VAN DER GRAAF GENERATOR(VAN DER GRAAF)/H TO HE WHO AM THE ONLY ONE
70年作、ロバート・フリップがゲスト参加、VDGGならではの暗澹たるエネルギーが渦巻く3rdアルバム!
590円(税込649円)
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絶望まっしぐら(2 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
ルキノ・ビスコンティの映画で好きなのが「地獄に堕ちた勇者ども」。金持ちの一族の中で、女装して酒をくらい、キャバレーの歌を唄って一同の顰蹙を買うキャラクターをヘルムート・バーガーが演じます。彼は常に心を病んでいて、金持ち一家に生まれるといろいろ大変なのだなあ、と羨望と同情を同時に感じたのです。わたしは名家と全然関係ないので、そこらへんの苦労を全然わかりません。ヨーロッパの積み上げられた歴史と闘いながら独自のポップ・カルチャーを生み出したのがスラップ・ハッピーです。彼らの音楽は伝統の破壊と再構成に尽きるのですが、「伝統」の部分を全くわからないわたしは、最初とても難解に感じました。
ポイントはやはりダグマー・クラウゼという不世出のパフォーマーにあるでしょう。彼女の無垢でありながら、巻き舌で下品に歌うさまは追随を許しません。ブルーズ、R&Bから転じたロックのイデオムからは、かなり離れています。ダグマーの歌う躁状態の曲と「デスペレイト・ストレイツ」のような陰鬱が同居しています。
曲をアンソニー・ムーアとペーター・プレグバドが書いていて、ヘンリー・カウのメンバーは演奏に徹しています。ところがクリス・カトラーのドラミングがすさまじいのなんの…。リンジー・クーパーのオーボエ、バスーンが不安感を煽り立てますし…。タイトルどおり絶望感に包まれる正確なポップです。2022.04.07