2018年3月25日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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本記事は、netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』第42回 ANIMA MUNDI / The Lamplighter (Cuba / 2013)に連動しています
ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックのトップに君臨するYES作品のイメージが強いアートワーク・デザイナーRoger Deanですが、それは2000年以降においても変わりません。2014年に発表された『Heaven & Earth』は、ヴォーカリストにアメリカのプログレッシブ・ロック・グループGLASS HAMMERのJon Davisonを抜擢、QUEENの傑作で知られるRoy Thomas Bakerをプロデューサーに起用し製作されました。唯一のオリジナル・メンバーであったベーシストChris Squireにとって最後のスタジオ・アルバムとなってしまったことが残念でなりません。
YESと並んで、デビュー以来Roger Deanによるアートワークを採用し続けてきたのがKING CRIMSONのベーシストJohn Wetton、YESのギタリストSteve Howe、THE BUGGLESのキーボーディストGeoff Downes、そしてEMERSON, LAKE & PALMERのドラマーCarl Palmerから成るスーパー・グループASIAです。グループにとって12作目となる2014年作『Gravitas』は、YESの活動に専念するためSteve Howeが脱退し、新たなギタリストSam Coulsonが加入した体制で製作されました。Chris Squireと同様、John Wettonにとっては本作がASIAでの最後のスタジオ・アルバムとなりました。
ブリティッシュ・ロックの名門レーベルであるVertigoから71年にデビューを飾ったのがAFFINITYです。AFFINITYでヴォーカリストを務めたLinda Hoyleは71年にソロ・アルバム『Pieces Of Me』もリリースしましたが音楽業界から引退。なんと44年ぶりにリリースされたのが本作『The Fetch』となっています。AFFINITY人脈からベーシストMo Foster、加えて元STACKRIDGEのドラマーPeter Van Hooke、元CARAVANのギタリストDoug Boyleらをゲストに迎えた本作にはRoger Deanのアートワークが採用されており、AFFINITY時代と変わらず個性的な歌声を聴かせるLinda Hoyleの世界観に華を添えています。
アメリカのYESフォロワーであるGLASS HAMMERは、2005年作『The Inconsolable Secret』においてRoger Deanのアートワークを採用しました。そのサウンドは、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの代表格アーティストたち、特にYESやGENESIS、あるいはEMERSON, LAKE & PALMERといったシンフォニック・ロック・グループたちからの強い影響を下地としながらも、同郷KANSASらに通じるアメリカらしさも持ち合わせたものです。なお、GLASS HAMMERは続く2007年作『Culture Of Ascent』においてYESのヴォーカリストJon Andersonをゲストに迎えています。
SEBASTIAN HARDIEを輩出したオーストラリアから登場したマルチ・プレイヤーBen Cravenは、2011年作『Great & Terrible Potions』にRoger Deanのアートワークを採用しました。驚くべきは、本作がBen Cravenの多重録音のみによって製作されているということでしょう。ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの代表格グループたちからの影響を感じさせつつオーストラリアのミュージシャンらしい雄大さも兼ね備えた、メロディアスなシンフォニック・ロックを聴かせています。
フルートも操るキーボーディストThijs Van Leerと凄腕ギタリストJan Akkermanを擁したオランダのプログレッシブ・ロック・グループFOCUSは2002年、FOCUSのトリビュート・グループ出身者を含む編成でThijs Van Leerを中心に再結成を果たし『Focus 8』、2006年作『Focus 9 / New Skin』を発表し積極的な活動を展開してきました。彼らは2012年作『Focus X』において、アートワークにRoger Deanを起用しています。さすがは70年代から活躍するトップ・グループだけあり、高いクオリティーを誇ります。
WOBBLERやTHE OPIUM CARTELを掛け持つJacob Holm-Lupoによるメイン・プロジェクトが、ノルウェーのプログレッシブ・ロック・グループWHITE WILLOWです。2017年に発表された『Future Hopes』にはRoger Deanがアートワークを提供しており、WOBBLERやTHE OPIUM CARTEL人脈、加えてスウェーデンのANGLAGARDでの活動が知られるMattias Olssonも前作に続いて参加。Jacob Holm-Lupoはヴィンテージ・キーボード・フリークとして知られていますが、本作においてもレトロなサウンド・メイクを徹底しています。
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ノルウェー出身、北欧シンフォ・シーンを牽引するバンドによる17年作。繊細ながらも鋭利なナイフを思わせるキレを持つエレキギター、柔らかなアコースティックギター爪弾き、メロトロンやオルガンを中心とする幽玄のキーボード群、そしてヘヴンリーなフィメール・ヴォイスらが織りなすバンド・アンサンブルと、デジタリーなプログラミング音響が絶妙に融合した、非現実感が漂うサウンドがとにかく素晴らしいです。初期より一貫するほのかな北欧トラッド色も彼らならではと言える圧倒的な情景描写性をより際立たせていて、深い雪に覆われた北欧の自然情景がありありと見えてくるかのよう。とは言え突き放すような孤高さよりは雄大な音像に包み込まれているかのような温かみを宿しているのが実に感動的です。中心メンバーのJacob Holm-LupoによるユニットOPIUM CARTELの音楽性に接近した印象も受けます。ジャケット・デザインに巨匠ロジャー・ディーンを起用しているのも納得の、息を飲むほどの幻想美が広がる傑作!
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