2019年4月15日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
ジャズの流れを汲むテクニカルでしなやかな演奏と、他の英国勢とは一線を画する味わい深くも洒脱なポップセンスで、プログレッシヴ・ロックの一カテゴリとしてとりわけ高い人気を誇るのが、カンタベリー・ロック。
その影響は英国よりも、むしろ欧州各国へと広く伝わり、ヨーロッパの各所にカンタベリー・ロックを下敷きとして独自の発展と遂げた好グループが誕生しました。
今回は、そんな世界に拡散したカンタベリー・ロックの影響を取り込んだ世界のカンタベリータイプの名盤をピックアップしてまたいと思います!
まずは、日本からまいります☆
カンタベリー・ロックへの憧憬が滲む淡い叙情性と強靭なテクニックが同居するサウンドは、HF&NやHENRY COW、エストニアのPHLOXなどがお好きなら必聴モノ。今最も注目すべき国産ジャズ・ロック・バンド!
こちらは11年作。カンタベリー meets 和楽!? 現代の日本にもこんなジャズ・ロック・バンドが居るんです!
これ、ジャズ・ファンク+カンタベリーと言えちゃうかな?MAGMAやCRUCIFERIUSなどから実力者が集結したフレンチ・ジャズ・ロック・バンドによる強靭かつ気品高い73年デビュー作!
え!? この音でゴングよりデビュー早いの? 怪しさムンムンのジャケも堪りません。このフランスのジャズ・ロック・グループ、恐るべし。
イタリアを代表するバンドNEW TROLLSのリーダーであるVittorio Di Scalziの弟Aldoが率いるチェンバー・ジャズ・ロック・グループ。デビュー作に当たる前作では、静謐感と透明感に満ちたサウンドにCARAVANやHATFIELDに通じるひねりの効いたポップ・フィーリングを加えたような作風でしたが、本作では、透明度の高いサウンドはそのままにHENRY COW的な緊張感が加わって、よりアーティスティックで孤高な世界を作り上げています。独特の美意識を湛えた名盤!
こちらはオランダのバンド。一聴してカンタベリーからの影響を感じさせるポップなジャズ・ロックなのですが、この2ndは71年作で、なんと『グレイとピンクの地』と同年。それでいてこの完成度の高さは驚異的ですよね。知る人ぞ知るという認知度のグループですが、フォーカスのようにワールド・デビューできていたらオランダを代表するバンドとして知られていたかも、と思わせるほどの実力派!
清涼感あふれるエレピに骨太でヘヴィなギター、硬質なトーンのシンセ。カンタベリー・ロックとハード・ロックとジャーマン・シンフォが混ざっちゃったようなサウンドがなんとも独特・・・。
2個上のPDPと並ぶ、ファンタジックなタッチのチェンバー/ジャズロックを聴かせる名グループと言えば、カナダはケベック出身のMANEIGE。丸みを帯びた愛らしい音色をふんだんに散りばめたチェンバー・サウンドは、間違いなくカンタベリーファンの心をつかむポテンシャルを秘めています。ほんわかとしたパストラルなパートから、恐ろしいまでのテクニックで突き進んでいく変拍子ジャズ・ロック・パートまで、振り幅の大きい演奏は圧巻。
世界中に拡散したカンタベリーのエッセンスが、北欧スウェーデンにこんなにもハイレベルな作品を生んでいたとは!HATFILEDやNATIONAL HEALTHを北欧ロック的な硬質感や緊張感のもとで解釈したような、まさに北欧からしか出てこないであろうカンタベリー系サウンドを展開。加えてアネクドテンやアングラガルドを形成した源流の一つとも言えちゃいそうなこの畳みかけるへヴィネス!
フィンランドでカンタベリーを感じさせるグループと言えば、何と言ってもWIGWAM。奔放にして創造性豊かなセンスから北欧のビートルズとも例えられますが、ハモンドオルガンにエレピも交えて展開される洒脱なジャズ・ロック・テイストは、紛れも無くカンタベリーの流れを汲むもの。温かみのあるメロディラインと鼻にかかった優しげな歌声も共通点ですよね。
テクニカルで強靭なジャズ・ロック・アンサンブルに、女性シンガーPascale Sonの艶やかに舞うスキャット・ヴォーカルをフィーチャーしたベルギーの個性派バンド、78年作。情感のこもったギターやシンセの用い方がCAMELを思わせたり、リズム隊の跳ね方が妙にファンキーだったりと、いろいろと耳を引く要素を併せ持っていますが、それらが組み合わされると全体の印象は不思議とカンタベリー風なんですよね~。
そのCOSのメンバーだったkey奏者とベーシストが結成したこのグループの作品もやはりカンタベリーファン必聴作。爽やかに柔らかにたゆたうフルートを中心に、優美なエレピ、フィル・ミラー彷彿の繊細なギターが織りなすサウンドは、カンタベリーのナショナル・ヘルスやギルガメッシュに通じています。一方でCOSと同様ファンキーなリズム隊は彼らならではの個性。これは唯一作なのが惜しすぎますっ!
ここからは、時代を超えてカンタベリーの精神を受け継いだ世界の新鋭グループたちをご紹介。
まるで、ポスト・ロックとコンテンポラリー・ジャズとカンタベリー・ロックを融合させてしまったかのような芳醇なサウンドを鳴らす注目株がフランスに出現!NATIONAL HEALTHやベルギーのCOSがお好きであれば、一聴の価値ありますよ~。
このノルウェー新鋭、ポスト・ロック meets 初期キャラヴァン!?知的でシャープな演奏と70年代的な人懐っこいメロディを同居させるこのセンス、凄いです。
バルト三国として知られるエストニアに、まさかソフト・マシーンやハットフィールドのDNAを継ぐカンタベリーなグループが生まれるとは・・・!硬質さとリリシズム、それを包むエストニアならではの透明感。区分上は北欧とみなされることも多いエストニアですが、リリカルなパートではなるほど北欧のグループを思わせる「静」の表現力の高さを感じさせます。うーんこれは絶品!
そのPHLOXとも親交のあるエストニアのテクニカル・ジャズ・ロック・バンドによる、2000年のスタジオ/ライヴ音源を収録。まるでゴングとハットフィールドを融合させて、現代的なヘヴィネスを纏わせたようなサウンドは、もう並外れたカッコ良さ!
現代のイタリアで最も完成度の高いカンタベリー系サウンドを聴かせてくれるのが、このFONDERIA。ピーター・ガブリエルのスタジオREALWORLD STUDIOで録音された2010年の3rdアルバム。往年のカンタベリー・ロックを現代的なエッジの効いたサウンドで解釈したような緊張感みなぎるアンサンブルは、息をのむカッコよさ!80’sクリムゾンからの影響も感じさせますね。
ゴングばりの強度と緩急自在さで聴かせるジャズロックをベースに、カンタベリー風の芳醇なホーンセクションとスラップハッピーあたりが浮かぶ浮遊感あるメロディをミステリアスに歌う女性ヴォーカル。カリフォルニア発ジャズ・ロック・バンド、2ndもさすがの快作です!
なんと南米はアルゼンチンにもカンタベリーを想わせるジャズ・ロック・グループが登場!直接的な影響があるのかは定かではありませんが、たゆたうように優美なタッチのエレピや繊細かつ歌うように奏でられるエレキギターなどが描く夢想的なジャズ/フュージョン・アンサンブルは、GILGAMESHなどカンタベリーに通じるキラメキを伴った叙情美を堪能させてくれます。デビュー作にしてこのクオリティー、次作以降にも大いに期待がかかるバンドですね!
こちら、15年リリースの2nd『AFUERINO』も相変わらずの素晴らしい一枚!ギルガメッシュやナショナル・ヘルスあたりが好きなら間違いなく気にいるであろう堪らないサウンドですよ~☆
アルゼンチンのサックス奏者、エレピ奏者、ギターとリズム隊の5人組による2012年作。カンタベリー色、サムラばりの屈折感を混ぜ込んだカンタベリー/レコメンのファンは必聴の逸品!
エストニアのジャズ・ロック・グループ、2010年の4thアルバム。手数多くシャープでアグレッシヴなリズム隊、流麗なフェンダー・ローズ、たおやかに飛翔するサックス!リズム隊の硬質さとエレピや管楽器のしなやかさとのバランスが絶妙。カンタベリー・ミュージックの遺伝子を受け継ぐ正統派グループ!これは素晴らしい作品です。ジャズ・ロックのファンにはかなりオススメ!痺れますよ。
COSのメンバーだったKey奏者とベース奏者を中心に、WATERLOOやPAZOPやPLACEBOで活動していたフルート奏者、ギタリスト、ドラムにより結成されたベルギーの5人組ジャズ・ロック・バンド。77年の唯一作。爽やかに柔らかにたゆたうフルートを中心に、優美なエレピ、フィル・ミラー彷彿の繊細なギターが織りなすサウンドは、カンタベリーのナショナル・ヘルスやギルガメッシュに通じている印象。シャープでいてファンキーなグルーヴ感もあるリズム隊も特筆ものです。精緻かつダイナミズムもあるサウンドは、カンタベリー・ミュージックをはじめ、COSやPAZOPなどベルギー・ジャズ・ロックのファンは必聴でしょう。名品です。
カナダのジャズ・ロック系シンフォニック・ロックバンドの77年3rd。バンド・セクションにフルートのマイルドな響きを加えたテクニカル且つデリケートな味わいを持つジャズ・ロック作品となっており、技巧的なジャズ・ロックアンサンブルと、CAMELのようなマイルドで繊細な質感の狭間を行き来するファンタジックな音像を構築しているのがとても個性的です。変拍子に包まれたせわしない進行を聴かせながらユーモラスなメロディーやカンタベリー的な肌触りを演出するなど、その幻想的でかわいらしい中に内包されたヴァラエティーの多さには脱帽するしかありません。
2014年にデビューしたアルゼンチンはブエノス・アイレス出身のジャズ/フュージョン・ロック・グループで、ギター、ベース、キーボード、ドラムの4人組。2015年作の2nd。しっとりと艷やかでほのかな気品があって優美なエレピ、フィル・ミラーとキャメルのアンディ・ラティマーを足してニで割ったような、抑制されたトーンの精緻かつマイルドなギター、陰影を感じさせる流麗なベース、ふくよかなドラム。ギルガメッシュやナショナル・ヘルスあたりが好きなら間違いなく気にいるでしょう。これはカンタベリーのファンは必聴の名作です。
00年結成、日本のプログレッシヴ・ロック/ジャズ・ロック・グループ。11年作。伸びやかなサックスを主軸に据えた、カンタベリー×エスニック調のジャズ・ロック。叙情的なテーマを奏でるサックス、手数多く的確なドラム、ブンブン唸るベース、時に流麗に時に叩きつけるように弾かれるキーボードによる、ロック・ダイナミズム溢れるジャズ・ロックは、エストニアのPHLOXや日本のMACHINE & THE SYNERGETIC NUTSが好きな方に大推薦です。雄大な響きを湛えたジャンベ、煌びやかな鈴やカリンバの音色、自然音のSEなど、要所に配されたオーガニックなアクセントが、「エスノ」を飛び越してもはや「スピリチュアル」な感動すら喚起させる、ジャズ・ロック作としては稀有な作品でもあります。スティック・ベースやバリトン・ギターなど、ユニークな楽器使いも特徴的。『Thembi』など、スピリチュアル期のPharoah Sandersがカンタベリーの連中と地下でジャズ・ロックをやったらこんな音?などと想像してしまいました。
世界のチェンバー/アヴァン系の先鋭的なバンドを多く輩出しているAltrOckレーベルよりデビューした、カリフォルニア出身アヴァン・ジャズ・ロック・バンドによる待望の17年作2nd。前作『RAINBRO』では女性ヴォーカルを擁しカンタベリー・エッセンスをたっぷり含んだポップな音作りがたまらない個性派ジャズ・ロックを聴かせた彼らですが、本作でもその唯一無二のサウンドは健在です。全盛期ゴングばりの強度と緩急自在のしなやかさで聴かせるジャズ・ロックをベースに、カンタベリー風の芳醇かつ流麗なホーン・セクションとスラップ・ハッピーあたりを彷彿させる浮遊感あるメロディをちょっぴりミステリアスに歌う女性ヴォーカル。演奏自体は角の立った硬派なジャズ・ロック・テイストがあるのですが、一貫して軽やかなポップ・エッセンスが効いており、無骨な印象は一切与えないハイセンスなサウンドメイクが相変わらず素晴らしすぎます。前作を気に入った方は勿論、カンタベリー・ロック・ファン、ゴング・ファン、スラップ・ハッピーのファンも「これはっ!」となること間違い無しの一枚に仕上がっています。
フランスのジャズ・ロック・グループ、70年作の1st。手数多く軽快なドラムと動き回るベースによる疾走感溢れるリズム隊を土台に、ギターがテンションいっぱいにカッティングを刻み、フルートやサックスがエネルギッシュに炸裂!シリアスなだけでなく、ユーモアも盛り込むなど、ソフト・マシーンやヘンリー・カウなどカンタベリー勢からの影響大。まだゴングが1stをリリースしていない70年ということを考えると、恐るべしな作品。北欧のサムラに通ずる痛快さもあり。カンタベリーのファンは必聴の名作です!
00年結成、サックス奏者、スティックも操るベーシストを擁する、ギターレスの4人組ジャパニーズ・プログレ・バンド。10年ぶりのリリースとなる2021年作4th。スピーディで緊張感あるテーマからメロディアスで叙情的なフレーズまで演奏をリードするサックスを軸に、ジャジーでしなやかなリズム・セクション、気品と色彩を添えるリリカルなピアノらが一糸乱れずに紡ぐ芳醇なジャズ・ロックがただただ絶品!カンタベリー・ロックへの憧憬が滲む淡い叙情性と強靭なテクニックが同居するサウンドは、HATFIELD & THE NORTHやHENRY COW、そしてエストニアのPHLOXがお好きな方なら「これはっ!」と唸っちゃうはず。トランペットも交えて管楽器が重厚に畳みかけるパートではKING CRIMSONも頭をよぎりますが、次の瞬間には遊び心に富んだユーモラスな表情にクルっと切り替わりCARAVANみたいなポップさを見せる、その変幻自在さが極めて魅力的です。スティックの蠢くような音運びも独特の妖しさを醸し出していて聴き所。カンタベリー・タッチのジャズ・ロックとして間違いなくワールドクラスの一品!
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