2017年7月21日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
英国ロック・シーンには「いぶし銀」とも評される、派手さはなくとも確かな腕前で数々の名作を彩ってきたミュージシャンが多数存在しますよね。
そんな英国いぶし銀ミュージシャンの中から、フォーク・ロックからプログレまでジャンルを超えて活躍するギタリストAndy Robertsを取り上げたいと思います。
1946年イングランド南部ミドルセックス郡に生まれ、60年代中期より本格的に音楽活動をスタート。
60年代後半にはSCAFFOLDのロジャー・マッゴー、ポール・マッカートニーの実弟マイク・マクギアなどの作品への参加を経て、ポエトリーリーディングとジャズ/フォーク・ミュージックをかけ合わせた異色のパフォーマンス集団LIVERPOOL SCENEに参加。同期メンバーにはあのパーシー・ジョーンズもいました。
その後はLSのメンバーを中心とするGRIMMSや、イアン・マシューズらと結成したPLAINSONG、ケニー・ヤング率いるYELLOW DOG、自身を中心とするバンドEVERYONEなどのグループで活躍します。またGREENSLADEやPINK FLOYDといったプログレ・バンドでも好演を残している実力派なんです。
以前、【セッション・ワークス編】と題して彼がセッション・ギタリストとして参加した代表的な作品をご紹介いたしましたが、今回はロバーツがメンバーとして在籍したバンドでの作品とソロでの作品に焦点を当ててまいります!
初期ロバーツのキャリアにとって重要なバンドと言えるのが、ポエトリーリーディングとジャズ/フォーク・ミュージックをかけ合わせた異色のビートニク集団Liverpool Scene。BBCの名物ラジオDJジョン・ピールがプロデュースを務めたこの68年作は、これまでセッション参加のみだった彼にとって正規バンドメンバーとしての初めての作品となりました。気怠げなギターがいい味出してますね~。
なおギターに絡む怪しい存在感が光るベースは、後年BRAND Xで活躍するフレットレスの名手パーシー・ジョーンズによるもの。
フェアポート・コンヴェンションやサザン・コンフォートで活躍したSSWイアン・マシューズとロバーツが中心となって結成したのが、このPlainsong。同時期のマシューズのソロやサザン・コンフォートを踏襲したようなアメリカン・フォーク・ロックを志向したグループで、ロバーツもカントリー・ミュージック調のとても味わい深いギタープレイで色を出しています。数ある米志向の英フォーク・ロックの中でもお手本のような完成度の一枚。
Liverpool Scene、Scaffoldという2バンドのメンバーにBonzo Dog Bandの奇才ニール・イネス加わり結成したGrimms。Liverpool Scene代表としてロバーツも参加しています。英ビートニクを代表する両バンドの流れを汲む、音楽、ポエトリー・リーディング、寸劇で構成された内容で、日本人にとってはやや取っ付きにくいのは確かですが、ロバーツを軸とする演奏パートの素晴らしさは言わずもがなです。オリー・ハルソールの好演も必聴!
Foxを率いたKenny Youngが中心となって結成したこのYellow Dogでもサウンドの要を担うロバーツのギター。
この「Gypsy Soul」では、重心の低いブルージーなリズムギターにソウルフルなヴォーカルが絡み、ヴァイオリンがブリティッシュな陰影を落とします。名曲!
英国屈指のミュージシャンズ・ミュージシャンにして孤高のSSWロイ・ハーパーのバンドに、デイヴ・ロウソン、ヘンリー・マッカロウといった実力派とともに参加。この曲の軽快なプレイはマッカロウっぽいですが、いぶし銀なプレイはしっかりとロバーツが務めてます。
PLAINSONGの盟友3人、アンディ・ロバーツ、マーク・グリフィス、クライヴ・グレッグソンによるバンド、11年作。
音源がなかったので、旨みたっぷりのアコースティック・アンサンブルが素晴らしい13年ライヴの模様をどうぞ。左がロバーツですね。
71年に発表した自身の記念すべき1stソロ・アルバム。ジャケットからして堪りませんが、中身もロバーツが奏でる多彩なギターサウンドが味わい深く折り重なるこれぞいぶし銀SSWと言うべき至上のフォーク・ロック。淡い英国叙情を醸し出すオルガンにもやられます!
アンディ・ロバーツのことは知っていても、この幻のフォーク・ロック作品は知らない?知っていたら、かなりの英ロック通ですね!スモーキーで翳りがあってそれでいてメロディアスという、もうたまらんすぎる英国ロック!
Grimmsでも共演した名手オリー・ハルソールを迎えた73年作がまたいい!オリーの太くヌケの良いリズム・ギターに、ペダルスチールにも似る美しく芳醇なロバーツのギターが絡む。そしてウエストコースト・フレイヴァーいっぱいに空高く舞い上がるコーラス。まさにジャケット通りのサウンドが広がる、「アメリカなイギリス」サウンドとしては最高峰の逸品。
米ルーツへの憧れからこぼれ落ちる英国的陰影に富んだ叙情美や牧歌性。リチャード・トンプソンやニール・イネスやイアン・マシューズのサポートも息ぴったりで、うーんこれぞ英国いぶし銀SSWの逸品!
フォーク・ロック&プログレでのセッションワークをまとめた下記記事も合わせてお楽しみください☆
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リヴァプール・シーンやグリムズやプレインソングでの活動でもソロでも英ロックのファンにはお馴染みのアンディ・ロバーツが、元ヤンコ・パートナーズやミック・エイブラハムズ・バンドのKey奏者ボブ・サージェントらと結成したグループ。サンディ・ロバートソンのプロデュースで録音され、アトミック・ルースターやジンハウスやハンニバルなども所属するB&Cレーベルより71年にリリースされた唯一作。2曲目「Sad」の名曲ぶりが凄い!抑制されたリズム隊とピアノが「くるぞくるぞ」と聴き手の期待を煽るタメの効いたイントロから雰囲気たっぷり。バックにはメロトロンも鳴らされ、ハイ・トーンのスモーキーなヴォーカルがエモーショナルに憂いのあるメロディを歌い上げる。リズムが走り、オルガンが鳴らされ、ピアノがジャジーなフレーズを彩ると、そこは英国ならではの翳りある世界。そこに追い打ちをかけるように鳴らさせるメロトロン!ブリティッシュ・ロック一級の名曲ですね。その他の曲も粒ぞろいで、米国憧憬の中にもフィドルが英国的な陰影を描くフォーク・ロック、ルーラルなコーラスが染みるスワンピーな曲、ペダル・スティールが美しすぎるハートウォームな曲など、英国的なメロディが堪能できます。英フォーク・ロック/SSWのファンはもちろん、ネオン・レーベルあたりのジャジーで叙情的な英ロックのファンにもたまらない名作!
リヴァプール・シーンやグリムズやプレインソングでの活動でもソロでも英ロックのファンにはお馴染みのいぶし銀SSW。73年の3rdソロ。プロデュースは、サンディ・ロバートソン。米ルーツへの憧れからこぼれ落ちる英国的な陰影に富んだ叙情美やシニカルなタッチや牧歌性。郷愁と緊張感とのバランスが絶妙で、これぞ英国フォーク・ロック/SSWと言えるサウンドを堪能できます。リチャード・トンプソン、名ペダル・スティール奏者B.J.Cole、イアン・マシューズ、ニール・イネスなどによる、アンディ・ロバーツにも負けないいぶし銀のアンサンブルも聴き所。
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