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ジャック・ブルースの美意識満開 (5 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
マクラフリンとの共演をやってみた。クリーム時代の未発表曲をアレンジして世に出した。好きだったレスリー・ウエストとグループを組んだ。一見支離滅裂のクリーム後の活動から、よし、しっかりした自分のバンドを持ってみるか、という作品です。本当はクリームのメンバーで解散後に最も計画的に動いてたのがジャック・ブルースだったと思います。ずるずると風潮や他のミュージシャンに引きずられることもありませんでしたし。ブルースの書く曲の深みは独特です。彼独自のスケールを隠し持っているのでないか、と疑わざるをえないほどです。
そしてピート・ブラウンとの友情。ジャズ素養の強いジャック・ブルースが時折ヘビーロックになってしまうのは、ブラウンを喜ばせようとやっているのでは、と勘繰っています。今までのソロ作は内省的色合いのものでしたが、この作品ではバンド・アンサンブルを追究しています。ギタリスト、ヒュー・バーンズはこの作品が本格的デビューです。ブルースとの作業はターニング・ポイントだったと語っております(1曲自作を披露)。サイモン・フィリップスの的確で劇的なドラミングも盛り上げます。
どの曲もよいです。1.Without a Wordは静かな出だしから徐々に感情を露わにしていくブルースの歌、さらにメンバーのインタープレイと進みます。まさに言葉はいらない。ピート・ブラウン渾身の作詞ではないでしょうか。6.Hows Tricks?は落ち着いたファンク。手品師のことを歌いながら、表現者ブルースを重ねています。デイブ・メイスン、ジョージ・ハリスン、ロッド・スチュワートなど、この時期米国のルーツ音楽を究めようとする人が多かった中、ジャック・ブルースはヨーロッパ的な抒情を追っていたようです。