2019年8月10日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
タグ: ロック&ポップス
もう間もなく、ニック・ロウが来日しますね!
今回は、ニック・ロウが率いたバンド、ブリンズリー・シュウォーツをピックアップいたします。
1969~1975年に活動し、英国のザ・バンドとも評された愛すべきバンド、ブリンズリー・シュウォーツ。
彼らが、代表作と評される3rdアルバム『シルヴァー・ピストル』をものにし、パブ・ロックの代表格となるまでのストーリーをご紹介いたしましょう。
バンド・ストーリーは、英国東部サフォークの学校に通っていたニック・ロウ(ベース、ギター)とブリンズリー・シュウォーツ(ギター、ピアノ、サックス)が64年に出会ったところからはじまります。ニックとブリンズリーの2人は、他の学友とともに「SOUNDS 4 PLUS 1」というバンドを結成。ニック・ロウが学校を離れたためにバンドは自然消滅しますが、ブリンズリーは新たに「KIPPINGTON LODGE」を結成し、バンド活動を継続します。見事EMIと契約を果たし、67年に「Shy Boy」でデビュー。ニック・ロウが再び合流し、ボブ・アンドリューズ(Key)も加わり、計5枚のシングルをリリースするなど精力的に活動しますがヒットに恵まれず、EMIとの契約を失ってしまいました。
ニック、ブリンズリー、ボブ以外のメンバーを入れ替え、69年に心機一転「ブリンズリー・シュウォーツ」と改名し、バンド活動を継続。サウンドは、ブリンズリーとボブが注目していたアメリカのザ・バンドを意識したアーシーなフォーク・ロックへと変化します。そして、見事ユナイテッド・アーティスツと契約。デビュー作『BRINSLEY SCHWARZ』も完成して、さぁ、いよいよこれから!という時、あの悪名高き「フィルモア・ハイプ」にみまわれてしまいます。
バンドのマネージャーで、後にスティッフ・レコードを共同で創立するデイヴ・ロビンソンが大々的なプロモーションを仕掛けたのですが、これが見事に大ゴケしてしまったのです。遠くニューヨークのフィルモア・イーストで派手にお披露目ライヴをやって、一気に名を知らしめよう、という画策で、英国の音楽メディア達をなんと無料招待し、貸し切りの飛行機でいざフィルモアへと出発したわけですが、飛行機トラブルにより到着が遅れ、機内のバーで飲み過ぎたメディア達は、ライヴ・レビューどころではない始末。一方、先に別の便でニューヨークへと向かったバンド・メンバーはVISAのトラブルで入国できず、カナダ経由で現地入り。ギリギリの到着でろくにリハーサルもできず、その場にあった機材で決行したライヴはボロボロ。散々のお披露目ライヴとなってしまったわけです。デビュー作の売上もまた散々。すっかり音楽ビジネスに嫌気をさしたメンバーは、その後パブを中心にドサ回りをすることになり、結果として、「パブ・ロック」というジャンルのパイオニアとなったのは皮肉なものです。
70年には、より土臭さを増した2nd『DESPITE IT ALL』をリリースしますが、その頃にバンドが影響を受けていたのがアメリカのカントリー・ロック・バンドのEGGS OVER EASY。アルバム録音のためにロンドンを訪れていた彼らは、マネージャーのトラブル(マネージャーが音楽ビジネス担当として関わっていたキャノン・フィルムとのいざこざ)のせいで英国での生活の延長を余儀なくされ、ロンドンのパブで活動を続けていたのです。両バンドともに、音楽ビジネスが巨大化する中でマネージャーが一発当てようとして起こしたトラブルのとばっちりでパブが活動の拠点になったところがおもしろいですね。
ジャケの人気度では3rd『SILVER PISTOL』よりも2nd『DESPITE IT ALL』に軍配を上げる方も多いでしょう。いや、サウンド面でも2ndを愛するファンも多いはず。その人気の所以がオープニングを飾る名曲「Country Girl」。軽やかに青空へと駆け上るようなフィドル、柔らかに広がるハモンド・オルガン、温かな歪みが心地よいエレキのリズム、そして、ニック・ロウによるメロディアスなベース・ライン。ハーモニーもグッとくるなぁ。しかも、全体的にどこか物悲しい感じもあって、英国臭ぷんぷんで、ブリティッシュ・フォーク・ロックの魅力がギュギュッとつまっています。
続く2曲目の「Slow One」もまた泣ける名曲。しっとりと奏でられるサックス、陰りに満ちたハモンド・オルガン、リリカルなピアノ、そして、流麗なメロディとニック・ロウのエモーショナルなヴォーカル。抑制されたトーンのギターも実にメロディアスで深い味わい。ニック・ロウの曲は派手さはありませんが、聴けば聴くほどにウマ味が増す、まさにスルメと言える魅力に満ちています。そんなスルメ度の高さで屈指と言える名曲です。
アメリカのルーツ・ミュージックに根ざしたコクのあるアンサンブルと、リクエストを次々とこなしていくスキルを持つEGGS OVER EASYのスタイルに魅了されたブリンズリー・シュウォーツのメンバーは、彼らのような愛すべきドサ回りバンドを志向していくことになります。2ndリリース後に、アメリカン・ロック的なセンスを持ったイアン・ゴム(ギター)がオーディションにより加入し、ニック・ロウとイアン・ゴムという2人のソングライター体制が確立。こうして72年にリリースされたのが3rd『SILVER PISTOL』です。
ノースウッドの借家で共同生活する中で、リラックスしたムードで録音されたようで、穏やかな陽の光と干し草の香り感じられて、う~ん、実に良い感じ。イアン・ゴムの加入もかなりプラスな印象で、彼の持ち味であるR&Bフィーリーング豊かなグルーヴィーなフォーキー・ロックと、ニック・ロウによる英国的で陰影のある楽曲とが見事に対比され、アルバム全体にドラマが生まれています。
オープニングを飾る「Dry Land」は早速イアン・ゴムの楽曲で、これぞパブ・ロックと言えるご機嫌なナンバーで、ビールがいくらでも飲めちゃう感じ。ふくよかでルーズなドラム、軽やかに奏でられる陽気でいて哀愁もただようピアノ、抜群のコンビネーションを聴かせる左右2本のギターのタメの効いたルーズ&リリカルなバッキング。イアンがもたらした「陽」のセンス、元からある「哀愁」と絶妙にあわさって、見事な「パブ・ロック」が完成しています。
2曲目「Merry Go Round」はニック・ロウによる曲で1st~2ndの延長線上にある憂いたっぷりのナンバー。メロウでいてちょっぴりシニカルな渋さもあるニック・ロウのヴォーカルが良い感じです。イアン・ゴムによるソウルフルなコーラスもいい塩梅。優しく紡がれるギター・ソロもグッときます。
そして、3曲目「One More Day」は再びイアン・ゴム作曲。彼らしいスピード感あるナンバーで、グラム・パーソンズ時代のバーズとザ・バンドとをブレンドし、イギリスの牧歌性で包み込んだような感じ。イアンとニックのハーモニーも絶品で、本当に良いコンビネーションです。
優美なメロディとそこに寄り添うアコーディオンが心に沁みるニック・ロウによるメロディアスな小曲「Nightingale」、続いてもニック・ロウ作曲で、人間味に溢れたエモーショナルな歌唱が光る黄昏色のフォーク・ロック「Silver Pistol」とA面中盤も佳曲が続きます。そして、A面ラストを飾るのが、イアン・ゴムのナンバーと思いきや、あれ、ニック・ロウもこんな軽やかなナンバーを書けるのね、って感じのビートの効いた「The Last Time I Was Fooled」。でも、ビートこそ軽快ですが、メロディもハモンドの音色も陰影があって、ニック・ロウならではの哀愁がたっぷり。エモーショナルなCメロのメロディ・ライン、そこでちょっぴり力んで音をはずしちゃうヴォーカルが胸に響きます。リズム・チェンジも良いし、シンプルなリード・ギターも何だか素朴な男気に溢れていて、演奏も絶品。アーニー・グレアムやフランキー・ミラーをはじめ、名ヴォーカリストのバックに起用されるのも納得の円熟味。ザ・バーズやザ・バンドにも負けない、英国が誇る「いぶし銀」ミュージシャン集団の誕生!と興奮してしまいます。
B面のオープニングを飾るのがニック・ロウ屈指の名曲と言える「Unknown Number」。ニックもまたビートルズから続く英国ポップの伝統を確かに受け継いでいるのを感じます。しょっぱなからピアノとギ
ターのハモリが実にハートフルで何と素晴らしいイントロ!ニック・ロウとイアン・ゴムのダブル・ヴォーカルも最高だなぁ。ずばり「And Your Bird Can Sing」でのジョンとポールのコンビにも負けないんではないでしょうか!
Cメロからのエモーショナルなシャウトなど、アレンジも実に素晴らしい。ラストのビートリッシュな「ふ~」も最高です!
イアン・ゴムらしい「heyマスター、もういっぱい!」って感じのノリノリの「Range War」、対照的にウイスキーとともに物思いに耽りながら聴きたい、「味わい深い」っていう形容がぴったりのニック・ロウによる「Egypt」と続きます。
そして、米ルーツ系SSWのジム・フォードのカヴァーが2曲。彼のロンドンでのレコーディングのバックにブリンズリー・シュウォーツが起用されたようで、結局、ジム・フォードとしての正式な録音はされなかったものの、起用してくれたお礼とばかりに2曲も彼の楽曲を取り上げる誠実さが良いですね。演奏もルーズなグルーヴを難なく奏でていて、バンドの底力を感じます。カッコ良し。
そして、アルバムのラストを飾るのがイアン・ゴムによるインスト・ナンバー「Rockin’ Chair」。美しくからみあう左右の2本のギター、そして流麗に奏でられるピアノ。まさにロッキングチェアのように、いつまでも彼らのグルーヴに揺られていたい感じ。聴き終わってしまう名残惜しさを演出してくれる、そんな「粋」なラスト・ナンバーです。
ニック・ロウの持つ哀愁と表裏一体のシニカルさ、そして、ザ・バンドへのストレートな憧憬の中ににじむイアン・ゴムの素朴さ。2人の個性が交差して陰影となり、サウンドに英国ならではの奥行きを生んでいます。「英パブ・ロックの代表格による代表作!」なんていうと随分たいそうな感じですが、彼らはきっとリスナーと「場」を共有し、勝手気ままに演奏を楽しんでいただけなはず。どこまでも等身大の音がつまった、飾らぬハートフルな逸品です。
ニック・ロウ在籍のグループ。70年作の1stと2ndをカップリングした2in1CD。パブ・ロックの名グループとして有名ですが、1stはCSN&Yからの影響が感じられるフォーク・ロックで、2ndはThe Bandを想わせる陰影に富んだルーラル・ロック。ほとんどがニック・ロウ作曲で、いかにもイギリス的な哀愁溢れるメロディと美しいハーモニーが印象的です。アコギを中心に、ひなびたオルガンが絡むルーラルで心温まるアンサンブルも素晴らしい。特に2ndは、名曲「Country Girl」など、佳曲揃いの名作。
ニック・ロウ在籍のグループ。71年作3rd。本作よりイアン・ゴム(G/Vo)が加入。ニック・ロウに勝とも劣らない名ソングライターで、バンドとしてかなりパワーアップしました。Beatles、The Band、The Kinksのファンはずばりマストです。哀愁溢れるメロディ&ハーモニー、陽気で悲哀で心に染みるアンサンブル。もう素晴らしすぎます。パブ・ロックの傑作というだけでなく、ブリティッシュ・ポップ史上に残る名作と言えるでしょう。
我らが愛すべき英パブ・ロック・グループ!71年〜75年のBBC音源集。英国叙情性に富んだNick Loweと土臭い哀愁を漂わせるIan Gommとによる鉄壁なソングライター・チーム。いなたいオルガン、もったりとタイトなグッとくるリズム隊。胸が熱くなるハーモニー。英パブ・ロック/フォーク・ロックの名グループによる、聴けば聴くほどに「英国味」が溢れ出す名ライヴ!「愛すべき」という形容がこれほどぴったりくるバンドはありません!
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