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「そしてロックで泣け!」第六回 インクレディブル・ストリング・バンド「ザ・サークル・イズ・アンブロークン」

3月は別れの季節。学校や職場などで、別れを経験するという人がいることだろう。でも、それが今生の別れになるかどうかは、その人の意思に多く関係しているように思う。

今は、メールのアドレスだけは知っているとか、ラインのグループには入っているとか、薄い関係でも繋がり続けるというのが楽にできるしね。年賀状だけの付きあいとか、ネットでのやりとりはあるけど会ったことがないとかも、個人的には「それでもいいやん」と思う。繋がっていたいという意思があるからだし、それがある限り、繋がりは切れないはず。と書きつつ、ラインとか良く分からないアナログ人間だけど。

さて、そんな「人の繋がりは切れることがない」というテーマの泣ける曲として、イギリスのインクレディブル・ストリング・バンド(以降ISB)による「ザ・サークル・イズ・アンブロークン」を紹介したい。

このタイトルを耳にして、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドの「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」を思い出す人もいるかも。そちらはカーター・ファミリーのカヴァー。もっと辿れば、1907年に書かれた讃美歌がオリジナル。「永遠の絆」という邦題でも有名な曲で、聴いたことがあるという人も多いはず。

では、ISBの「サークル・イズ・アンブロークン」はというと、こちらは彼らのオリジナル曲。でもって、一般的には、ほとんど知られていない。

ISBが結成されたのは、1960代中頃のスコットランド。以降1974年まで9年間活動し、12枚のアルバムを残した。メンバー編成は時々で変わるが、中心となっているのはマイク・ヘロンとロビン・ウィリアムソンの二人。二人ともに曲を書くけど、とにかく普通の曲じゃない。ゆえにアシッド・フォークなどと呼ばれるが、その音楽性を一言で表すなら、「ザ・自由」。

曲が展開しっぱなしで15分を越えたり、ギリシャ神話に出てくるミノタウロスになって「ムームー」鳴いてみたり、かと思うとキュートなフォーク・ポップ曲があったり、マイクとロビンの恋人がメンバーになったり、彼女たちも含めてヘロヘロの声で歌ったり、多種多様な楽器がピーヒャラ鳴っていたり……あまりに個性的。

音楽性も讃美歌やブルース、インドからケルトまでなんでもござれ。後に発表された『BBCラジオ1 ライヴ・イン・コンサート』(1992年)に、「ウィロウ・パターン」というアルバム未収録曲が入っていたが、そこでは韓国民謡「トラジ」のメロディも引用されていた。

ライヴでは詩の朗読やダンス、演劇ショーまで盛り込む。その究極の作品が2枚組の『U』(1970年)だ。音程が少しぐらい外れてようが、楽器がスットンキョウな音を鳴らそうが平気。ほんと、「ザ・自由」なのだ。普通に洋楽を聴いてきた人には「何やコレ?」かもしれないけど、そのユルイ、だけどドロッと濃厚な魅力にハマったら、かなり気持ちがいい。妙な中毒性がある。まあ、唯一無二ということは確か。

さて、今回紹介したいISBの「ザ・サークル・イズ・アンブロークン」は、『ザ・ビッグ・ヒュージ』(1967年)のラストを飾るナンバー。ロビン・ウィリアムソンの作だ。

カーター・ファミリーの方は、「母親が死んで悲しいけど、いつか家族がまたひとつになれる日が来るよね」というキリスト教的なメッセージがストレートに託されている。一方ISBはというと、そこは鬼才のロビンだからして、なかなか一筋縄ではいかない。一番目の歌詞を意訳してみたい。

季節は変わりゆく、冷たい血が降る間に
年月を越えて、私は待っている
今、地平線を越えて、あなたが旅立ってくるのが見える
あらゆる時間を越えて、兄弟たちがここへと集う
さあ、未来の船を作ろうじゃないか
古の方法に倣い、遠くまで旅立っていこう
さあ、永遠の島へ漕ぎだそう
夏の星たちが去りゆく海を抜けて

僕の英語力の問題もあるだろうけど、サラッとは理解できない。でもそれでもいい。「絆は切れることがない」ということがイメージ出来れば。

それに、詞への理解力の薄さを気にさせないほど、メロディが雄弁だから大丈夫。幽玄なるメロディの調べが、胸にグッとくる。自在に音の高低をユラユラ行き交うロビン・ウィリアムソンの節回し、天上界へと誘ってくれるようなティン・ホイッスルとハープの響きが、あまりにも神々しい。この曲の神聖なる響きは、今つながっている人との縁の尊さも感じさせてくれる。結婚式とかにどうかな?濃すぎる?

先に挙げた『BBCラジオ1 ライヴ・イン・コンサート』には、同曲のライヴ音源が収録されている。現在は廃盤のようだが、そちらではロビンが、まさに神がかり的な絶唱で歌っているので、機会があれば、ぜひ聴いてみてほしい。

それでは来月も、ロックで泣け!

The Circle Is Unbroken

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    英国アシッド・フォークの代表格、68年5th

    ウィリアムソン、ヘロン、シンプソンに加え、リコリス・マッケンジーを迎え発表された5作目。68年作。さまざまな民族楽器の特性を生かしつつ、ひとつひとつの楽曲が精巧な透かし細工のごとく繊細に紡がれた名作。

  • INCREDIBLE STRING BAND / LIQUID ACROBAT AS REGARDS THE AIR

    ウッドストック・フェスにも出演、自由度の高い奔放なスタイルが特徴的な英アシッド・フォーク・バンド、71年作9th

    アイランド移籍第一弾、通算では9作目にあたるアルバム。彼等が1stから一貫して持つ「けだるさ」はそのままに、エレクトリック・ギター、ピアノを全面に押し出した多彩なサウンドが絶品。やはり一筋縄では行かないバンドです。

  • INCREDIBLE STRING BAND / EARTHSPAN

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  • INCREDIBLE STRING BAND / NO RUINOUS FEUD

    多彩なアプローチを特色とする英アシッド・フォーク代表格グループ、73年作

  • INCREDIBLE STRING BAND / LIVE IN CONCERT

    ウッドストック・フェスにも出演した英アシッド・フォークの雄、71年〜72年のBBC音源

  • INCREDIBLE STRING BAND / CHELSEA SESSIONS 1967

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