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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第20回 NUCLEUS TORN / Neon Light Eternal (Switzerland / 2015)

本連載では「ミュージシャンの視点からプログレッシブ・ロック作品を捉える」ことに重点を置き、フランスのプログレッシブ・ロックレーベルMusea Recordsからシンフォニック・ロックアルバムでデビューを果たしたnetherland dwarfが、同じ時代を生きる世界中の素晴らしいプログレッシブ・ロックアーティストたちの作品を、幅広くご紹介します。「ミュージシャンの視点」とは言っても、各コラムは平易な文章で構成されていますので、楽器が弾けない、専門用語は分からないという場合でも、心配せずにご覧下さい。

第20回 NUCLEUS TORN / Neon Light Eternal (Switzerland / 2015)

特定の音楽スタイルを「そのジャンルの音楽である」と聴き手に認識させるためには、そのスタイルにおける様々な慣例に沿う必要があります。プログレッシブ・ロックにおいては、アルバムの骨格となるコンセプト、壮大なストーリーを描く長尺楽曲、超絶技巧を誇示するための変拍子といったアプローチが代表的なものですが、1960年代後半から70年代の名グループたちが表現の「手段」として用いていた上記の手法が「目的」として利用された瞬間に、プログレッシブ・ロックはスタイル・ミュージック化と引き換えに本来の意味を形骸化させたのでしょう。そんなプログレッシブ・ロックの慣例は使用される機材にまで及びますが、その象徴的な楽器のひとつがメロトロン(Mellotron)です。鍵盤を再生スイッチとして各音階に対応した磁気テープ音源を発音させるという構造は「サンプラーの元祖」と評され、キーボーディストが扱う音色の幅を飛躍的に広げました。有名モデルは64年発表の「Mark II」や70年発表の「M400S」であり、前者はブリティッシュ・プログレッシブ・ロックを代表するグループであるKING CRIMSONの69年作『In The Court Of The Crimson King』、あるいは同じく草分け的な存在であるTHE MOODY BLUESの67年作『Days Of Future Passed』などで、そして後者は特徴的な白いボディーを持ったモデルとして一世を風靡し、数多くのミュージシャンに愛用されてきました。特にTHE MOODY BLUESのキーボーディストMike Pinderは、バンド加入以前にメロトロンの出荷前点検作業に従事していた経験から、その魅力を最大限に引き出すプレイを数多く残したことで知られており、THE BEATLESはMike Pinderからの紹介によって67年の名曲「Strawberry Fields Forever」に「Mark II」のフルート音色を採用しました。

上記のように、様々なアーティストたちがメロトロン・サウンドを自らの楽曲に取り入れてきましたが、特にプログレッシブ・ロックでは「メロトロンの名盤」カテゴリーが存在するほど高い人気を誇り、ミュージシャンやファンから特別な視線が注がれてきました。例えば「トリプル・メロトロン」と呼ばれるブリティッシュ・フォーク・グループSPRINGを筆頭に、ツイン・キーボード体制による「ダブル・メロトロン」のジャーマン・シンフォニック・ロック・グループEPIDAURUSなど「使用台数」が話題に上るケースや、アルバムの中に1曲だけ収録されたメロトロン使用楽曲が注目されたジャーマン・ロック・グループEPITAPHのようなケースは、まさにプログレッシブ・ロックにおける「メロトロン偏愛」を象徴するエピソードでしょう。メロトロンに対する極端な愛着は、例えば92年、イタリアン・シンフォニック・ロック・グループCALLIOPEのデビュー・アルバムに「Mellotronmania」という楽曲が収録されたり、新世紀以降ではオランダのシンフォニック・ロック・グループTRIONのグループ名の由来(トリオ・メロトロンの略)となるなどミュージシャン側にも大きな影響を与えています。また、90年代前半にスウェーデンのANEKDOTENやANGLAGARDがプログレッシブ・ロック・シーンを復興させた際に、メロトロンの咆哮がプログレッシブ・ロックの象徴として機能したことは新世代グループたちに多大なる影響を残しました。

さて、デジタル・シンセサイザーなどと比較すると、持ち運びに不向きな本体の大きさや、テープ音源であるため発音時間に制限(8秒)があることなどデメリットも挙げられるメロトロンですが、現在でも往年のテープ・スタイル、そしてデジタル制御によるメロトロン・ブランドが流通しているほか、オール・イン・ワン・タイプのシンセサイザーにはほとんどの機種に高品位なモデリング音色がプリセットされ、それぞれ現役選手として音楽シーンの中で個性的な音色を響かせています。そんなメロトロン・サウンドに溢れた作品の中から、今回はスイスのNUCLEUS TORNを取り上げます。マルチ・プレイヤーFredy Schnyderによるソロ・プロジェクトとして97年に立ち上げられたNUCLEUS TORNは、数枚のデモ・レコーディングを経て2006年にチェロ奏者、ヴァイオリン奏者、フルート奏者を含む7人体制で『Nihil』をリリースし、本格デビューを飾りました。彼らの音楽性は、へヴィー・メタルからの影響を色濃く持ちながら、ダルシマーやブズーキなどのトラディショナルな楽器類を絶妙なコントラストで共存させたへヴィー・プログレッシブ・ロックとなっています。

試聴 Click!

20分を超える大曲を中心とした3曲構成で2015年に発表された6作目となる『Neon Light Eternal』は、リーダーのFredy Schnyderとドラマー、そして女性ヴォーカリストを中心に、ヴァイオリン奏者やフルート奏者らをサポート・メンバーに配して製作が行われており、前述のANEKDOTENやANGLAGARDが提示した北欧プログレッシブ・ロックとの共通点を多く見出すことが出来る、悲哀に満ちた音世界を構築しています。特に、極寒の大地を想起させる冷ややかな空気感を持ったメロトロン・サウンドや、スウェーデンのPAATOS、あるいはノルウェーのWHITE WILLOWを彷彿とさせる女性ヴォーカリストの物憂げな歌声などは北欧勢に通じるものがあるでしょう。へヴィー・メタルの傾向を持ったグループは必ずしも全てのプログレッシブ・ロック・ファンに受け入れられるわけではありませんが、鋭角的なギター・ワークやチェンバロによるゴシックな色合いなどが、トラディショナル・フォークからの影響や多種の民族楽器類と混ぜ合わされ、楽曲にメランコリックな肌触りが加味されていることが彼らの大きな魅力になっています。

最先端テクノロジーによってサンプリングされた音色と比較すると、60年代の技術によって作られたメロトロンの音色は当然ながら高音質とは言えないものです。しかし、その個性豊かな響きは現在に至るまで多くのミュージシャンを魅了し、数々の名盤に収録されてきました。そして、その音色が磁気テープに刻み込まれた時代には生まれていなかった世代のミュージシャンたちにまで、創作におけるインスピレーションを与え続けているのです。


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netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』 第16回 SENSE / Going Home (Canada / 2007)

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