの3人がギターとキーボードを演奏しています。アメリカ最高峰のアヴァン・プログレ・バンドと東京プログレ・シーンを代表する3人のミュージシャンが圧巻のプレイを繰り広げる、日米プログレのコラボレーション作品となりました。
まずは音源を聴いてみていただきたいと思います。
日本語版HP(3曲目までの試聴が可能です)
https://frenchtvjapan.jimdo.com/
Bandcamp(1回ずつ全曲の再生が可能です)
https://frenchtv.bandcamp.com/
いかがですか?
ジャズ色濃厚な緻密かつ硬質なドラミングに絡む地を這うように妖しくうごめくベース、クリーントーン主体で浮遊感あるフレージングを紡ぐギター、多彩にトーンを変化させ七色の輝きを放つシンセサイザー、前衛的なプレイで応じるピアノらによる、少しも先の読めないスリリングなアンサンブルがとにかく圧巻ですよね。
フュージョン・タッチの流麗な演奏を聴かせていたかと思うと、ギターが突如ヘヴィな尖ったプレイで畳み掛けシンセと火花を散らすテクニカル・アンサンブルへ突入、ピアノがミステリアスに響くアヴァンギャルドなパートに、ちょっぴりトロピカルなシンセのユニークな音色が楽しいコミカルタッチまでも織り込んだ、一曲の中でも次々と目まぐるしく表情を変えていく演奏は、これぞプログレッシヴ・ロック!と言い切ってしまいたい素晴らしいパフォーマンス。
パーカッションを強調した無国籍風のパートは、少しPIERRE MOERLEN’S GONGなどに通じるセンスも感じられます。
バンドHPでは影響元として、NATIONAL HEALTH、SOFT MACHINE、FRANK ZAPPA、BRUFORD、BRAND X、HAPPY THE MAN、SAMLA MAMMAS MANNAなど錚々たるバンドが挙げられていますが、本作は特にFRANK ZAPPA、SAMLA MAMMAS MANNAあたりのファンであれば「これはっ!」と息を呑むサウンドに仕上がっているのではないでしょうか。
アヴァン・プログレ&ジャズ・ロックのファンであれば、絶対お楽しみいただけるであろう文句なしの傑作盤。オススメです!
ただ、本作のサウンドにはある驚くべき秘密があったんですよね…。
というわけで今回、ギターの米田克己氏に、作品参加の経緯と特異なレコーディング手法についてお聞きすることができましたので、ご紹介したいと思います。
Mike Saryとは6~7年前にFacebook上で知り合い、TEEとFRENCH TVのCDを交換したり、Mikeからの依頼で彼がファンだと言うFLAT122の川崎タカヲ氏を紹介、彼らもCDを交換しました。
その後私が参加したあるプロジェクト(現状お蔵入り)で1曲Mikeにベースを依頼したり、時折FB上で連絡しあう関係になりました。
2年ほど前にMikeから製作中の新譜で1曲ギターを弾いてみないかと連絡が来て、二つ返事で承諾。そのトラックをMikeがいたく気に入り、最終的に正式メンバーとして加入しアルバム全曲でギターを弾くことになりました。聞くと当てにしていたギタリストが全く仕事をせず困っていたとのこと。
さらにキーボード誰かいないかと聞かれ、まずはTEEのバンドメイトの米倉氏に打診、そしてMikeがFLAT122のファンだったことを思い出し川崎タカヲ氏に参加を打診しました。Mikeは彼らのトラックをとても気に入りゲスト参加が決まりました。
以上が本作に参加することになった経緯です。
-レコーディング方法について
Mike Sary(FRENCH TV)のレコーディング手法は特異で、驚くべきものでした。Mikeから送られてくるのはベースとドラムだけのベーシックトラック(クリック無)のみ、メロディ、コード進行、等々説明、指示は一切ありません。要するにベーシックトラックを聴いて感性で思うがままに音を入れろと言うことでした。例えて言うと、背景だけが描かれた絵本を渡され好きなように完成させろといった感じです。これにはキーボードの二人も最初はかなり戸惑いました。
聞くとこの手法でずっとアルバムを作ってきたとのこと。曲の完成形は依頼したミュージシャンの感性、センス、裁量にゆだねられるわけで、その過程で偶発的に生み出される、予定調和では決して得られない結果を作品に昇華させるわけです。言い方を変えるとこの手法について来れない、Mikeがその結果を認めないミュージシャンは参加できないわけで、そういう意味で選ばれたことは光栄に思っています。
私、そしてキーボーディストの二人もとても貴重な経験をさせてもらったことに感謝しています。またアルバムの出来に大変満足しており、一人でも多くの方に聴いてほしいと思っています。
なお私は正式メンバーとして現在12thアルバムのレコーディングを行っています。
試聴された方には同意いただけると思いますが、あのサウンドがまさかセッション・レコーディングではなく楽器ごとのオーバーダビングによって制作されたとは、にわかには信じられないですよね!しかし、そういう手法を取ったことで結果として各ミュージシャンのポテンシャルが最大まで引き出されたプレイが展開されていることは、米田氏のコメントからも間違いないでしょう。
リズム隊の動きに対して各楽器がどう反応しているのかにも注目して聴いてみると、さらに本作の面白さが実感できるものと思います。
米田氏がメンバーとして引き続き参加する12thアルバムもレコーディングが進んでいるということで、次はどんな予想を裏切るサウンドが飛び出してくるのか、今から楽しみですね!
【次のページ】FRENCH TVの足跡を音源とともにご紹介!
84年の結成以降、バンド創始者であるベーシストのMike Saryを中核に活動する米テクニカル・アヴァン・プログレの名バンドによる16年発表の11th。本作では、なんと日本のプログレ・バンドTEEのギタリスト米田克己氏とキーボーディスト米倉竜司氏、FLAT122で活動するキーボーディスト川崎タカヲ氏が全面参加、Mike Saryが見出したドラマーMark L. Perryを加えた5人編成でのレコーディングとなっています。
バンドHPでは影響元として、NATIONAL HEALTH、SOFT MACHINE、FRANK ZAPPA、BRUFORD、BRAND X、HAPPY THE MAN、SAMLA MAMMAS MANNAというジャズ・ロック/アヴァン・プログレの錚々たるグループが挙げられていますが、本作で繰り広げられるサウンドを聴けば「なるほどっ!」と膝を打つことでしょう。
ジャズ色濃厚な緻密かつ硬質なドラミングに絡む地を這うように妖しくうごめくベース、クリーントーン主体で浮遊感あるフレージングを紡ぐギター、多彩にトーンを変化させ七色の輝きを放つシンセサイザー、前衛的なプレイで応じるピアノらによる、少しも先の読めないスリリングなアンサンブルがとにかく圧巻。フュージョン・タッチの流麗な演奏を聴かせていたかと思うと、ギターが突如ヘヴィな尖ったプレイで畳み掛けシンセと火花を散らすテクニカル・アンサンブルへ突入、ピアノがミステリアスに響くアヴァンギャルドなパートに、ちょっぴりトロピカルなシンセのユニークな音色が楽しいコミカルタッチまでも織り込んだ、一曲の中でも次々と目まぐるしく表情を変えていく演奏は、これぞプログレッシヴ・ロック!と言い切ってしまいたいほどの素晴らしいパフォーマンスです。パーカッションを強調した無国籍風のパートでは、PIERRE MOERLEN’S GONGなどに通じるセンスも見え隠れします。
Mike Saryの頭の中にある、奇想天外ながらも緻密に構成されたサウンドを、寸分も狂いのないアンサンブルで形にしていく各メンバーの技巧とセンスの確かさには脱帽。上記のバンド、特にFRANK ZAPPA、SAMLA MAMMAS MANNAあたりのファンには直撃するであろうアヴァンギャルド・プログレの傑作盤です!
日本語版HP(試聴あり)
https://frenchtvjapan.jimdo.com/
Bandcamp(試聴あり)
https://frenchtv.bandcamp.com/
日本の新鋭シンフォ・グループによる08年リリース1stアルバム。フルートを全編にフィーチャーし、CAMEL的であると共にユーロ・ロック的とも言えるロマンとエレガンスを湛えたシンフォニック・ロックを展開。どっしりと安定感あるプレイで演奏を支えるリズム・セクション、クラシカルで流麗な音運びが魅力のピアノ、ロマンティックな美旋律をとめどなく紡ぎ出すフルート、そのフルートに寄り添いながらも時には雄弁にリードを取るギター。全編インストながら、歌心を感じさせるアンサンブルに胸打たれます。特にフルートは、数あるフルートをフィーチャーしたプログレの中でも際立つほどに音色が美しく思わず聴き惚れてしまいます。演奏技術の高さ・楽曲の良さ・メロディの美しさ、どれをとっても現ジャパニーズ・プログレ最高峰に位置付けられる素晴らしいバンド!
日本の新鋭シンフォ・グループによる11年作2nd。ヨーロッパの情景を描いたコンセプト・アルバム。変拍子満載のテクニカルなアンサンブルに華麗なフルートが舞う、70年代ユーロ・ロックを彷彿させるサウンドが素晴らしい!前作よりもやや緊張感が強まったようにも感じられ、ダイナミックに迫るリズム隊やキレのあるソリッドなギターのプレイと、フルートやピアノの流麗でファンタジックなプレイが鮮烈に対比される展開が聴き所です。その中でも、アグレッシヴに吹きまくるパートでも一貫してエレガントな佇まいを崩さないフルートの驚異的なパフォーマンスは出色。前作が気に入ったならまず間違いないジャパニーズ・プログレの傑作!
05年の結成以来、関東を中心に活動を続けている日本のプログレ・バンド。2016年作の3rdで、仏MUSEAからの世界リリース盤。聴いていて頭に浮かんだキーワードが「日本のソラリス」。全編で瑞々しく躍動するフルート、ハケットやラティマーなどへの敬意とともにフュージョン・タッチの洗練も感じさせるエレキ・ギター、そして、透明度の高いシャープな音空間を演出するピアノやキーボード。しっかりしたテーマのパートを軸にしつつ、拍子の異なる「静」と「動」の多彩なパートをめくるめく繰り出していくダイナミックな展開もまた聴きどころです。オール・インストのため、何も情報なく聴けば、日本のバンドとは思わず、ヨーロッパのバンドと思うでしょう。「鮮烈」でありながら「静謐」。これは70年代のユーロ・ロックのファンは必聴といえる名作です。
05年の結成以来、関東を中心に活動する日本の5人組プログレ・バンド、22年4thアルバム。ドラムス/パーカッション、ベース/フレットレス・ベース、ギター、ピアノ/シンセ、フルート/ピッコロという編成で、ギタリスト米田克己は米老舗アヴァン・プログレ・バンドFRENCH TVのメンバーとしても活躍中。CAMELや、それを受け継ぐスペインのGOTIC、オーストラリアのSEBASTIAN HARDIEらが持つ、リリカルな軽やかさと溢れんばかりの叙情美を受け継いだ絶品インスト・プログレを楽しませてくれます。ズシっと重めに刻むタイトなリズム・セクションが持つ緊張感と、ひたすら美麗な旋律を紡ぐフルート、フルートに気品高い佇まいで寄り添うピアノ、A.Latimer+S.Hackettと言える優美さの中にエキセントリックなセンスを隠し持ったギターらのファンタジック&エレガントなプレイが一体となり、どこまでも流麗でありながら同時にアグレッシヴな強度の高さも感じさせる演奏がただただ素晴らしいです。上記したグループのファンのみならず、すべての美旋律プログレ・ファンに聴いて欲しいジャパニーズ・プログレの新たな傑作!
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