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BLAY TRITONO『CLOT 20』 – ユーロロック周遊日記

本日のユーロロック周遊日記は、スペインはバルセロナのジャズ/チェンバー・ロック・バンドBLAY TRITONOの76年唯一作『CLOT 20』をピックアップいたしましょう。

出身のバルセロナは、スペイン北東部の地中海沿岸のカタルーニャ地方の中心都市。スペインの中でも独自の地中海文化を形成したカタルーニャの文化への愛情に溢れたサウンドが、このグループの大きな特徴。カタルーニャの民族音楽にこだわったバンドの情熱を想像するために、その背景にあるカタルーニャの歴史を簡単に振り返りましょう。

カタルーニャは、中世の全盛期にはアラゴン・カタルーニャ連合王国として、イタリア南部からギリシャまでも支配する地中海帝国を築くなど、中世ヨーロッパの中心として君臨しました。コロンブスによる新大陸発見以降は、地中海から大西洋へと世界の中心が移り、地中海の港湾都市だったバルセロナも凋落。近代には産業革命により復活しますが、現代に入るとスペイン内戦による混乱にまきこまれ衰退してしまいます。

フランコ率いるファシストの国民軍と自由主義的な共和国軍とが争ったスペイン内戦で、カタルーニャは、反フランコとして共和国軍を支持。内戦はフランコ側が勝利したため、フランコによる独裁政府からカタルーニャは過酷な弾圧を受け、カタルーニャの民族芸能やカタルーニャ語の出版禁止、カタルーニャ語を公で使うことが禁止されました。

スペインで話されているのはスペイン語ひとつじゃないの?という認識しかありませんでしたが、首都マドリードが属するカスティーリャ地方のカスティーリャ語(スペインの公用語)に対して、中世時代まで長く別の国だったカタルーニャでは、昔からカタルーニャ語が話され、独自の文化圏として存在していたんですね。

75年にフランコが死去し、民主化。約40年間におよんで弾圧されたカタルーニャ文化が復権します。

『CLOT 20』がリリースされたのが76年。これまでの抑圧から解放されたカタルーニャ人の喜びとともに、あらためてルーツを振り返り、高らかにカタルーニャ文化に根ざしたサウンドを鳴らしたのが本作と言えるでしょう。

彼らのサウンドの重要なエッセンスが、カタルーニャの民族舞踏サルダーナ。サルダーナはコブラと呼ばられる管楽合奏団が伴奏をつけることが一般的ですが、なるほどBLAY TRITONOにサックス、トランペット、トロンボーンと3人の管楽奏者が在籍しているのは、サルダーナに由来しているのかもしれません。

カタルーニャ民族舞踏サルダーナ

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バンドの中心メンバーは、現在までプレイヤー/コンポーザーとして活躍するサックス/テノーラ奏者のJoan Josep Blay。他、ジャズ・ピアノの名手でORQUESTRA MIRASOLでも活躍するKey奏者Victor Ammannと、トランペット奏者、トロンボーン奏者、リズム隊による6人編成。

Joan Josep Blayによるテノーラ(スペインの民族木管楽器)のチャルメラ風フレーズを軸に、トランペットとトロンボーンがたおやかにむせぶ地中海フレイヴァーたっぷりのサウンドが特徴。バルセロナ産ロックはリズム隊がどの作品も素晴らしいのですが、本作もしかりで、ビシバシと切れ味鋭いドラムとメロディアスに動きまくるベースは特筆。Key奏者のVictor Ammannもさすがで、ギルガメッシュのAlan Gowenにも比肩する緻密で煌びやかなピアノ&エレピを聴かせています。

T3: La Ceba

手数多くシャープなドラム、ぶいぶいと動き回るベースによる鉄壁のリズム隊をバックに、サックス、トランペット、トロンボーンが時に奔放に時に緻密にからみながらヘンリー・カウにも比肩するテンションで疾駆。ホーンセクションに負けじと、エネルギッシュかつ格調高いピアノもまた絶品。最高に濃密な1分37秒。凄まじいです。

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T6: Montblanquet

Victor Ammannの作曲で、彼のピアノの独奏からスタート。流麗でいてコロコロとした軽快さもあって、中世カタルーニャの貴族の舞踏会が目に浮かぶようです。テノーラが入ると、リズムも刻まれ、管楽器も入り、このグループならではのカタルーニャ舞踏ロックを奏でます。

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最初聴いたときはヘンリー・カウに影響を受けてたチェンバー・ロックなのかな、と思いましたが、カタルーニャの歴史をひも解いていくと、民族舞踏サルダーナに根ざしてホーン・セクションを中心に置いたオリジナルなバンドということが分かります。

民族舞踏サルダーナとジャズ、ロックが完璧に融合した、スペインはバルセロナならではの傑作!

なお、サウンド・エンジニアはJoan Vidalで、COMPANYIA ELECTRICA DHARMAの2nd『L’OUCOMBALLA』、ATILA『Intencion』、SECTA SONICA『Fred Pedralbes』を担当。

BLAY TRITONOが気に入ったリスナーは、同じくカタルーニャの民族音楽のエッセンスが香るCOMPANYIA ELECTRICA DHARMAもあわせて是非、お聴きください。


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スペインはバルセロナで興ったロック・ムーヴメント「ライエターナ・ミュージック」は、カンタベリー・ミュージックや、イタリアのジャズ・ロックや、イスラエル・ロックや、ベルギーのCOSあたりのサウンドが好みなら、間違いなく名盤の宝庫。

各バンドを特集していますので、どうぞ引き続き探求ください!


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  • BLAY TRITONO / CLOT 20

    76年唯一作、カンタベリー/レコメン系のファンは必聴!スパニッシュ・ジャズ・ロックの名作!

    スペインはバルセロナで興った「ライエターナ・ミュージック」屈指の傑作と言われる76年唯一作。メンバーの中心は、現在までプレイヤー/コンポーザーとして活躍するサックス/テノーラ奏者のJoan Josep Blay。他、ジャズ・ピアノの名手でORQUESTRA MIRASOLでも活躍するKey奏者Victor Ammannと、トランペット奏者、トロンボーン奏者、リズム隊による6人編成。Joan Josep Blayによるテノーラ(スペインの民族木管楽器)のチャルメラ風フレーズを軸に、トランペットとトロンボーンがたおやかにむせぶ地中海フレイヴァーたっぷりのサウンドを聴かせます。ビシバシと切れ味鋭いドラムとメロディアスに動きまくるベースによるリズム隊も鉄壁。Key奏者のVictor Ammannもさすがで、ギルガメッシュのAlan Gowenにも比肩する緻密で煌びやかなピアノ&エレピが印象的です。ハットフィールドやギルガメッシュなどカンタベリーの名作と比べても何ら遜色ないクオリティ。これはユーロ・ジャズ/アヴァン・ロック屈指の傑作です。

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