NINE TONIGHT

シーガーが歌えば、ウソでもマコト（5 拍手）

たすけさん レビューをすべて見る

あまりに素晴らしく、何をコメントしていいのやら。いぶし銀のまま、全米をとった男の75年ライブに続くデトロイト、ボストン録音盤です。とは言っても、このライブまでの5年間、ヒットを矢継ぎ早に飛ばしていた頃なので曲のだぶりがありません。「ランブリン・ギャンブリン・マン」も「ボ・ディドリー」もやらずに聴衆を熱狂させてしまいます。デトロイトのお客さんは、反応がすこぶる良く、たいていの曲は冒頭だけで、うわっと盛り上がります。ハードなロケンローでも「うわっ」、アクースティックなバラードでも「うわっ」。こんな楽しいステージなら、クレイグ・フロストがグランド・ファンク再結成に興味なかったのが判ります。彼のピアノもギター同様に効いているんです。

ボブ・シーガーの曲のテーマは、率直に言えば臭すぎて恥ずかしくなるレベルです。風に歯向かって走り続ける、とか、今夜さえあれば明日なんか来なくたっていい、とか。これをジャニーズがやれば白けてしまうレベルです。でもシーガーは「違う」。言霊がある。彼が歌うと、臭いテーマでも信じる気持ちになれる。なぜって、彼が苦労人であることを全米が知っているから。誰よりも歌に込める歌詞の重さを知っている人だから。リトル・フィートのショーン・マーフィー姐さんが、そっとコーラスで寄り添います。これが歌唱小娘でも、アフリカ系歌姫でもないところが、またよいのですわ。2022.05.19