2014年2月24日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
2月21日、イタリアン・ロック・バンドBANCOのヴォーカリストであるフランチェスコ・ディ・ジャコモ氏(FARANCESCO DI GIACOMO)が、交通事故により亡くなられました。66歳でした。
プログレ界随一の巨体とそこから発せられる伸びやかな歌声、そして茶目っ気と愛嬌溢れるキャラクターで、プログレ界の中でもとりわけ人気の高いヴォーカリストだったジャコモ氏。
ここでは、そんな彼のこれまでの活躍を動画を交えて振り返ってまいりたいと思います。
数枚のソロ作品を除けば、彼のミュージシャンとしての活動は、ほぼ彼が最期まで所属したバンドBANCO DEL MUTUO SOCCORSOの活動であると言えます。
BANCOは69年にキーボード奏者のノチェンツィ兄弟を中心に結成され、P.F.M.らとともにプログレ全盛の70年代前半に登場、以降イタリアン・ロック・シーンを牽引し続けてきた名バンド。
兄弟の重厚なキーボードプレイとともにBANCOのサウンドの中核を担ったのが、ジャコモのドラマティックなヴォーカルの存在です。
では72年のデビュー作より、彼のヴォーカルの魅力が詰まったこの大作をお聴きください。
オペラ歌手を彷彿させるつややかで伸びのある美声によって声量豊かに歌い上げるヴォーカル・スタイルは、世界中のプログレ・ファンにイタリアン・ロックここにあり! という抜群のインパクトを与えました。
続く73年の2nd『DARWIN!』でも、彼のヴォーカルはますます冴えわたります。プログレ史上屈指のラヴソングと言える「75万年前の愛」の素晴らしさも、彼のヴォーカルの高い表現力があってこそ。
74年にリリースされた3rdはよりアヴァンギャルドで難解な作風を取り入れたチャレンジングな内容でしたが、その中にあってジャコモの説得力溢れるドラマティックな歌唱の魅力は露ほども変わらず聴く者の胸を強く揺さぶります。
プログレファンにとりわけ人気が高いのはこの初期3作品ですが、それ以降もクラシカルなサウンドとキャッチーなセンスをバランスよく発揮しつつ70年代後期~80年代~90年代と力作をリリースし続けました。
P.F.M.と同じくELPが運営するマンティコア・レーベルよりリリースされた75年世界デビュー盤。P.F.M.ほどの成功は収められなかったものの、従来よりシャープなサウンドづくりやジャコモの英語による歌唱など、本作ならではの聴きどころが満載。
76年リリースの本作は、コンパクトにまとめられた楽曲構成の中にBANCOらしさが詰め込まれた力作。ジャコモの朗々とした歌声が聴き手を包み込むような温かみをもって広がります。
79年作は、80年代を見据えたポップなサウンドが印象的な一枚。しかしジャコモの情熱的な歌唱によって、一般的なイタリアン・ポップスでは決して感じられないシンフォニックな高揚感を楽曲にもたらします。
打ち込みをはじめとする本格的な80年代サウンドを取り入れたポップでAOR志向な83年作。ここまでデジタルなサウンドを導入してもジャコモの歌には芳醇なイタリアン・ロックのエッセンスが薫っていますよね。
90年代BANCOの姿を鮮烈に印象付けた94年の快作。80年代に培ったポップセンスを生かしつつ、よりドラマティックなサウンドを追求したことにより、ジャコモのヴォーカルが生き生きと伸びやかに響きわたります。
こうして改めて振り返ると、彼が本当に偉大なヴォーカリストであったことがわかりますね。BANCOとしてのみならず、イタリアン・ロックそのものを象徴する存在だったと言えるかもしれません。
来日公演を目前に控えていたということもあり、彼のパフォーマンスを生で聴くことができるのを楽しみにしていたファンも多いことかと思います。勿論私もその一人です。
この素晴らしい歌声をもう直接聴くことができないのは非常に残念ではありますが、今はただ安らかに眠りについてくれることを願うのみです。
では最後は、やはりこの曲で彼を送ることにいたしましょう。72年1stより「R.I.P.」をどうぞ。
日本のプログレファンにイタリアン・ロックの魅力を余すことなく伝えてくれた愛すべきヴォーカリストに敬意を込めて。心からご冥福をお祈りします。
PFMと並びイタリアのプログレッシヴ・ロックを代表するバンコ。ヴィットリオ・ノチェンツィを中心に今なお活動する彼らだが、その哀愁を帯びた声の不世出の名ヴォーカリスト、故フランチェスコ・ディ・ジャコモと、彼らの地中海性を担っていた名ギタリスト、故ロドルフォ・アルテーゼを加えた、今では再現不能の黄金期編成による99年のライヴ盤。新旧代表曲を歌い込むジャコモと壮大なキーボードが並び立つ、真のバンコの姿を伝える名演!(レーベル紹介文より)
ご存じ、PFMと共にイタリアン・ロックを代表する名バンドによる「シベリア鉄道」を題材にした2019年作!スタジオ・アルバムとしては94年作『IL 13』以来実に25年ぶりとなります。唯一のオリジナル・メンバーであるキーボード名手Vittorio Nocenzi、近年のMetamorfosiにも在籍するドラマーFabio Moresco、DORACORで活動するギタリストNicola Di Gia、そして14年に急逝したヴォーカリストFrancesco Di Giacomo氏の後任という大役を務めるTony D’Alessioら6人編成で制作された本作、ずばり傑作!凛と格調高いタッチのピアノと一音一音に存在感のこもったオルガン、キレのあるプレイでスピード感をもたらすギター、そして熱く歌いこむドラマチックな表情と優雅で繊細な表情とを自在に行き来するヴォーカル。さすがの洗練されたモダン・イタリアン・ロックを聴かせてくれます。でもそれで終わらないのが素晴らしいところで、最初期バンコに漂っていた少し前衛的でミステリアスな雰囲気が全編をうっすら覆っている感じが堪りません。その質感をもたらしているのは勿論キーボード。現代的な重量感あるロック・サウンドを繰り出す演奏陣の中で、クラシックに根差した息をのむようにアーティスティックな音運びが冴えわたっており、衰えは一切感じません。ヴォーカルは、ジャコモ氏とは全く異なるタイプながら、イタリアン・ロック然とした堂々たる歌唱を聴かせていて感動的。FINISTERREやUNREAL CITYといった新鋭の音に接近しながらも、バンコらしい芸術性の高さは遺憾なく発揮された一枚となっています。
PFMと共にイタリアン・ロックを象徴する名バンドが放った22年作!ピアノとアコギが寂しげに鳴らされ、哀愁と艶やかさを兼ね備えた素晴らしいヴォーカルが歌い上げる叙情的1曲目から一転、重厚なリズムとギター、ピアノ、オルガンがダイナミックに絡み合ってアーティスティックに突き進んでいく2曲目へと至る、このスリリングさと来たら!誰もが2nd『Darwin!』や3rd『Io Sono Nato Libero』を思い浮かべるであろうテンションのパフォーマンスに感動がこみ上げます。FINISTERREやUNREAL CITY、LA MASCHERA DI CERAなどの新鋭に接近したモダンさを見せつつも、往年のBANCOが持っていたロマンほとばしるようなイタリア臭は健在なのが最高に嬉しいです。前19年作もかなりの力作でしたが、初期BANCOを彷彿させるという点では、今作はジャコモ時代のBANCOファンにも是非オススメしたい傑作!
Vittorio Nocenzi、Gianni Nocenziを中心に結成され、Francesco Di Giacomoの迫力のある歌声とツイン・キーボードのアンサンブルを個性にイタリアを代表するプログレッシブ・ロックグループへと飛躍。シーンに衝撃を与えP.F.M.に続いて世界デビューを果たしたバンドの72年デビュー作。その内容はオルガンやピアノを中心としたクラシカル且つダイナミックなロック・アンサンブルと、表情豊かなカンツォーネが雑妙に交じり合ったプログレッシブ・ロックであり、イタリア然としたエネルギッシュなサウンドが素晴らしい1枚。デビュー作らしいハードさと勢いを持った傑作です。
特殊紙ジャケット・プラ製台紙付き仕様、デジタル・リマスター、定価2000+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
解説に若干黄ばみあり
Vittorio Nocenzi、Gianni Nocenziを中心に結成され、Francesco Di Giacomoの迫力のある歌声とツイン・キーボードのアンサンブルを個性にイタリアを代表するプログレッシブ・ロックグループへと飛躍。シーンに衝撃を与えP.F.M.に続いて世界デビューを果たしたバンドの72年2nd。前作のハードな音楽性とテンションはさらに高められ、前作以上に複雑に構築された楽曲がカオティックに進行していきます。核となるピアノ、オルガンといったキーボード群に加えてモーグ・シンセサイザーが大幅に存在感を示すようになり、イタリアのほの暗い陰影をドラマティックに演出。セクションによってはアヴァンギャルドとすら言えるほどの攻撃性が凄まじい名盤です。
Vittorio Nocenzi、Gianni Nocenziを中心に結成され、Francesco Di Giacomoの迫力のある歌声とツイン・キーボードのアンサンブルを個性にイタリアを代表するプログレッシブ・ロックグループへと飛躍。シーンに衝撃を与えP.F.M.に続いて世界デビューを果たしたバンドの73年3rd。その内容は、前作で爆発的なテンションを聴かせた攻撃性、アヴァンギャルドなサウンドをオリジナリティーに落とし込み、クラシカルな気品を持ったシンフォニック・ロックにまとめた名盤です。勢いで押し続けるような作風からバランスの取れたトータルなサウンドへの移行が見受けられ全体的にスッキリした印象を持ちますが、それによってへヴィーなセクションと静寂に包まれるセクションの対比が明確に描かれています。
紙ジャケット仕様、K2 24bitデジタル・リマスター、透明プラ台紙付き仕様、定価2000+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干圧痕あり、解説に若干黄ばみあり
75年にMANTICOREレーベルよりリリースされた世界デビュー作。1stと3rd『自由への扉』からの楽曲に新曲1曲という構成。1st収録の代表曲「R.I.P」の英語バージョン「Outside」や、3rd収録の胸を打つ名曲「Non Mi Rompete(私を裏切るな)」の英語バージョン「Leave Me Alone」など収録。
76年作の6thアルバム『COME IN UN’ULTIMA CENA(最後の晩餐)』の英語バージョン。MANTICOREレーベルからの世界リリースの第二弾。これまでの彼らのダイナミックなサウンドはそのままに、より明快でコンパクトな作風を採用した名盤となっており、大曲の存在こそ無いものの彼ららしいスケールの大きなシンフォニック・ロックは健在。クラシック楽器の使用も巧みであり、タイトにまとめられた中に高密度でアイデアを閉じ込めた、非常に聴きやすい1枚。
紙ジャケット仕様、SHM-CD、リーフレット付仕様、定価2667+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
帯に若干曇りあり
1st発表以前の69年、RCAレーベルとの契約のために録音していたものの、RCAレーベルとの契約が無くなり、RICOLDIと契約したため89年にRAROレーベルがリリースするまでお蔵入りになっていた幻の音源。残念ながらジャコモは加入していませんが、アグレッシヴな展開と強靭なアンサンブルは、荒削りながら既にかなりの完成度。60年代ということを考えると、やはりただものではありません。
70年12月27日、1stリリース以前、デビュー前の貴重な発掘ライヴ音源。オーディエンス録りレベルのサウンドは良いとは言えませんが、演奏のテンションは半端じゃありません。BANCOファンは必聴
イタリアン・ロックを代表するグループ、BANCOの97年作。全編を牽引する情熱ほとばしるジャコモのヴォーカル、そしてヘヴィで骨太なギター、テクニカルなピアノ、前のめりでアグレッシヴなリズム隊が作り出すドラマティックなアンサンブルが展開されます。
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