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「そしてロックで泣け!」第十三回 トリリオンの「ラヴ・ミー・エニイタイム」

僕は全然知らなかったんだけど、フラッシュモブ・プロポーズってのが話題になっているらしい。ユー・チューブに数多く動画がアップされているので見てもらうと話は早いが、簡単にいえば、彼氏が彼女にサプライズでプロポーズをするというもの。最初はやり過ぎなんじゃないの?と思ったけど、微笑ましくてツイ見てしまう。

プロポーズというのは、人生においてかなりドラマチックな瞬間だ。「お前が好きだ!」っていう気持ちだけで告白するのとは違うからね。そこには大きな責任が伴い、不退転の決意が問われるわけで、その告白にはグッと重さが増す。

ということで、今回はプロポーズをテーマにした泣ける曲、トリリオンのセカンド・アルバム『クリアー・アプローチ』収録曲「ラヴ・ミー・エニイタイム」を紹介したい。

トリリオンは、シカゴで結成されたハード・ロック・バンド。78年のデビュー作『トリリオン(氷牙)』は、メジャーなアルバムではないけど、ジャケットを見たことがあるという人は多いはず。

『トリリオン』には後にトトへ参加するファーギー・フレデリクセン(デニス・フレデリクセン)が在籍していて、彼のハスキーだけど天に昇るような伸びやかで力強い声、ハードなギターとキラキラしたキーボードが印象的なアルバムだ。カンサスやジャーニーなどのアメリカン・プログレ・ハードを好む人たちからは、隠れ名盤的な扱いを受けている。

『トリリオン』は、タワー・レコードとソニー・ミュージックが手を組み、独自のスペシャルセレクションで紙ジャケCD化をするという企画の第2弾に選ばれ、2015年9月に何度目かの国内再発が実現している。あれ? 再発は『トリリオン』だけ? トリリオンにはセカンド・アルバム『クリアー・アプローチ』もあるんだけど! そちらも隠れた名盤なんだけど! 一般的に、『クリアー・アプローチ』の知名度が低いのは認めるけど、今回の再発ラインナップからオミットされたのは……うーん残念。

トリリオンの中心的存在は、ギターのフランク・バーバレイスとキーボードのパトリック・レオナルド。トリリオンの曲は、この2人が中心となって作られている。フランク・バーバレイスは、トリリオン以降目立った活動をしていないが、パトリック・レオナルドは後にマドンナと共作し、彼女の作品のプロデュースも務めるなど、アメリカン音楽シーンで成功をおさめている。トリリオンといえば、「トトのファーギー・フレデリクセンが在籍していたバンド」と思われているが、実際はパトリックとフランクのバンドなわけです。

『クリアー・アプローチ』は前作に比べるとマイルドな作風で、そこがハード・ロック・ファンから評価されていないのかもしれないが、音楽性の変化は、シンガーがハード・ロック・タイプのファーギーから、メロウなメロディを甘く歌えるトムへ交代したからといえる。トムの声質にあわせて、音楽性をAORへ接近させたに違いない。もしくはその逆で、音楽性の変化にあわせてトムを起用したか?

いずれにせよ、引き締まったメロディとハードなタッチでオープニングを飾る「メイク・タイム・フォー・ラヴ」から、ラストの「ウィッシング・アイ・ニュウ・イット・オール」まで、AORテイストを強めた楽曲とナイーヴなトム・グリフィンのヴォーカルが絶妙にマッチした良曲ぞろい。トトのファンならば、『トリリオン』よりも『クリアー・アプローチ』の方にビビッと来ると思うんだけどいかがでしょう?

そのなかでも、アルバムの2曲目に収録された「ラヴ・ミー・エニイタイム」は、ストレートに泣けるバラードとしてキラリ光っている。同曲は次のように歌い出す。

「人々はボーナスをもらい、職も安定している。でも僕たちはお互いだけを頼りにしている。僕たちが時の番人なんだ。君の友達はみんな、置いていかれることはないと思っている。僕たちにはその保証がないんだってことに、いつも驚かされる」

いきなりの、「オレ、生活不安定」宣言。情けないだろ、そんな告白は?!でも、身につまされるなぁ。今の20代~40代も、多くがこの曲の主人公みたいなんじゃないかと思うんだけど、どうだろう?

そして、サビのフレーズは次のようになっている。
「君はいつでも僕を呼ぶことができたんだ、でも僕が逃げていたんだね。いつでも僕を愛しておくれ」

今までの自分を反省して、彼女に自分を愛してほしいと告白。曲が進むごとに、気持ちは高ぶっていく。それを表すエモーショナルなギター・ソロがまた泣きまくっていて、胸に迫るほど切ない。そして、クライマックスとなる最後の歌メロへ。

「ともに過ごし、一緒に進んでいこう。信頼という財産を築き上げよう。他のみんなは満足いく生活のために確実な道を歩もうとするけど、僕たちはバカげた考えも織りまぜながら行こう。いつも君のことが心の中にあるんだ!」

いい話じゃないか! よくぞ決意した! 結婚するかどうか、そんな時には色々迷うわけでね。「この経済力で生活できるだろうか?」「いいかげんな性格だけど、彼女を幸せにできるだろうか?」「オレは結果を先延ばしにして逃げているだけだろうか?」とかね。トム・グリフィンのナイーヴなヴォーカルは、不安を抱えながらも、彼女と人生を歩んでいくことに決めてプロポーズに臨む、その男の繊細な心の揺れを見事に表現している。

悲壮な決意ともいえる思いを胸にプロポーズした経験のある人なら、トリリオン「ラヴ・ミー・エニイタイム」は涙無くして聴けない曲だろう。心に染みまくる名曲です。

ちなみに、トリリオンは、2010年にパトリック・レオナルドとフランク・バーバレイスを中心に再始動。トム・グリフィンも合流して、少しずつ楽曲を制作中とのこと。現在、彼らのHP(http://www.trillion-music.us)で5曲の新曲を聴くことができる。

それでは、来月もロックで泣け!

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