SJPCD117(ANGEL AIR)
アフィニティーのヴォーカリストによる71年唯一作なんですが、アフィニティーでのジャジーな魅力とは異なる切々とドラマティックな歌唱が胸を打つ名品なんです。NUCLEUSの面々による演奏もさすがの隙の無さ。
AFFINITYのヴォーカリスト、リンダ・ホイルが71年に発表した唯一のソロ・アルバム。バックはNUCLEUS。アフィニティでの名唄に勝るとも劣らない出色の出来です。CHRIS SPEDDINGのつぼをおさえたギターも最高。
スーパー・ギタリストJeff BeckがRod Stewart、Ron Wood、Nicky Hopkinsらと組んだ世紀のスーパー・グループ、1969年発表の歴史的名盤
490円(+税)
「音楽歳時記」 第五十回 3月3日 ひな祭りリターンズ 文・深民淳
音楽ライター/ディレクター深民淳によるコラム「音楽歳時記」。季節の移り変わりに合わせて作品をセレクト。毎月更新です。
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たすけさん レビューをすべて見る
英国ジャズなんか知らなくたって、アフィニティだって知らなくたって、楽しめるのがこの盤のえらいところです。アフィニティを抜けてぶらぶらしていたリンダ・ホイルを、ロニー・スコットがくどき落として制作が始まったのが裏話。曲はカバーを除いて、リンダがカール・ジェンキンズのアパートに通い、ピアノを弾いてもらっては歌詞を書き、という作り方だったとあります。リンダは職業シンガーではありません。この作のあと、あっさり芸能界を退いて、たしかアート・セラピーの教師になったはずです。
リンダは、シンガーとしてオールラウンダーだったわけではありません。ドスのきいた低音に魅力がある一方で、高音が出にくく声が裏返ってしまいます。ところが、ギターのクリス・スぺディング、カール・ジェンキンズの演奏たるや手を抜いてなくて、ボーカリストのリーダー・アルバムであることを忘れる白熱した展開なのです。リンダの力量では、この演奏に対抗するには力業しかなくて、彼女の声を楽しむというより、彼女の奮闘ぶりを応援したくなる曲ばかりです。
ピアノだけをバックにして、彼女が奔放に歌う曲には惚れ惚れします。小さい時からR&Bを聴かされて育ったらしいですから。この作のファンは多いらしく、何度も何度も再発されて出てきます。アナログはとんでもない値段であることと、カバーの彼女が可愛らしいことも一因なのでしょう。70年代はじめの英国ジャズ・シーンの豊かさを真空パックにしたような傑作に違いありません。
リンダ・ホイルは、2015年に2作めのソロを出しています。こちらは、特におすすめしようとは思いませんが。