ドーナッツ・ショップのウェイトレス

国民的歌手とは、こういう人を言うのだろうか（3 拍手）

たすけさん レビューをすべて見る

72年、彼女の第2作ソロで、全て他人曲です。マルダーはグリニッジビレッジ出身だそうなんですが、ここで選ばれているラインアップは、カントリー・フォークにロックンロール、ブルーズ、メキシコ、カリブ海…。まるでライ・クーダーの世界なのに、たとえようもない瑞々しさ。辺境を同じように扱ってもここまで印象が違うか、と思います。例えば2曲目のメキシコのグリンゴを歌っている曲では、祝祭の雰囲気が鮮やかに演出されます。ローウェル・ジョージが協力しているのはこの曲です。

タイトルの「ドーナッツショップの娘」は、5曲目「スイートハート」の主人公です。古いジャズの形式で、妖艶に歌われる曲です。ここまで肉感的なシンガーってほかにいるでしょうか。まるでマリリン・モンローだと思いました。酒場の女でなくてドーナツショップというのがまたよろしい。わが国で言えば、おにぎり屋か惣菜店の娘の感覚でしょうか。

マルダーは今年80歳になるはずで、公式サイトを見るといまだ元気にステージをこなしているようです。江利チエミさんや弘田三枝子さんがまだ活躍していたら、そんな雰囲気になるのでは、とも感じました。まだ彼女のレコードを3枚しか聴いていないですけれど、思わずレビューしてしまいました。2023.02.04