2014年5月22日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記
タグ: プログレ
TANGERINE DREAMの記念すべきデビュー作『ELECTRONIC MEDITATION』をピックアップいたしましょう。
何と言っても、メンバーが凄い!
エドガー・フローゼ(ギター、オルガン、ピアノ、サウンド・エフェクト)
クラウス・シュルツェ(ドラム、パーカッション)
コンラート・シュニッツラー(チェロ、ヴァイオリン)
バンドのブレーンでありエレクトロニック・ロックのパイオニアと言えるエドガー・フローゼ、後にシンセサイザー・ミュージックの巨匠として君臨するクラウス・シュルツェ、そして、後にクラスターを率いてテクノにもつながる音響派音楽を確立するコンラート・シュニッツラー。これだけのジャーマン・ロック・シーンを代表するミュージシャンの3人が揃ったという奇跡。デビュー作録音後、クラウス・シュルツェはアシュ・ラ・テンペル結成のために脱退するため、この3人での録音はただこの一枚となります。
エドガー・フローゼは、第二次世界大戦中の1944年にバルト海沿岸の東プロイセンに生まれ、60年代半ばにアートを学ぶために西ベルリンへ。サイケデリック・ロック・バンドONESを結成し、一枚のシングルを残します。
バンド解散後は、より実験的な音楽を指向し、有名なZodiak Free Arts Labにてライヴを中心に活動します。この頃の彼の言葉「In the Absurd often lies what is artistically possible(不合理的なばかばかしいものの中に芸術は存在する。)」の通り、理性から離れた「意識の深層の世界」の表現を目指すシュールレアリズムに強い影響を受け、ダリに呼ばれて演奏するなど、文学、絵画とも融合した音楽を試みていたようです。
そして67年、ビートルズ「Lucy In The Skies With Diamonds」の歌詞からバンド名を取って、TANGERINE DREAMを結成。69年に『ELECTRONIC MEDITATION』でデビューします。
英米のポピュラーミュージックとは似ても似つかぬ観念的で人間の深層心理を浮き彫りにするようなサウンドは、19世紀ロマン主義から綿々と続く思想・哲学の国ドイツならではの内省的ロック・ミュージックと言うことができるでしょう。
エモーションのかけらもなく、真空の暗黒の闇のように超然と鳴り響くシンセ、まるで抑圧された狂気による呻きのようにたちこめるチェロ、そして、祭り囃子のような異界のムードを放つドラム(というより太鼓)とフルート。
理性から離れ、無意識下にうずめられた感性を呼び覚ますかのような観念的サウンドは、まさにロマン主義の系譜であり、真にサイケデリック。
エドガー・フローゼはワーグナーにも影響を受けていたようで、クラウス・シュルツェも後にワーグナーへのオマージュに溢れた作品をリリースしますが、「言葉=理性=構造化」では表現できない「人間の内面的葛藤=深層心理のドラマ」を音に描こうとしたワーグナー的ロマン主義音楽の延長線上にあるロック・ミュージックとも捉えることができるでしょう。
ディストーション・ギターが機械音のように無機的に飛び交うイントロ。ピンク・フロイドの1stの1曲目「天の支配」でのシド・バレットのギターを彷彿させます。
1分50秒あたりでたちのぼる温かな音色のオルガン。母体内の温もりのようで、理性が生まれる前の無垢な世界への憧憬を感じます。
記憶の遠い向こうにある場所への郷愁に浸り、じんわり感動していると、ドライヴ感あるギターのアルペジオ、フリーキーに暴れるファズ・ギター、まるでフルートの体をなしていない荒々しく吹かれるフルートが空間を切り裂きます。エネルギーは増幅を続け、シド・バレットのサイケ感と津軽三味線の恍惚とか出会ったようなギター、けたたましく疾走するドラムが畳みかけ、文明以前の個人の意思がみなぎる原始世界へ回帰したような圧倒的なカタルシスへ。
ピンク・フロイドもホークウィンドもオザンナも凌駕するようなヘヴィ・メディテーション・ロックに、ただただ悶絶。
11分過ぎには、オルガンのモチーフがまたあらわれ、再び深遠なる世界へと帰っていきます。
理性と深層心理との間を超えてめぐる圧巻のサウンド・スケープ!
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18世紀~19世紀において、隣国フランスが理性に基づいた啓蒙主義の元、フランス革命を経験していく一方、約300の諸侯に分裂して国家としての体を成していない神聖ローマ帝国の元、統一した思想=信仰を持てない中、内面の探求へと向かったドイツ国民とそれを背景にして生まれたロマン主義。そんな、理性に縛られない個人の意思や感情にフォーカスし、その内面、深層心理の表現へと向かったロマン主義芸術の歴史と、英米から起こったサイケデリック・カルチャーの波動とがぶつかりあって生まれたドイツならではのロック・ミュージックと言えるでしょう。69年にはクリムゾンやレッド・ツェッペリンの1stなど多数の傑作が生まれましたが、それらと比べても一歩も引かない、ドイツという国だからこそ生まれたロック史に残る大傑作ですね!
Edgar Froeseを中心に結成され、シンセサイザー、アナログシーケンサーなどの電子機器を巧みに使用したメディテーショナルなジャーマン・エレクトロの原点に位置するグループ。 本作は、Klaus Schulze、Conrad Schnitzler脱退後の71年にOhrレーベルからリリースされた彼らの2nd。シンセサイザー導入により、その後のバンドの革新性を決定づける事となる重要作。
スリップケース付き仕様、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック3曲
盤質:無傷/小傷
状態:良好
スリップケース無し
ヴァージン移籍直前のOHR期最後となる4作目。73年作。その後の世界的成功を獲得する布石となる重要な作品。
Edgar Froeseを中心に結成され、シンセサイザー、アナログシーケンサーなどの電子機器を巧みに使用したメディテーショナルなジャーマン・エレクトロの原点に位置するグループの74年5th。彼らの代表作に挙げられる事もある名盤であり、ヴァージンと契約したあとの第1弾アルバムです。冒頭から澄み切ったドローンと電子音が瞑想の世界へ誘い、徐々にシーケンスへと移ろう流れは圧巻。また、プログレッシブ・ロックファンには馴染みの深いメロトロンも使用されており、やはりプログレッシブ・ロック的なそれとは全く違う浮世離れした雰囲気を醸し出し、シンセサイザーのアルペジオと不思議なマッチングを見せています。
78年の通算11作目。無機質なミニマル・フレーズとドラムの叩き出すタイトなロック・ビートを融合させ、ソリッドに未来的なサウンドを展開。ヴォコーダーを交えた情緒的なヴォーカル・ナンバーも披露し話題を呼んだ異色作。
紙ジャケット仕様、1995年デジタル・リマスター、定価2476+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
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