2014年4月25日 | カテゴリー:MEET THE SONGS,世界のロック探求ナビ
タグ: ロック&ポップス
今日の「MEET THE SONGS」は、AQUILAの70年唯一作『AQUILA』をピックアップいたしましょう。
AQUILAは、ウェールズ出身で、BLONDE ON BLONDEのギタリストRalph Denyerが、サイケデリックな色合いを強めていくバンドの音楽性に反発して脱退し、R&Bやジャズに根ざしたプログレッシヴなサウンドを指向して70年に結成したバンド。
NIRVANAのPatrick Campbell-Lyonsのプロデュースで録音され、70年にメジャーのRCAよりリリースされた唯一作が『AQUILA』です。
リリース当時はまったく売れずに、レコードもバーゲンで売りさばかれたようですが、もし、今の時代に、どこかの町のレコード屋の片隅でこれを見つけ、情報を知らずに聴いたとしら、間違いなく出てくる音に腰を抜かすことでしょう。
レコードの溝にくっきりと刻まれた、70年当時のミュージシャンの音楽的野心とシーンの熱気。音とともに、70年のブリティッシュ・ロック・シーンの空気がまぎれもなくつまっています。
それでは、注目の曲をピックアップしてまいりましょう。
ボコスカと手数多く逞しいドラミングと動きまくるベースによるドライヴ感いっぱいのリズム隊を土台に、左チャンネルにサックス、右チャンネルにオルガンを配し、熱気むんむんに畳み掛けるアンサンブルは、ブラッド・スウェット&ティアーズやシカゴなど米ブラス・ロック勢への英国からの確かな回答。
ノリの良いアコギのカッティング、スモーキー&ソウルフルなVoもクール!
70年と言えば、
・トラフィック『ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』
・アフィニティ『アフィニティ』
・キーフ・ハートレイ・バンド『タイム・イズ・ニア』
がリリースされていますが、それと同傾向にあるサウンドと言えるでしょう。
クリス・スペディングを彷彿させるソリッド&メロウなエレキのアルペジオ、グワンと鳴るハモンド・オルガン、中央で荒々しくむせぶサックス。
初期ニュークリアスに通じる英国的な陰影、トラフィックに通じる土臭さとR&Bテイスト、そして、後期ビートルズから通じるフックに富んだ叙情的なメロディがあわさった、ブリティッシュらしい渋みとコクがたまりません。
ビートルズが『アビー・ロード』で解散せず、70年にも活動を続けていたら、こんなサウンドを鳴らしていたかもしれませんね。
そして、結成から1年を経ずにこれだけのスケールの大きな曲が作れるのか、と驚いてしまうのが、アルバムB面すべてを使った組曲「Aquila Suite」。
フルートによる幻想のパートから一転、けたたましく前のめりに弾きまくるハモンドとびっくりなほどに弾きまくるアコギによるエネルギッシュなオルガン・ロックへと突入!
エモーショナルなヴォーカルも出色で、スティーヴ・ウィンウッドを引き合いに出したいほどに魅力的ですし、キンクスかザ・フーか、と言った感じのエッジの立った、ガッ、ガッ、ガーンのキメと、そこで炸裂する唾飛ばしフルートにも痺れます。
けたたましい第一章から一転して、クラシカルなピアノ、たゆたうフルートが感動的。
ドラムがたくましく疾走すると、アンサンブルは熱気を帯び、サックス、オルガン、エレキがユニゾンを交えながら、スリリングに進行していきます。
後半は、サックスとギターが、アヴァン・ロックと言えるほどにテンションいっぱいに畳み掛けて圧巻。
ユーライア・ヒープを彷彿するような荘厳なハード・ロック・ナンバーを聴かせます。
幻想的で夢想的で、アルバムのラストを飾るにふさわしい最終章。
たゆたうアコギ・ストローク、柔らかに奏でられるサックスと穏やかなハモンド。
クリムゾンのマイケル・ジャイルスに通じるふくよかでタイトなドラムも良いし、エコーに包まれたエモーショナルなヴォーカルも雰囲気抜群。
後半に向かい、艶やかなトーンのメロウなサックスが徐々に熱気を帯びていき、それにつられて、バックのハモンドとアコギも力強さを増し、ラストでは、沈み込むように重厚なドラムとハード・エッジなギター、エネルギッシュにむせぶホーン・セクションが一体となり、荘厳かつ勇壮にフィナーレを迎えます。
アルバム一枚で塵と消えたバンドとは思えない、堂々たるアンサンブルはただただ圧巻。
マイナーながら、深遠なるブリティッシュ・ロックの一片を確かに形作る作品であり、同年リリースで同じようなバンドの運命をたどったアフィニティの名作とともに後世に受け継がれるべき名作と言えるでしょう。
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