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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第四回 DICE『THE FOUR RIDERS OF THE APOCALYPSE』(スウェーデン)




美術、音楽、文学、建築など、どのジャンルにも限らず、西洋の芸術や文化を深く味わいたいと思ったら、必読の書は『聖書』だ。その内容を知っていると知らないとでは、味わいがガラリと変わることもある。しかし、『聖書』を小説のように最初から読もうと思うと苦痛以外の何物でもない。

ご存じのように『聖書』には旧約と新約がある。イエス・キリストが登場するのは新約の方。旧約はそれ以前の神話となる。『聖書』の解説書とか、子供向けに内容をかいつまんだものとかもあるけど、いずれにせよ登場人物が多いし、わかりにくい表現も多くて読みやすいものではない。

『聖書』は、キリスト教の布教活動をしている人が町で配ったりもしている。僕は大学生の頃に学生通りでキリスト教の信者の人から『聖書』をもらった。結構立派な装丁のもので、旧約と新約が載っている。せっかくなのでと少しずつ読んだりして、西洋美術や文化のバックボーンを知る勉強にはなったけど、やはり信者じゃないのでのめり込めない部分も多かった。

そんな『聖書』でも、ひときわ興味深いのが、『新約聖書』の最後に収録されている「ヨハネの黙示録」。いったい何のことが書かれているのか、誰が書いたのかなど、まだまだ不明な点も多くて、これまでに多くの議論がされてきている。内容は、ここだけやたらと抽象的かつ予言めいたファンタジックな内容で、それが面白くて何度も読んだ。

この謎に満ちた「ヨハネの黙示録」に挑んだのが、ギリシャのAPHRODITE’S CHILDによる『666』(72年)だ。アナログ2枚組の大作で、「ヨハネの黙示録」を丸ごと音楽で表現。プログレ史に残る傑作だが、ジャケット的にはそれほど面白くないので、同じく「ヨハネの黙示録」をテーマに選んだスウェーデンのDICEによる『THE FOUR RIDERS OF THE APOCALYPSE』を紹介したい。

同作は77年に録音されたが未発表に終わった音源に手を加え、92年にCD化されたもの。北欧プログレの名作『DICE』を残した彼らの未発表音源、しかも「ヨハネの黙示録」に登場する四騎士をテーマにしたアルバムとあって、ものすごく期待は高かったのだが……。いや、音楽は期待通りだった。

『DICE』のファンタジックな音楽性をそのままに、テーマ性が設定されたことで、アルバムの整合性は『DICE』より上かも知れない。まさに名作といえるクオリティなのだが、このジャケットです。なんと、メンバーのOrjan Strandbergが自ら描いたもの。ご丁寧に「この絵はアルブレヒト・デューラーの作品を基にした」と書かれていて、CDの裏ジャケットにはそのオリジナルが掲載されている。だったら、デューラーの絵をそのまま使ったらいいじゃないか?!絵の心得があるようで、ヘタクソとまではいわないけど、デューラーと比べたらねえ……。

それに「ヨハネの黙示録」に登場する四騎士の馬は、順番に白、赤、黒、青白い馬とあるが、Orjanは奥から馬の色を、白、茶、茶、黒で描いている。この四騎士が登場する場面は、色の異なる馬が、それぞれに不幸を携えてやってくるというのが鮮烈なイメージを与えるわけで、これを間違うとなぁ……。何やってんのよOrjan!APHRODITE’S CHILD『666』の「The Four Horsemen」は、さすがにこの点をビシッと押さえていて、「最初の馬は白、二番目のは赤」と色のことをサビで歌っている。ではAPHRODITE’S CHILDの「The Four Horsemen」を聴いてもらいましょう。

The Four Horsemen

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さて、DICEである。DICEはBEATLESに影響を受けたスウェーデンに住む二人の少年、Orjan StrandbergとLeif Larssonの出会いからスタートする。Leifはピアノを、Orjanはチェロを習うなどクラシックのレッスンを受けていたが、時は60年代後半、イギリスから聴こえてくる刺激的な音楽の洗礼を受けて、プログレ系アーティストにのめりこんでいく。特にGENTLE GIANTとEL&Pに影響を受けたという。二人は互いの家を行き来しながら、作曲することに熱中。さらにCOGNACというバンドでDEEP PURPLEやURIAH HEEPのコピーをしていたそうだ。

73年にはパーカッションのPer Anderssonと知り合い、翌年にはLeifらと活動を行うようになる。さらにベースのFredrik Vildoが加わり、DICEとして地元ストックホルムで本格的な活動を開始。この頃には『THE FOUR RIDERS OF THE APOCALYPSE』の楽曲が完成していて、77年1月にレコーディングを行なっている。

77年~78年にかけては、Robert Holminをシンガーに加えてレコーディングを行い、78年に『DICE』を発売する。デンマークでの海外公演も行ない、新作用の曲作りにも精力的に取り組んでいたが、時代の変化もあって活動を続けることが難しくなってしまう。

82年にはKRAMPと名乗り、DICEの音楽性を微塵も感じさせないパンキッシュなシングル「Yf / Discipline」を発表。Leif Larssonがソロでシングルを出したり、女性シンガーを加えたJET SETとしてシングルを出したりと、メンバーはスウェーデンの音楽業界で細々と活動を続けている。

今では北欧プログレの名作として有名な『DICE』だが、以前は一部のマニアが“知っている”だけの存在だった。『DICE』が知名度を得るきっかけを作ったのが、雑誌『MARQUEE』の編集長をされていた山崎尚洋氏である。

今でこそ世界各国のプログレ・アルバムが、日本にいながら入手可能だったりするが、70~80年代にはユーロ・プログレの情報などほとんどなく、日本のマニアたちはヨーロッパ各国にくり出し、現地のレコード店で発掘作業を行なっていた。山崎氏は自ら北欧に赴き、デンマークのオデンセという町のレコード屋で『DICE』を発見する。Orjanと連絡を取り、89年にベル・アンティーク・レーベル初の海外アーティスト作品として、『DICE』を『北欧の夢』という邦題でリリースしたのである。

そして、山崎氏とOrjanとのやり取りの中で発見されたのが、『THE FOUR RIDERS OF THE APOCALYPSE』の4曲で、こちらは92年にCD化されている。さらに、93年にはライヴ音源6曲と未発表スタジオ音源4曲を収録した『LVE DICE』、13年には77年に録音されたラジオ用音源を収録した『LIVE 1977』が発掘CD化されている。

改めて『THE FOUR RIDERS OF THE APOCALYOSE』の話。本作は『新約聖書』「ヨハネの黙示録の四騎士」をモチーフにした4曲からなっている。この四騎士の話は、「ヨハネの黙示録」の第6章に登場する。第一の封印が説かれた時に、まず白い馬に乗った騎士が現れる。騎士は頭に冠をかぶり、弓を手にし、勝利の上の勝利を得る役目を持っている。次に第二の封印が説かれた時、赤い馬に乗った騎士が現れる。手に剣を持ち、人間たちに戦争を起こさせる。第三の封印が説かれた時には、黒い馬に乗った騎士が現れる。手に天秤を持ち、飢饉をもたらす。最後は、第四の封印が説かれた時に、青白い馬に乗って現れる騎士で、黄泉(ハデス)を連れ、人々を死に至らしめる。

『THE FOUR RIDERS OF THE APOCALYPSE』は、同テーマに基づき、「War」「Disease」「Greed」「Death」の4曲からなっている。重いテーマではあるが、DICEらしいファンタジー性、そして北欧らしい透明感のあるサウンドで、それぞれの楽曲をドラマチックに描き出している。北欧プログレと聞いてイメージするものを裏切らない。これがメジャー・レーベルから発表されていれば、同郷のKAIPAと匹敵するぐらいの評価を得ていたに違いない。4曲とも約10分の大曲で、いずれも聴きごたえがあるが、ここでは1曲目の「War」を聴いていただきましょう。

War

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今回はちょっと残念な例のジャケットとして紹介させてもらったけど、内容は文句なくすばらしい名作ですので、聴いてみてもらいたいと思います。
それでは、また世界のジャケ写からお会いしましょう。



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