MKDKCD0037(MKDK) 【2017年発売CD】
デジパック仕様。
エストニアから彗星のごとく登場したジャズ・ロック・バンドが彼ら!カンタベリー・ロックを受け継ぐジャズ・ロックを軸に、東欧由来のダークな緊張感、そして北欧的な気品と透明感を融合させたサウンドは唯一無二!
2000年デビューのエストニア出身ジャズ・ロック・グループ、スタジオ・アルバムとしては2010年作『TALU』から7年ぶりとなった17年作。いやはや本作も凄いっ!圧巻の手数とともに疾走するテクニカルかつ硬質なリズム・セクションに乗り、サックスとヴァイオリンが繰り広げる、クリムゾンばりのダークなテンションとカンタベリー・ジャズ・ロックを受け継ぐ滑らかでメロディアスなフレーズが共存するサウンドの何と強烈なこと。1曲目から「これぞPHLOX!」と拳を握ること間違い無しです。それを支える、ジャズ・ロック然としたクールなエレピをメインとするキーボード、クリーントーン主体で情緒豊かに旋律を紡ぐギターも非常に美しいし、哀愁を誘うアコーディオンの調べも絶品。そして何より素晴らしいのが、カンタベリー・ロックを手本としつつも、メロディやアンサンブルの端々に垣間見れるヨーロピアンな深い陰影と透明感ある音色使い。北欧と東欧に接するバルト三国エストニアならではと言っていいサウンドが芳醇に広がります。アヴァンギャルドなパートも度々登場しますが、聴きづらさはなく持ち前の気品あるメロディアスなジャズ・ロックの中に違和感なく挿入されていて、そのセンスの良さにも唸らされます。今作も期待を裏切らない痺れる傑作!
試聴はこちら!
https://phloxmkdk.bandcamp.com/album/keri
古くはRUJA、IN SPE、KASEKE、シンセ奏者Sven Grunbergなど数は少ないながらも質の高いアーティスト達によってシーンが築かれてきたエストニアのプログレッシヴ・ロック(「エストニア・プログレ特集」はコチラ)。その多くはシンセサイザーを多用した旧ソ連らしいサウンドを持ち味としましたが、そうした流れとは一線を画する音楽性を有するのがこのPHLOX(フロックス)。現在のパーマネントメンバーはこの6人です。
一聴して彼らのサウンドから感じ取れるが、SOFT MACHINEやHATFIELD & THE NORTH、NATIONAL HEALTHなどカンタベリー・ジャズ・ロックからの影響。高度な演奏力を駆使した肉感的でダイナミックなアンサンブルと、カンタベリー・ロックの魅力である芳醇なメロディアスさや洗練された洒脱な音運びが一体となったサウンドが特徴です。時おり挿入されるアヴァンギャルドなパートも上記グループ達を想起させます。
でもそれだけに終わらないのがこのPHLOXで、そのサウンドには「エストニアらしさ」と言えるものが滲んでいるように思われます。
エストニアは、リトアニア、ラトビアとともにバルト三国として知られるとおりバルト海に面する国の一つで、第一次大戦後の1918年にロシア帝国より独立する形で建国されます。その後1940年にソビエト連邦によって占領、独ソ戦が勃発した翌1941年には今度はナチスドイツによって占領されます。第二次大戦末期の1944年にソ連に占領/併合され、1991年のソ連崩壊によって約50年ぶりに独立を回復しました。他の多くの東欧諸国と同様ソ連とナチスドイツという強国の間で翻弄された小国の一つだったと言えます。
PHLOXが結成された首都タリンの風景。タリンの歴史地区は世界遺産にも指定されています。
上記の経緯を見るとエストニアは東欧に属する国という印象を持ちますが、ロシアの西端に隣接する国でいわゆる東欧諸国とはやや離れており、より近いのはバルト海を挟んだフィンランドやスウェーデン。区分的には北欧とされることも多く、北東ヨーロッパという呼び方もあります。東欧プログレが共通して持つうっすらと緊張感のあるダークで陰影ある質感。北欧プログレの凛とした透明感ある音色使い。この二つが共存している部分にこそある種の「エストニアらしさ」を見出すことができ、PHLOXのサウンドの中にも欠かせない要素として息づいているように感じられます。
実は大変音楽が盛んなエストニア。中でも踊りとともに歌われる民族音楽の合唱(CHORAL)は特に知られるもので、5年に一度開催される19世紀より続く合唱大会「エストニアン・ソング・フェスティヴァル」は、世界で有数の規模を誇る音楽祭として知られます。上記写真はその模様で、大会参加者は2〜3万人、観客は10万人にも及ぶそうです。総人口約130万人のうち実に7割の人々が合唱団に所属しているというから驚きですよね。
ソ連統治下時代には禁止されていたエストニア国歌や民謡ですが、独立の機運が高まり始めた87年頃よりロック・ミュージシャンたちを巻き込んで国歌・民謡を歌う民衆デモが頻発するようになります。4年に及ぶ民衆のデモ運動が実を結び、91年エストニア共和国が成立。赤軍と民衆は一触即発の事態まで陥りながらも、ついに流血を見ることなく独立が達成されました。エストニアを発端にバルト三国に広がったこの運動は「歌う革命(Singing Revolution)」と呼ばれます。
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2,590円(税込2,849円)
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2,290円(税込2,519円)
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鋭角的な切れ味と透明感が魅力の北欧ジャズ・ロックに注目!
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70年代に欧州を中心に世界中へと拡散したカンタベリー・ロックの影響。現代のバンドにもその音楽性は引き継がれカンタベリー・タイプの新鋭を数多く誕生させています。実力派揃いでお送りいたしましょう♪
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00年代新鋭ジャズ・ロック・グループ〜ソフツやハットフィールドのDNAを継ぐバンドを世界中からセレクト!
ソフト・マシーンやハットフィールドなどカンタベリー・ミュージックのDNAを継ぐ新鋭ジャズ・ロック・バンドを世界中からピックアップいたしましょう。
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世界中より、シャープに引き締まったテクニカルかつ流麗なジャズ・ロック作品をセレクトしてまいりましょう。
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00sエストニアから登場した驚異のジャズ・ロック・バンド!往年のカンタベリー・ロックを鋭く尖らせて倍速させたような、超テクニカルで痛快極まるアンサンブルが炸裂!
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