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「音楽歳時記」第三回: 4月 花まつりとQUINTESSENCE 文・深民淳

4月と言えば、4月8日の花まつりが頭に浮かぶ。釈尊(釈迦)の生誕を記念する日なんですが、ここ日本ではクリスマスのあの妙な盛り上がりに比べ、なんだかとてもマイナーな感じがしますね。

釈迦族の王とその妻、磨訶摩耶の子として生まれた釈尊。磨訶摩耶が35歳の時、天から降りてきた6つの牙を持つ白象が右腋から体内に入る夢を見て、そのことを夢占師に訪ねると、象は聖獣であり、その夢は吉夢であり、世継ぎ誕生の兆しと告げられ、まもなく磨訶摩耶は懐妊。出産のため故郷に帰る道すがら休憩で立ち寄ったルンビニ園で無憂樹(阿輸迦樹)の花を手折ろうとしたとき右腋から釈尊が生まれ出たとされています。釈尊は生まれ出た直後に周囲を見渡し7歩進むと天を指さし「天上天下唯我独尊」と言い、その時天から天竜が現れ、甘い露を濯いだといわれています。

花まつりはこの釈尊生誕のエピソードを再現したまつりで花御堂にまつられた誕生仏と呼ばれる右手で天を指さす仏像に甘茶(ウリ科のアマチャズル、ユキノシタ科のアマチャを煎じた飲料)をかけるというものです。

この花まつり、釈尊で連想するのがイギリスのQUINTESSENCEがまず頭に浮かびます。ラーガ・ロック、サイケデリック系とかでくくられていることが多く、あの釈迦が座っているイラストのインパクトも手伝い、60年代末から70年代前半のブリティッシュ・ロック好きでもちょっと胡散臭い感じが、と敬遠されがちですが、今月はまずこれをお薦めします。

アートワークのインパクトが強烈な1st『In Blissful Company』(69年)に興味が行きがちですが、最初に聴くなら2nd『Quintessence』(70年)、個人的には3rd『Dive Deep』(71年)を薦めます。ラーガ・ロックというとシタールがビヨ〜ン、タブラがパコ・カポみたいなイメージが強く、好き嫌いがはっきり出てしまいがちですが、QUINTESSENCEのサウンドは、サイケデリック通過型骨太フォーク・ロック(フルート入り)がシュート回転してロック・フィールドに着地。オプションでトランスとインド・テイストを加味。基本、根幹をなす部分はロックであり、決してインド・ブームに乗った際物ではなく、例えば、THE DOORSのサウンドではなく、バンドが醸し出す沈殿物が多そうなダークなイメージなんかも想起させる部分があり、かなり突っ込んで楽しめるサウンドなのですが、日本では今ひとつの認知度で今に至るといった感じでしょうか?

当時、このバンドはロンドンのポートベロー、ノッティングヒル・ゲイト界隈を本拠地としていたらしく、同じエリアから出たHAWKWINDのトランス感にも通じるものも感じます。(ただこちらはHAWKSから金属要素をかなり削ぎ落とし、電力消費の面でも省エネ型ですが・・・)先にも書いたようにジャケ買いするとほとんどの人は1stに行ってしまうのですが、この時点での根底どんよりサウンドは多分に排他的であり、未整理の部分も多いのですが、これが2ndになると共有型どんよりに方向転換、ツバ吐き要素無しの浮遊感満載のフルートが活躍するサウンドに変化。曲の出来も良く、先入観排して聴いていただけると、かなり良い体験ができるかと。3rdは2ndのサウンドを推敲しコンパクトにまとめ上げたようなスタイルで、ポップ化とか言われていますが、筆者はこの推敲作業に非凡なものを感じ、作品としてはこれが一番好きですね。

この初期3作、オリジナルはIslandから出ていたのですが、3rdでIslandを離れRCAに移籍。4th『Self』(72年)は片面スタジオ、片面ライヴ、『Indweller』(72年)を発表します。印象に残るフルート奏者のラジャ・ラムは’90年代以降トランス、ゴア・サイケデリック・トランス・シーンで活躍しその筋では知名度の高いSHPONGLEでの活動が知られています。

インドに飛んじゃったので、続きましてはSANTANA。別に筆者が書く必要もない大御所です。彼もインド人のヨーガ指導者・宗教家のシュリ・チンモイに深く傾倒し70年代半ばは精神世界の探求に向かいました。カルロス・サンタナという人は自分の信じるものに対しては、ある種盲信的献身を示すストレートな人間性を有する人なのでしょう。初期3枚の獣性を帯びたやたらと密度の濃いラテン・ロックの黒のイメージからシュリ・チンモイとの出会いで正反対の白の世界へと転じた『Caravanserai』、1973年の初来日公演のライヴ・アルバム『Lotus』へ至る劇的な変化。ここで紹介する『Welcome』は初来日と前後して発表された作品です。『Caravanserai』、『Lotus』と比べると評価は一段低いように思います。実際、筆者もリアルタイムでLP買いましたが、当時はあんまり良いと思いませんでしたね。だけど、今、聴いてみると良いんだ、これが。カルロス・サンタナのこの時の精神状態が見事に反映された音楽。シュリ・チンモイの教えに触れ、精神的に満たされた言うなれば「凪」の状態がそのまま音楽になっているわけです。「凪」の音楽ですから、『Caravanserai』のような強烈なドラマ性は皆無だし、自然に始まり、いつの間にか終わっています。どの楽器も主張するわけではなく全編「つつましさ」が貫き通されています。だけど、そのつつましさの中で、どの楽器も良い音を鳴らすわけです。すべての楽器が歌う印象ですね。例えば、フェンダー・ローズ・ピアノの高音はどこかこもっていて、そして、わずかに音割れするとか、頭で理解していても実際はそうそう聴けるものではないのだけれど、このアルバムにはしっかりとその音が存在するわけです。また強く叩いたり、振ったりしなくともパーカッション群は明るい躍動感を描き出すことができるなど、当たり前のことを次々と提示されることは新鮮な体験なんですね。まさにタイトル通り、すべての楽器(ヴォーカルも含め)が聴く者を迎え入れる、そんなポジティヴな魅力に溢れた作品です。

仏陀に話を戻すと、1974年に中野サンプラザで観たCAT STEVENSのBamboozle Tour。この時の新譜が『Buddha & Chocolate Box』。この人も日本ではIsland移籍後(アメリカはA&M)の3作、『Mona Bone Jakon』、『Tea For The Tillerman』、『Tease & The Firecat』に人気が集中しますが、4作目の『Catch Bull At Four』以降、精神世界探求に大きくシフトしていきます。『Catch Bull At Four』はそのタイトル通り、禅の悟りに至る過程を図説した「十牛図」の4枚目「得牛」がアートワークに使われています。当時は欧米でも鈴木大拙の本が静かなブームを呼んだ時期でした。一応、「Sitting」がシングル・ヒットしていますが、アルバム・オリエンティッドな制作スタイルにシフトし、続く『Foreigner』は当時のLP片面全部を使った「Foreigner Suite」が話題となりましたが、一方では難解という批判もあったことを思い出します。筆者などはこの「Foreigner Suite」ほとんどプログレにしか聞こえないので今でも愛聴しています。乱暴なこと言ってしまえば、SUPERTRAMPの『Crime Of Century』から『Even In A Quietest Moments』あたりが好きな方には結構いけると思います。元々、アコースティックなサウンドの中にもヒット曲「Wild World」、「Peace Train」に聴かれるように、そのちょっと塩辛い声を活かしたファンキーなタッチの曲があったのですが、『Foreigner』ではアルバム全体ファンキーなグルーヴが満載のリズミカルなアルバムだったわけですが、一方、当時の批判にあるようにその大きな持ち味だったメロディラインの秀逸さは一歩後退した印象も確かにありました。(まぁ、アルバム全体の躍動感は素晴らしいのですが・・・)。『Buddha & Chocolate Box』はその点を軌道修正したわけではないのでしょうが、ファンキー・グルーヴと印象的なメロディラインの両立を図った意欲的な作品となりました。Island初期3作に入っていても違和感のない秀逸なメロディを持つアコースティック・パートから始まり、不思議な旋律のシンセサイザーのメロディをブリッジにファンキーな曲に展開していく「Sun/C79」、シングル・カットされヒットした「Oh Very Young」、来日公演でも演奏された美しいメロディとダイナミックな展開を兼ね備えた「King Of Trees」、アカペラ・コーラス・パートからブリティッシュ・ロック好きには堪らないメロディが弾ける「Home In The Sky」など聴きどころの多い作品となっています。この当時はキーボードをHANSON等で活躍したジーン・ラッセルがアルバム、ツアー共に担当しており、ファンクもメロディ重視もしっかりこなす彼の存在も大きかったと思います。


ちなみに、このBamboozle Tourはパッケージで当時、話題になったLINDA LEWISも帯同しており、ショウ構成はまずCAT STEVENSの第一部、LINDA LEWIS、CAT STEVENS第二部というスタイルでした。また、LINDA LEWISバンドのギタリストとして元BLOSSOM TOES、FAMILYのジム・クリーガンが帯同。Bamboozle World Tourの二つ折りのパンフレットが全員に配られていたことを覚えています。この中野サンプラザのショウはライヴ・レコーディングされ、ライヴ・アルバム『Saturnight』として発売されましたが、記憶が正しければこれはLPのみでその後正規ではCD化されていないと思います。

文・深民淳


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