BGOCD1066(BGO) 【2012年発売CD】
スリップケース付仕様(画像はスリップケースです)、2枚組、デジタル・リマスター。
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Michael Garrickの地続き(?)な2作品(0 拍手)
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Michael Garrickの2in1です。
【Black Marigolds:1966】
このジャズアルバムにはポエトリーリーディングやチェンバロ、チェレスタの使用など、かなり特徴的な要素があるのですが、オープニング曲のWebster's MoodのJoe HarriottのアルトサックスとTony Coeによるテナーサックスの上質なソロが堪らなく良いです。
Dave GreenのベースとTrevor Tomkinsのドラムのリズムに支えられ、両ソロともに気持ちよさそうに吹き上げているように感じます。この曲は名前の通り、Ben Websterに捧げられた曲とのことです。
"ジャズらしい"1曲目に続く楽曲は上述のように様々な要素が含まれており、アルバム全体としては、統一感が弱い印象を受けますが、それぞれの楽曲は実験的で大変面白く好みです。
ハープシコードは音の強弱がつけにくく、ジャズにはなかなか合わないという意見を聞いたことがあります。そういわれれば確かにそうかもしれない、と思う一方で、本作の9曲目「Carolling」のようになかなかどうしてしっくりくる楽曲もあったりするのが面白い。
アルバムタイトル曲で5曲目のBlack Marigoldsは、ライナーノーツによると
「Chaurasの五十番」というサンスクリット詩からタイトルが引用され、ラーガの原理を利用して作曲された」とありました。ラーガというものを知らなかったのですが、「旋律を基本とするインド古典音楽の音楽理論にして旋法」らしく、
この曲においてはイントロからハープシコードで繰り返される旋律が織りなす音楽のことを指すのでしょうか。
元ネタとなったサンスクリット詩から、「結婚の祝宴が開かれるはずの物語の終わりには、黒いマリーゴールドと沈黙があるだけである」という一説が紹介されておりました。楽曲を聴いていてもなかなか恐ろしい印象を受け、これまた良いです。
【The Heart is a Lotus:1970】
"Black Marigolds"を聴いた後に、こちらのアルバムの1曲目The Heart is Lotusを聴くと、同じようにインドのラーガ形式でアレンジされていることに気付きます。
このアルバムの最初の曲でハープシコードが使用されていることも踏まえると、このアルバムは"Black Marigolds"の続編なのかな?などと考えてしまいます。
更には4曲目のTemple Dancerの東洋的な音階が醸し出す不可思議な雰囲気のことも考えると、インドからもう少し東洋寄りへ移動をしている音楽なのではないかと妄想したりするのも楽しいです。(見当違いかもしれませんが)
そんなインドから東洋という土地的な”地続き”を想起させるアルバムですが、根底にjazzがあることを忘れさせることは決してない、大変面白いアルバムです。
このアルバムにボーカルとして組み込まれるNorma Winstoneは、「初めての舞台はサックスの代役だった」という逸話があり、人の歌声というよりかは、強力な鳥のさえずりのように感じます。
初めて聴いたときは、正直ちょっと怖かったのですが、いろいろアルバムを聴いているうちに、この声にはゾクッとする幽玄さとともに、心地よい温もりがあることを感じ取れるようになってきた気がします。