【ユーロロック周遊日記】 ZAOのデビュー作『Z=7L』

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本日の「ユーロロック周遊日記」は、マグマと並びフレンチ・ロックを代表するグループZAOの1st『Z=7L』をご紹介いたしましょう。

ZAOは、マグマの2ndに参加したサックス奏者ヨシコ・セファーと1st～2ndに参加したKey奏者フランソワ・カーンを中心に、ヴァイオリン奏者を含む編成で71年に結成されたグループ。

日本の蔵王から命名されたようですが、その由来は調べたけど分かりませんでした（涙）。

ヨシコ・セファーはハンガリー出身で、ハンガリーの民族音楽を収集した作曲家バルトークやコダーイを研究するなど近現代クラシックに通じる一方で、マグマのクリスチャン・ヴァンデと同じくジョン・コルトレーンの精神性に心酔するなど、フランス/東欧ならではの音楽を鳴らそうとしていたミュージシャン。

そんなヨシコ・セファーの精神性や実験性と、英米のジャズ/フュージョン・ロックに影響を受けたフランソワ・カーンのテクニック指向との拮抗とせめぎ合いが生み出す、「ジャズ・ロック」に収まらない奔放かつ強靱なサウンドがZAOの持ち味と言えます。

後の作品では、弦楽四重奏団が加わり近現代クラシック色が増したり（ヨシコ寄り）、元マグマのヴァイオリン奏者ディディエ・ロックウッドが加入してテクニカルなアンサンブルを極めたり（フランソワ寄り）、オリジナルなサウンドを確立していきますが、デビュー作では初期マグマの影響色濃いサウンドが特徴です

それでは、早速オープニング・ナンバーから聴いてまいりましょう。

T1: Marochsek

静謐さの中に緊張感をはらんだミニマルなピアノとうねるベースによるマグマにも負けない強迫的なアンサンブルを軸に、ソプラノ・サックスとヴァイオリンが非西洋的な調性でバーバリックに牙をむくインタープレイをはさみながら、聴き手を静かに飲み込んでいくアンサンブルは圧倒的なスケール。

「ザオ！」という狂おしい雄叫びからはじまり、奔放なスキャットでアンサンブルを呪術的/肉感的にあおる黒人女性ヴォーカルも強烈です。

オープニング・ナンバーに続くのは、変拍子の強靱なリズム隊をバックに、ヴァイオリン、サックス、エレピ、スキャットが硬質なインタープレイを繰り広げる超絶ジャズ・ロック・ナンバー！

マグマ・ファミリー（ZEHUL系）の中でも屈指の強度ですね。

T2: Ataturc

ヨシコ・セファーはインタビューの中で「人間の内部にある宇宙を探し求める旅において、音楽がそこに行き着くための乗物の役目を果たす」と言っています。

ユーロ・ロック屈指と言えるテクニックの高さはもちろんのこと、フランス/東欧という、英米文化と否が応でも対峙しなければならない土地柄ならではの内省と歴史観とそこから生まれた精神性に溢れたサウンドはマグマと並び、フレンチ・ロックの双璧ですね。