MOCCD13432(MUSIC ON CD) 【2017年発売CD】
特殊プラケース仕様。
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人生に対する屈折が表に出てこない稀有なエドガー(4 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
ホワイト・トラッシュは、アフリカ系米国人が白人を侮蔑する言葉として知られています。さらにエドガー・ウインターに向かって「ホワイト」と言うことは、彼の障害に対する侮蔑になってしまって、全くアウトの呼称なのです。それを自分から名乗ってしまう自虐感。エドガーは、「彼らは夜でないと出歩けないんだよ」というタイトルもつけていますので、子どもの頃相当いじめられた経験があるのでは、と想像しています。
たしかエドガーが最初に覚えた楽器はサックスだったと思います。兄ちゃんがブルーズなら、俺は違う道を行く、とばかりに前のめりになったファンク、ゴスペル作です。加えて、この頃ジェリー・ラクロワというファンクの上手い歌手に出会っていて、ラクロワ中心に前半は進みます。「ギブ・エブリシング・ユー・ゴット」は、ファズ・ベースの重量級ファンクで、スライの影響が強い気がしなくもありません。しばらくこの路線が続くと7曲目に「ダイイング・トゥ・リブ」がやってきます。
これはピアノを弾くエドガーのゴスペルなのです。いい曲。エドガーの書く曲はメロディが実に綺麗です。中でもこの曲は生きる意味や勇気をテーマにしていて印象的です。そしてこの曲以降がエドガーの独壇場です。ギターはフロイド・ラドフォード(ティン・ハウスのギタリストだった人)であるし、デリンジャー氏も起用しているわりに最後までブルーズになりません。これもエドガーの矜持です。2022.07.24