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ロック史で最も音楽主義であったのがジャック・ブルース(1 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
みなさんはフュージョンというジャンルをどう考えてらっしゃいますか。アフリカ系アメリカンの苦悩を演奏にたたきつけたジャズに比べ、わたしは快楽主義がフュージョンの中心でなかったのかと考えています。ジョー・ザビヌルみたいな知的にイノベーションをやろうとした人がいても少数派だった気がします。このジャック・ブルース・バンドの展開するジャンルは、まさにフュージョンと呼べるジャンル横断です。でも簡単にフュージョンと呼んでしまっては、この人たちから叱られてしまうでしょう。
ジャック・ブルースは、クリーム以後、とても内省的な音楽を連発しました。自分の少年時代に立ち戻ってみたり、アメリカに渡って録音してみたり。それら創作活動を整理して結成したのがジャック・ブルース・バンド。トニー・ハイマスにサイモン・フィリップスを揃えるという宝石のようなバンドができました。このCDは、ジャック・ブルース・バンドの公表されなかった録音なのです。
この人生への喜びに満ちた旋律を聴いていると、自分は勇気づけられます。リズムの素晴らしさにはあえて触れません。ジャック・ブルースと言えば、わたしにとっては作曲の妙です。クラシックともジャズともつかず、既存のメロディを裏返しにしたような、前衛的で官能的なメロディが大好きです。それを表現しきるオペラ歌手のようなブルースがまたいい。本当に落ち着く、いい音楽なのです。