2014年7月9日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
今日の「MEET THE SONGS」は、日本が世界に誇る一枚、フード・ブレインの70年唯一作『晩餐』をピックアップ。
フード・ブレインと言えば、日本のジミ・ヘンドリックスと評されたギタリスト陳信輝と、ザ・フーのベースにも負けない轟音ですべてをなぎ倒さんばかりのベーシスト、ルイズルイス加部を中心に、日本が誇るミュージシャンが集い、英米ロックに負けじと結成されたジャパニーズ・ロックの名グループ。
まずは、日本のロックの歴史における『晩餐』の位置づけを把握するべく、1970年に至る日本のロックの状況とともに活動までのメンバーの動きを整理いたしましょう。
60年代の日本の音楽シーンの象徴と言えば、やはりグループ・サウンズ(GS)ですね。
66年のビートルズ来日以降、GS旋風が日本の音楽シーンに吹き荒れますが、芸能プロダクション主導の商業主義の中で骨抜きとなっていき、68年頃には勢いを失い衰退。69年頃からは、サイケデリック・ムーヴメントやウッドストック・フェスなど本場英米のシーンに呼応し、既成の音楽ビジネスから脱却した「カウンター・カルチャー」のロック・ミュージックを目指すバンドがGS旋風の内外から生まれてきます。
そうした新たなロック・ミュージック=「ニュー・ロック」の胎動に重要な役割を果たした街、英国で言えばロンドン、米国で言えばサンフランシスコにあたると言えるのが米軍基地のある横浜。
駐留米軍人向けのラジオ放送FENを通して本場のロックをほぼリアルタイムで聴き、米軍基地でのライヴでアメリカ人を相手に鍛え上げられたハマのミュージシャンたちは、GS旋風の中でもビートルズ直系のポップで甘いビート・サウンドには目もくれず、ブルースやソウルに根ざした骨太なガレージ/ブルース・ロックを鳴らしました。
そうした横浜のシーンから飛び出したGS時代の2大バンドが、ゴールデン・カップスとパワーハウス。
GS旋風も下火となった60年代末には、クリームやジミ・ヘンドリックスやポール・バターフィールド・ブルース・バンドらを下地にした、来るべき70年代の「ニュー・ロック」を予言したサウンドを鳴らします。
それぞれのバンドの顔と言えるミュージシャンが、60年代半ばにはヤードバーズなどをレパートリーとするバンド、ミッドナイト・エクスプレス・ブルース・バンドで共に活動もしていたルイズルイス加部こと加部正義(ベース from ゴールデン・カップス)と陳信輝(ギター from パワーハウス)。
この2人が再合流し、日本で大ヒットしていたアル・クーパーらの『スーパー・セッション』にも刺激を受ける中、エイプリル・フールのキーボード柳田ヒロと元ジャックスのドラマー角田ヒロとの4人で69年に結成された日本版スーパー・グループがフード・ブレイン!
とにかくオープニング・ナンバーから、各メンバーによるエッジの立った音が火花を散らすエネルギッシュなアンサンブルに痺れまくり!
ささくれ立ったトーンで一心不乱に弾きまくる陳信輝のギター、すべてをなぎ倒すような圧倒的な音圧とスピード感で激しくランニングする加部正義のベース、けたたましくワイルド&グルーヴィーにうねりを上げる柳田ヒロのオルガン、そして、手数ビシバシ、熱気ほとばしりまくりで笑っちゃうぐらいにカッコいい角田ヒロのドラム。
ディープ・パープルのスピード感、レッド・ツェッペリンの重量感と切れ味、ブラック・サバスのアンダーグラウンド臭とがぶつかりあったようなスケールの大きなヘヴィ・ロックにただただ圧倒されます。
それにしても、ブギから一転、突如としてサバスばりの引きずるようなヘヴィ・ロックへと切り替わる瞬間のカッコ良さときたら!
そこから、ギアを3段ぐらいあげてスピードを増していきますが、加部正義のベースの何たるカッコよさ。ザ・フーのジョン・エントウィッスルやイエスのクリス・スクワイアに一歩も引いてませんよね。凄まじいランニング・ベース!
サウンドの振り幅も凄くって、「穴のあいたソーセージ」では、15分に渡って無調のフリーキーなインプロヴィゼーションを展開。
即功音楽集団「タージマハル旅行団」の木村道弘がバス・クラリネットでゲスト参加し、ヘンリー・カウの1stやキング・クリムゾン『太陽と戦慄』に3年も先がけた、アヴァンギャルドなチェンバー・ロックを繰り広げています。
いやはや恐るべしなバンドです。
大手芸能プロダクション主導のGS旋風によりロック不毛の地となった日本の音楽シーンにおいて、英米のロックに負けない気鋭のロック・サウンドを指向し、1970年代の日本発ロック=「ニュー・ロック」の幕をいよいよ開け放った日本のロック金字塔の一つ。
我ら日本人がこれを真っ先に誇りとしないでどうする!?
再発ラッシュのラリーズ作品群の中でも、特に謎多き一枚がこちら。タイトル、ジャケット、収録曲ともに、深い意味があるようで、ないようで…?
LES RALLIZES DENUDES/FLIGHTLESS BIRD (YODO-GO-A-GO-GO)
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