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たすけさん レビューをすべて見る
バウハウスやマガジン、キュアなどが切り開いた耽美派の地平を、堂々と真正面から切り込んできたのが4ADレーベルのコクトー・トゥインズです。レーベルの創始者アイボと一緒になってつくりあげた独特の小宇宙は、中世ヨーロッパの美意識を煮詰めたような濃密さです。中心になるのはボーカリストというよりボーカリゼーションのエリザベス・フレイザーと、深いリバーブのギターを弾き続けたロビン・ガスリー。ドラマーさえいません。(ずっとリズム・マシーンや、ドラムズの録音で通していました。)
彼らのアルバム、シングルは数あれど、わたしは「トレジャー」とこのシングル集だけで十分に理解できると考えています。特にデビュー時からのシングル曲を収録したCD1のほうです。ガスリーのギターは初期こそパンクの名残がするものの、徐々に純化していき淡々としたアルペジオとディレイだけになっていきます。エリザベス・フレイザーの声は彼女の中に二人の人格がいるようです。まともに歌詞さえ歌っていません。
「トレジャー」と同時期に出た12インチシングルの「aikea-guinea」収録の4曲が特にすごい。神の姿が見えます。よくぞトラッドやパンクを昇華してここまでの世界にたどりついたものだと驚嘆します。ただし、パンクやフィメール・ボーカルに関心のない人には魅力がわかりますまい。寒い冬にはこれでしょう。