2014年2月7日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
タグ: ロック&ポップス
今日の「MEET THE SONGS」は、愛すべき大英帝国ポップ・バンド、キンクスが71年にリリースした9thアルバムで、RCA移籍第一弾となった『マスウェル・ヒルビリーズ』をピックアップいたしましょう。
アルバム名は、デイヴィス兄弟が生まれ育ったロンドン北部のマスウェル・ヒルから取られています。
現代社会で生きるストレスとフラストレーションを労働者の眼差しで演劇的につづるスタイルはレイ・デイヴィスの真骨頂。
67年の『ヴィレッジ・グリーン』と並び、市井の英国詩人レイ・デイヴィスの魅力がつまった代表作です。
レイのメッセージとともに、収録曲を聴いてまいりましょう。
「俺は20世紀の男だが、こんな世界には居たくない。ただ平穏が欲しいだけなんだ。」
ぶっといトーンでかき鳴らされるアコギがカッコ良い!
オールドファッションな音を目指して、60年代初期のマイクをあえて使って録音したようですが、ギュッとつまった塊のようなサウンドはキンクスの持ち味のドライヴ感を増幅していますね!
「生存競争も努力もやめること。人生を厄介にするだけだから。」
「厄介な人生を捨てること。人生なんて大したもんじゃない。簡素な生き方に変えること。」
メッセージは現代社会への不満ですが、説教くささや小難しさは一切なく、ぬるめのビール片手に陽気に笑い飛ばしちゃうような感じがなんとも愛嬌いっぱいで、キンクス最高だなぁ。
「ラリラリラ~」から溢れ出る悲哀。人生の旨味がつまっている気がします。
レイのメッセージは、リリースから40年以上を経った今でも、痛烈に響いてきます。むしろ、レイが当時嘆いた現代社会は、その闇の勢いをさらに増して、僕らひとりひとりの顔を覆い隠しているような気がしますし、今こそあらためて心に留めるべきメッセージかもしれません。
そんな「フラストレーション」の中で、ボードヴィル調のピアノに乗って描かれる、ささやかな日常の愛すべき一コマもまたレイならではの優しい眼差しに溢れていて絶品。
「朝も夕も夜もお茶がいい。雨の日も、雪の日もお茶がいい。もちろん晴れた日も。」
「どんな時でも、人種信条を問わず、お茶は万人の健康薬。宗教も問わなきゃ、政治信条も問いません。」
レイと言えば、代表曲の「ウォータールー・サンセット」など英国的な哀愁が溢れんばかりのセンチメンタルな楽曲も魅力ですが、本作にもそんな泣かずには居られない名曲、しっかり入っています。
「僕らは一生働き続けるが、仕事は退屈なもの。生きるための人生なら、生きる目的は何?」
「そして彼女は夢の中で、遙かオクラホマを夢見ている。」
そして、タイト&ルーズなキンクス流フォーク/スワンプ・ロックの名曲でフィナーレ!
「奴らは僕らを小さな箱に閉じ込めようとする。個性のない画一化。
奴らはコンピューター社会を築こうとしてるけど、僕をゾンビにすることはできないさ。」
レイ・デイヴィスのソングライティング、そしてバンドの演奏ともに「円熟」という言葉がぴったりの旨味が凝縮された佳曲・名曲ぞろい。
灰色の日々に疲れた時には、『マスウェル・ヒルビリーズ』を聴きながらビールを一杯、愉快に笑い飛ばしていきましょう!
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71年リリースのRCA移籍第一弾。THE BANDあたりのアメリカン・ロックのテイストを盛り込んだ骨太で哀愁に満ちたアンサンブル、Ray Daviesが描く人生の悲哀に満ちた歌詞。英フォーク・ロック/パブ・ロックの最良の形がここにあります。ルーズな酔いどれ曲から美しいバラード「Oklahoma U.S.A.」、そしてドライヴ感いっぱいのフォーク・ロック「Muswell Hillbilly」まで、味わい深い楽曲が次から次へと続きます。キンクスを代表する傑作です。
2枚組、定価3670
盤質:傷あり
状態:並
帯有
ビニールソフトケースの圧痕あり、解説にウォーターダメージあり、カビあり、帯両面テープ貼付
激レア盤がごろごろしている英国フォークにあって、特に名盤としてオススメできるニッチな一枚。瑞々しい女性ヴォーカルを擁した、初期フェアポートを素朴にしたようなほのぼのとしたサウンドがたまりませんねぇ。
BIGPINK121(BIG PINK)
2190円 (税込2409円)
在庫あり
キャロル・キングの影響を感じさせる低音寄りの歌声に、情緒溢れるピアノ、メロディアスなギターが味わい深く絶品。米憧憬の英国SSWものとして間違いなく最高峰の一枚!
LESLEY DUNCAN/EVERYTHING CHANGES
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1790円 (税込1969円)
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BIGPINK225(BIG PINK)
2190円 (税込2409円)
在庫あり
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PL599(PROGRESSIVE LINE)
1690円 (税込1859円)
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